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夜間中学その日その日 (978) 砦通信編集委員会

  「私は勉強しにきています。補食給食のことは他の時間にやってください」

                         2024.07.05

 夜間中学生への就学援助、補食給食の大阪府補助を廃止すると就任間もない橋下知事が突然発表した。2008年のことだ。このことを知った夜間中学生は各夜間中学で話合い、出た意見を持ち寄って近畿夜間中学校生徒会連合会(連合生徒会)の会議に集まった。 

 この制度は夜間中学生の要求と運動によって1972年に設けられた制度である。学齢の子どもたちには就学援助制度があるが、学齢を超えた中学生には就学援助は適応されない。そこで国に代わって、大阪府が1/2を負担するという独自の制度を創設した。これには支給基準があって、定められた所得額以下であることの条件により、全員ではなく、夜間中学生の約30%が就学援助を受けていた。パン・牛乳の補食給食は全員が対象で、これらは大阪府と設置市が1/2ずつ負担することで運営されてきた。府が負担することで、設置行政以外の住民も夜間中学に通学することができた。

 府負担をなくすということは夜間中学生一人ひとりの学習条件が悪化することにつながり、通学定期が買えなくなり、自転車通学に切り替える。あるいは通学を断念せざるを得なくなる。もっと学びたいが、卒業するしかない状態に追い込まれた仲間が生まれてくることになる。

 連合生徒会のとりくみの結果、即実施は断念させ、2年間の経過措置を入れることになった。その間に、府は国に夜間中学の就学援助制度を創設させることを働きかけること。生徒会は夜間中学設置行政だけでなく、居住地の市町村に夜間中学生の就学援助を実施させるとりくみを急ぐことになった。

 連合生徒会は各校交代で、大阪府庁周辺でビラを撒き、議会各会派に要請を続けた。忘れもしない、2011年3月11日午前10時、橋下知事の出席を求め、教育常任委員会が開かれ、梯(かけはし)府会議員(民主党)が質問を行なった。この日の午後、東日本大震災が発生し福島第1の原発事故が起ったその日である。

 連合生徒会のとりくみが続く中、ある夜間中学の授業で、「私は勉強しにきています。補食給食のことは他の時間にやってください」との発言があった。

 夜間中学生といってもさまざま、なかまの多くの意見と自分とを重ね合わせ、考える機会があった人とそうでない人、就学援助の対象外の人、補食給食がなくても別の対応ができる人とそうでない人とさまざまである。

 生徒会のその日の行動を参加者から報告を受け、クラス全体で受けとめること、この日は参加できなかったが次の機会には参加しよう。とりくみの全体化をはかる教員の手立ては不可欠である。夜間中学では時間講師でその日の授業だけを担当している教員で運営されている割合が多い。それだけにカバーする常勤教員の役割は重要である。

「私は勉強しにきています。補食給食のことは他の時間にやってください」の訴えをどのように受けとめ、返していけるか。重要な分かれ目である。



 その日の教育委員会議の傍聴に参加した夜間中学生が遅れて授業に入ってきたとき、どんな受け入れ方をするか、その日のとりくみを知っていない教員が授業担当であった場合、どんな手立てが取れるか。知っていながら、十把一絡げで授業に遅れた人との扱いを続けるなら、教員が夜間中学生間に「分断」を持ち込んでいると言わざるを得ないのではないか。

門脇勝さんは「夜間中学は生徒が主役」「夜間中学生が生命線」と書いたTシャツを着て連合生徒会の闘いの先頭に立っていた。

 2024年の今、就学援助、補食給食の府負担復活はは実現していない。夜間中学生が住んでいる市町村と設置市が1/2ずつ負担する形でほぼ実現できた。補食給食は大阪、守口、八尾、岸和田市で行なわれていない。守口夜間中学では寄付や夜間中学生徒会のとりくみで得た資金等で週3回実施している。

 「私たちはつくってきた弁当を持参して食べているが、教室の外でこの時間が過ぎるのを待っている仲間がいることを忘れてはいけない」「夜間中学にまだたどり着けていない仲間のために、私たちは取り組まないといけない」と当時の連合生徒会会長はとりくみの重要性を訴えた。



 夜間中学の主役は夜間中学生。その生命線は夜間中学の教員が持っている。文の里・天王寺夜間中学の存続の闘いでこのことが顕在化したのではないか。

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