夜間中学その日その日 (1014) 夜間中学資料情報室
70回全国夜間中学校研究大会 (3) 2025.02.01
夜間中学は公立夜間中学だけではない、私立の夜間中学、沖縄の珊瑚舎スコーレ東表(あがりおもて)中学校そして自主夜間中学やこれらを支える支援組織が活動している。
横道になるが私は「東表」を「あがりおもて」と読めなかった。ひょっとしたらと次のことが頭をよぎった。夜間中学生に姓が「東江」さんが在籍されていた。その夜間中学の先生は「あがりえ」と呼ばれていて、聞いた私は「東江」と「あがりえ」が結びつかなかった。ずっと後になって、石垣島を訪れた時。西表は「いりおもて」と読むわけを聞くことができた。西を「いり」と読むのは、沖縄の言葉に由来すること、「日の出」と「日の入り」から、太陽が昇る東を「上がり」、沈む西を「入り」と読むことに由来することを知った。西表島は石垣島からちょうど西にあたり、日の入る方角に位置する。表は石垣島の於茂登岳(おもとだけ)を意味し、於茂登岳の西にある島ということで西表島と呼ばれるようになったと説明を受けた。

珊瑚舎スコーレのホームページを見ていて思わず「これや ‼」声が出てしまった。夜間中学めざす学びについて、適格な言葉で記述されているのだ。紹介する。
「私たちは、『学力』は偏差値や内申点ではなく『“学ぶ”を楽しむ力』だと考えています。珊瑚舎スコーレは、生徒と講師が対話をとおしてともにつくる学校です」「授業という言い古された言葉の中に、学校の大きな可能性があると考えているのです。あらかじめ用意された知識や技術を身につけることを目的とした授業ではなく、生徒・教材・教員の三者の交流から生まれる力を育むことを目標とした授業がそれを可能にします」「他者とのかかわりの中で自分を見つめ、納得できる『自分を創る』手助けをする場が学校なのです」「スコーレはそのような学校をつくろうとする『学びの同行者』が集う場でありたいと思っています。そこから生まれる創造性ある状況を私たちは学校文化と言っています」「人に備わった成長と変容のドラマが生まれる舞台としての学校です」
どれも、うなずける考え方ではないか。私は恥ずかしくなると同時にうれしかった。夜間中学の教員を長くしながら夜間中学の学びをこのような、わかりやすい、適切な言葉で表すことができなかった。がしかし、これに率直に頷けたことがうれしかった。
全国夜間中学校研究大会の研究主題の提起でも、珊瑚舎スコーレの考え方を普遍化した提起をこれまで行ってきたと考えている。ところが全夜中研大会(70回)の主題提起は明らかに異なっている。
次のような件(くだり)だ「‥我々夜間中学校の教員にとって最も大切なことは生徒指導や進路指導に関する力量を高めることもさることながら、夜間中学校に学びを求めて通う生徒に対し、我々教員の学習指導に関する力量を高め生徒に還元していくことであり、それは重要かつ恒久的に取り組まねばならない課題でもあります」。
学齢を越えて夜間中学で学ぶ人たちから学校教育が作り出してきた義務教育の問題点や課題を明らかにしていく、『学びの同行者』でなく、教員は教え、指導をする人としてのとらえ方しかできていないと受け取っている。このことは研究大会では論議にはならなかったのだろうか。
『学びの同行者』の考え方は札幌市立星友館中学校の次の記述(63頁)に見ることができる。
「‥(夜間中学生)の声を学校運営にできるだけ反映すべく、希望する生徒が生徒幹事に就任して学校運営協議会に出席し、生徒の立場から意見を述べることができる仕組みにしている」。
もう一つ、初めに書いた「支援組織」について新たな組織が活動を始めたことに注目したい。「夜間中学校を育てる会・福岡」(159頁)は次のように書かれている。
「‥『福岡きぼう中学』の呼びかけにより九州で今年開校した5校の公立夜間中学と『よみかき教室』を含めた3校の自主夜間中学による『九州地区夜間中学校研究会』が発足し、連携も始まりました。福岡県内には福岡地区・県北の北九州地区・県南の筑後地区に公立夜間中学が設置されましたが旧産炭地の筑豊地区にはありません。『夜間中学を育てる会・福岡』(元 つくる会)として、学びを求める人たちが自治体という枠によって教育を受ける権利を妨げられることがあってはならないと考え、市教委に対しては市在住者の枠を外すこと、県教委に対して設置市町村と未設置市町村の間に生ずる問題(経費負担のルール作成など)の調整や筑豊地区への県立夜間中学の設置について要請と協議を行っています」。
大阪では1970年、天王寺夜間中学の卒業生倉橋健三氏の呼びかけにより「夜間中学を育てる会」が発足、活動を開始した。就学援助、補食給食の制度創設、夜間中学増設運動に大きな力を発揮した。奪い返した文字とコトバで夜間中学運動をけん引していく。髙野雅夫氏が天王寺夜間中学開校入学式のあいさつで「大阪での俺の任務は終わった-これからは君たち夜間中学生の任務だ!大阪の夜間中学の歴史を、いや日本の歴史を創っていって欲しい君たち自身の心と足と手で―」と呼びかけた。意義深い組織の誕生だ。
Comments