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夜間中学その日その日 (1010)   夜間中学資料情報室

 義務教育未修了になった人たちのこと(2020 国勢調査)  2025.01.04


 2020国勢調査の結果報告データーから「義務教育を未修了になった人たちの」詳細な分析結果が 2024年12月、『基礎教育保障学研究 別冊』第1号 として公開された。ここには「趣旨と実施計画」と、21都道府県の「都道府国勢調査レポート」が収録され、残りの26都道府県の調査レポートは2025年度に発行される。43名の執筆者からなる、「国勢調査活用プロジェクト」の皆様に深く感謝申し上げたい。『基礎教育保障学研究 別冊』は公開され、分析結果を閲覧することができる。

 これまで義務教育未修了になった人たちの実数は、田中勝文(愛知教育大)さんが「夜間中学問題を通して学校を考える」(教育学研究45-2号・1978年6月)や真野節雄さんが『ザ・夜間中学 文字を返せ、170万人の叫び』(夜間中学増設運動全国交流集会編 1986年11月)で明らかにした170万人は国勢調査結果も織り込んだ分析結果で、引き続き出版した『文字はいのちや、学校はたからや』(1990年・新編1997年)、『勉強がしたい 学校がほしい』(1994.3)では真野さんの分析の方法を用いて、10年ごとに行われる国勢調査結果加え、明らかにしてきた。




 しかし、これらは全国統計のみで、都道府県別や市町村別の分析はごく限られた地域でしかできていなかった。2000年の調査までは紙媒体の調査報告書での発表で,その数字を読み上げてエクセルに打ち込み、結果を分析する方法で煩雑さも加わり、私たちは範囲を広げることはできなかった。2010国勢調査からは結果をダウンロードして分析作業ができるようになり、詳細な分析が可能になった。大阪の場合、市町村別で分析を進めると数字の羅列の中に数字が語る事実が読み取れるようになった。2020国勢調査では小学校卒業の調査項目がやっと加えられ、未就学と最終学歴が小学卒業の人数を加えて義務教育未修了の人数が把握できるようになった。

 2020国勢調査が始まる2カ月前、毎日新聞の取材を受け、結果の分析と夜間中学開設を求める資料として重要であることを説明した。2020.9.12 「小中学校未修 国が集計 国勢調査 夜間中学設置 指標に」の記事が一面に掲載された。

 2020 年秋、行なわれた国勢調査の結果が順次公表され、2022年5月27日付けで「教育」に関する内容が公表された。私たちが行う分析方法とその内容を「大阪市教育委員会は教育の立場から、国勢調査結果を分析し、見解を明らかにすべきではないか」 (「夜間中学その日その日」826  2022.06.13)で報告した。      

 そして、2020国勢調査結果の分析を大阪市内を例にして行い、「天王寺・文の里夜間中学の存続を 2020国勢調査結果をふまえて」(部落解放 2022-12月号)に投稿した。


 札幌遠友塾自主夜間中学の工藤慶一さんは2010国勢調査の北海道の市町村別の分析結果を夜間中学増設運動全国交流集会の席で報告、その分析手法の一例を報告されていた。『基礎教育保障学研究 別冊』で工藤さんは北海道の分析結果を次のように詳細に記述されている。

 国土の22%を占める北海道で、本州の県に相当する行政単位である道内14振興局管内別に見ると、道内人口の46%は札幌市のある石狩管内に偏在するが、義務教育未修了者は14,120人(道内義務教育未修了者の24%)であり、石狩管内以外の義務教育未修了者数が道内の76%を占める。この原因は、戦中・戦後の政府の戦災処理策として閣議決定された、外地からの引揚と本州被災地域からの移住による過酷な北海道開拓にあり、1945年から6年間に北海道の人口が実に90万人も増加し、開拓に従事する家族の学齢期の子どもたちが学校に行けなかったからである。道内179自治体の戦後開拓事情は、市町村毎に大きく異なる。特に義務教育未修了率の高さにその傾向が出てくる。このため市町村毎の把握が必要である。但し、具体的な学ぶ場の設置運動の中で、初めて問題となる事項である。また北海道は冬期間の通学困難な状況を抱え、更に1960年代に北海道の子どもたちを襲った主に産炭地で起きたポリオの大流行のような就学免除につながる疾病問題も存在する。このため道内の夜間中学に集う数多くの人たちの就学保障には、地域ごとの事情をふまえ、様々な特段の配慮が必要とされる。

 大阪の夜間中学にも中国東北部から引揚、故郷には帰らず、北海道の開拓地に入植した人。北海道で飯場を転々とした学齢時代を送り、学べなかったという夜間中学生が学んでいた。

 私も改めて、各都道府県や市町村別の分析結果を見て、数字が語っている事実を考えてみたい。そこに住んでおられる人の“眼”ほど、確かなものはない。隠れた真実があるはずだ。

 

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