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夜間中学その日その日 (1015)   夜間中学資料情報室

  夜間中学の学び―飯野正春さんのこと      2025.02.08

 夜間中学の学びを「文字とコトバの奪取を武器とする運動体としての夜間中学。翻身運動として」(夜間中学その日その日1012)と書いた。

 「翻身」の語彙を初めて知ったのは 盛善吉編『俺の夜間中学』連合出版1983で飯野正春さんについて書いた次の文章だ。



 

 「‥飯野さんは港湾労働者ですが、以前は、ただ会社のいいなりに働く“賃金奴隷”でした。今は人権意識をもって、会社に自分たちの要求をつきつけて引かない、ほんとうの労働者として、胸をはって生きています。“賃金奴隷”から“労働者”へ生まれ変わりました。飯野さんにとって夜間中学で勉強する目的は、もの言わぬ奴隷から人権を主張する労働者に“翻身(ほんしん)”=生まれ変わるために、ありました。もの知りになるための勉強ではなく、自分をより人間に解放していくために勉強を役立てていきました」

 そして編者は

 「‥私(盛)は、生きることをはげますのが教育だ。と考えています。また、私たちが生活している現実を知り、その現実と自分とのかかわりをたしかめていくことが、学ぶ目的であり、学問をすることだと考えています。こうした姿勢、向きをとって学ぶことがほんとうの学習であって、自分の生活、生きかたをぬきにして、ただたくさんの知識を暗記することはニセの学習だ、と思っています」

 

 飯野さんが夜間中学に行くようになった経緯が次のように書かれている。

 

 「学べば学ぶほど自由になる。学べば学ぶほど力強く、ほがらかになる-

『誰か、字、習うて来い』 組合のクジ引きで、 夜間中学に入ることになった」

 この本に出会った時、自分の今日の授業はどうだったか、日常は?と振り返り、私が夜間中学で働けたら、そんな思いを強く持ったのは、この『俺の夜間中学』を手にしたことが大きい。こんな人たちと向き合ってみたい。動機の一つだ。

 

 飯野さんたちは夜間中学生の就学援助の創設と充実に向け立ち上がった。「なんで修学旅行に行くのにお金がいるんや」「義務教育は無償のはずや『修学旅行に行くのは教育の一環で、勉強に行くのや。遊びに行くのと違う』そう言うたのは校長、あんたやないか」「2年生、1年生の方も自分の問題としてよく考えてください。修学旅行に行くのにお金を取れば、とうぜん行かれる生徒といかれない生徒が出来る。これは差別だ。これが平等な教育といえるのか。これが教育といえるのかどうか、よく考えてください」

飯野さんたちはこの主張を壁新聞に書き、教員室の前に張り出した。そして学校側と話し合いを行っていった。そのやり取りが20ページわたって収録されている。この時教員は傍観者であってはいけない。飯野さんはこの時のことを文集『わだち』に次のように書いている。

「教師集団は生徒の差別からの解放を勝ち取るために学校側に生徒と一体になって解放教育に最大限の努力をしてほしかった。先生は生徒の仕事場を見に来たことがありますか。生徒の(働いている)会社がつぶれた時、来てくれたことがありますか。今でも差別され、貧困や、夜中生が文字を知らないことをよいことにして、生徒の上にあぐらをかいている教師もいる。教師集団が自己批判をしない限り、天王寺の夜中生と教師集団のパイプはつながらないでしょう」

 「今の実際の社会で食べていけることを教えてほしかった。教師は教育委員会の考えどおりに生徒に教育をするのであれば、生徒は死ぬまで十字架をせおって社会の道を行かねばなりません。夜中生に対して敵か味方かを教えてほしかった。しんけんに戦う力を教えてください」

 

 このように『わだち』に記した飯野さんは「学校教育の在り方、教師の在り方に不満を持っていたが、職場では見事に自分の身につけたものを、生きる武器として、食糧にかえて、自分のために仲間のために生かしていった」

 

 2021年の天王寺・文の里夜間中学存続に向けた生徒会の闘いに、飯野さんの提起は生かせられたのだろうか。


 

 夜間中学の就学援助制度充実の闘いは近畿夜間中学校生徒会連合会と夜間中学卒業生の提起した「夜間中学を育てる会」の連帯した闘いに引き継がれていった。

 私は1987年に夜間中学の教員になった。11年間夜間中学教員をしたのち、昼の中学に勤めえることができた。そして夜間中学生から学んだことを昼の中学生と確認する4年間の実践をしてもう一度、夜間中学に勤務した。

 

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