夜間中学その日その日 (717)
- 夜間中学資料情報室 白井善吾
- 2020年11月2日
- 読了時間: 5分
「夜間中学」に関する国会議論(13-⑬)2019年~
「一県に最低一校の夜間中学を」法ができ、地方自治体に設置の義務が課せられた。官僚は「夜間中学の設置促進や教育活動の充実に努めてまいりたい」と答弁する。夜間中学入学を希望する多くの人たちは官僚の人たちとは対極の経済状態の人たちがほとんどだ。
姫路市在住の60代の方が、勤務している大阪から、夜間中学で勉強して通勤通学されているとしよう。距離は87.9km、運賃は片道1520円、通学時間は1時間10分。駅まで徒歩15分のところにお住まいとして、朝7時に家を出て、夜11時30分の帰宅となる。勤務先から通勤手当がなければ、毎月21,270円の定期代が必要となる。
都市部でないところで夜間中学に通学するとなると、この例のようにはいかない。夜になると交通手段は格段に不便さを増す。夜間中学生は休まず通学したい。しかし家族にしてみれば、健康のこと、安全のことを考えて、通学を断念してくれと訴えることも考えられる。
このように、一人ひとりの夜間中学生の立場になって考えると「一県に最低一校の夜間中学を」で新しくできた夜間中学に通うことができる人たちは大きく制限される。学習が継続できる、新たな方法を打出さないと、絵に描いた餅になってしまう。
13回になったが、国会議論でみてきたように、夜間中学の施策について、一人の夜間中学生の声が、クラスの議論を経て、生徒会の意見としてまとめられ、関西であれば、近畿夜間中学校生徒会連合会の運動としてとり組まれる。大阪府教育委員会との話合いに、また教職員組合の教育運動のとりくみを経て、国会での議論につながっていったことが確認できる。「学びは運動であり、運動は新たな学びを創造する」。この基本は、夜間中学の自立した生徒会活動ではないだろうか。

いま開かれている国会の衆議院本会議で夜間中学を取りあげ、代表質問があった(2020.10.28)。
枝野幸男氏の代表質問「今月3日、金沢市で夜間中学に関係する人たちの話しあいに参加しました。夜間中学は戦後の混乱で学ぶ機会を失った人、外国人、貧困、いじめにより学ぶ機会を失った人が増えてきている。夜間中学の必要性が強まってきている。教育を受ける権利を保障する最後の砦が夜間中学です。政府は夜間中学の開設を支援を強めるべきだと考える。総理の見解を問う」
菅総理答弁
「夜間中学については外国人の日本語教育の充実など引き続き夜間中学の新設、教育活動の充実など、支援を行なっていく」
第197回国会 衆議院 法務委員会 第10号 2019年1月23日
*逢坂誠二(立憲):「日本語教育のために、・・全ての都道府県における夜間中学校の設置促進とか」
第198回国会 衆議院 文部科学委員会 第1号 2019年3月8日
*柴山 昌彦(文科大臣)所信:「夜間中学の設置、充実にしっかりとりくむ」
第198回国会 参議院 文教科学委員会 第2号 2019年3月12日
*柴山 昌彦(文科大臣)所信:「夜間中学の設置、充実にしっかりとりくむ」
第198回国会 衆議院 文部科学委員会 第3号 2019年3月15日
*神山 佐市(自民):「夜間中学を各都道府県に一校は設置できるよう、自治体への財政支援について」
*永山 賀久(初等中等教育局長):「これらの支援により夜間中学の設置を促進」
*稲津 久(公明):「夜間中学の新たな設置状況について、今後の方向性は?」
*浮島 智子(文部科学副大臣):「夜間中学における教育活動の充実に係る調査研究費として、非常勤の養護教諭などにも活用できる経費を計上している」
第198回国会 衆議院 文部科学委員会 第16号 2019年5月22日
*馳浩(自民):「文科省自身が責任を持って行うという説明があったが」「就学義務のあり方は教育機会確保法見直しの大きなポイントにもなっております」
*畑野君枝(共産):「夜間中学独自の教員定数枠や加配など、特別の措置を検討を」
*柴山昌彦(文科大臣):「分校に開設する場合には、本校に夜間学級を開設するよりも多くの教職員定数が算定される場合がある」
第198回国会 参議院 文教科学委員会 第14号 2019年6月20日
*吉良よし子(共産):「夜間中学において日本語教育の機会を最大限確保すること」
*馳浩(自民):「本法律案と教育機会確保法とが相まって、夜間中学における日本語教育の機会の確保と水準の維持向上が図られる」
*柴山昌彦(文科大臣):「有識者会議での検討結果を踏まえて、引き続き、夜間中学の設置促進、教育活動の充実に向けた取組を進めていきたい」
第198回国会 参議院 本会議 第28号 2019年6月21日
*上野通子 委員会報告:「夜間中学における日本語教育の在り方等について質疑が行われました」
第200回国会 衆議院 文部科学委員会 第1号 2019年10月23日
*萩生田光一(文科大臣):就任挨拶「夜間中学の設置促進にしっかりと取り組みます」
第200回国会 参議院 文教科学委員会 第1号 2019年10月29日
*萩生田光一(文科大臣):就任挨拶「夜間中学の設置促進にしっかりと取り組みます」
第200回国会 参議院 文教科学委員会 第2号 2019年11月7日
*高瀬弘美(公明党):「夜間中学校は外国人学生の受皿として重要であると思いますが」
*丸山洋司(文部科学省初等中等教育局長):「夜間中学の設置促進や教育活動の充実に努めてまいりたい」
第200回国会 参議院 文教科学委員会 第7号 2019年12月5日
*伊藤孝恵(国民民主党):「外国人の学齢超過の問題、今後どういうふうに取り組んでいくか」
*萩生田光一(文科大臣):「外国人の子供に対する適切な教育の機会が確保されるようしっかりと取り組んでいく」
第201回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 第2号 2020年2月19日
(「誰もが安心できる社会の実現」のうち、困難を抱える人々の現状(外国人をめぐる諸問題)について)
*参考人 愛知淑徳大学交流文化学部准教授 小島 祥美:「各都道府県、政令都市に夜間中学一校を設置 それを後押ししていただきたい」
*岩渕友(共産):「夜間中学を更に充実をさせるために必要だと思うこと」
*梅村みずほ(維新):「外国人の子どもたちあるいは学び直しに対して」
第201回国会 衆議院 文部科学委員会 第1号 2020年3月4日
*萩生田光一(文科大臣)所信表明:「夜間中学の設置促進にしっかりと取り組みます」
第201回国会 参議院 文教科学委員会 第1号 2020年3月5日
*萩生田光一(文科大臣)所信表明:「夜間中学の設置促進にしっかりと取り組みます」
(おわり)