歴史修正主義に勝利した韓国「ろうそくデモ」—「特権階級に歴史を独占させない」 Journalist World ジャーナリスト・ワールド
- 川瀬俊治
- 2017年4月18日
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4月15日、韓国大統領選挙が公示され、事実上、「共に民主党」文在寅、「国民の党」安哲秀の両候補の争いと言われている。5月9日が投票日に国民の審判が下される。
15日は第21次「ろうそくデモ」ではセウォル号沈没事件の真相究明集会が開かれたが、10月26日土曜日からの「ろうそくデモ」では、これまでに1600万人の参加者を数えた。日本の民衆運動からみれば、驚くべき市民の結集である。朴槿恵大統領を弾劾裁判にかけ失職に追い込み、一人の逮捕者も、犠牲者(死傷者)も出さなかった。
韓国の民主主義の成熟度の高さを示す。「市民革命」と称され、世界史上に冠たる足跡を残した。この「ろうそくデモ」がなぜ可能になったのか。われわれが最も一番知りたいことだ。
「あなたが望む社会は」。韓国の世論調査の設問では、「機会均等な平等社会」を求めている人が常に上位を占める。朴槿恵大統領の親友崔順実が国政介入にした事件は、韓国最大の企業サムソンの実質上のオーナーの逮捕まで及んだ。何よりも、朴槿恵元大統領につながる特権階級が次々と明るみに出て、断罪される対象になった。
昨年11月26日午後7時からの「ろうそくデモ」では、韓国の民主化運動の象徴であるフォーク歌手楊姫銀さんが仮設舞台に立ち、朴正熙の軍事独裁政権時代の抵抗の歌「常緑樹」など三曲を熱唱した。これまでは、ポリュラー歌手などが舞台に立ったが、楊姫銀さんの歌は意味が異なる。朴正熙軍事独裁に連なる特権階層に対する「勝利」の歌でもある。

人々が求めたのは何か。特権を許さないすさまじい意志力ではないか。それが今回の「ろうそくデモ」の原動力だと思う。私は過去の抗議デモを何度か取材してきた。2008年のBSEの危険性があるアメリカ産牛肉輸入に反対するデモでは、I Tメディアの発達が指摘されたが、今回は比較にならないほどSNSが発達、フェイスブック、ツイッターなどで集会を呼びかけた。
しかし、SNSが発展したとしても、集会参加の動機が強くないと、行動には結び付かない。特権階級を許してはならないとする人々は、歴史を創る現場に参加していることに高揚感をえたに違いない。実は特権階級は歴史を独占しようとし、受け皿としての教科書に反映さす。しかし、1600万の参加者の民衆の力は、朴槿恵政権が進めた韓国の歴史修正主義•国定教科書採択を食い止めた。採用する学校はほとんどない。
日本は歴史修正主義が岩盤のように国家の方針として、地域で息づいている。どう乗り越えたらいいのか。とても先延ばしできない焦眉の課題だ。韓国の「ろうそくデモ」から学ぶことはあまりにも多い。
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