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夜間中学その日その日 (1017)     白井善吾

  夜間中学で追求している学び             2025.02.22

 夜間中学で実践している、追求している「まなび」を文字にすることに拘って彷徨っている。現段階でのまとめを記す。



 

  夜間中学で追求している学び

 夜間中学の授業から述べてみよう。既存の学齢者用の教科書は部分的に使えるものはある。しかし学習者の「学齢者の義務教育では分類できない」という実態に真正面に向きあわないと夜間中学の学習は成立しない。このことをまず確認しておきたい。夜間中学の教員が夜間中学生から学んだことは、学校教育や社会を衝き、批判的にみる視点はいまの学校教育や社会の欠落点であるということだ。

 そのうえで、夜間中学で実践してきた「学び」は次のように言うことができる。

・自己否定から自己肯定へと転換を図る学び。

・生き方、人生、生い立ちを学習の中に登場させる。

・暗記する学びからわからなければ、自分で調べる、その調べ方を学ぶ。まねをする学びを多用する。

・学習者が学ぶ意味を実感できる内容。

・学習指導要領のいう教科の枠に拘束されない学び。

・教える者、教えられる者の固定化を排し、その立場は変化していく学習と展開を追求する。

 

  夜間中学の役割

 その上で、夜間中学が持っている役割について次の5点を考えている。

①   国の夜間中学に対する施策の変更を促したものとして、「義務教育」が果たしてきた側面として国民を統治する装置としての機能があること。少子高齢化社会を前に有用な労働力とするため。教育を通して治安対策など新たな役割を夜間中学に求めているとみるべきでないか。

②   夜間中学で義務教育から排除されてきた人たちが訴えていることは義務教育が持っている暴力性、排除性であり、そのことが明らかにできる場所である。

③   夜間中学で学ぶ人たちが主張する義務教育のもつ暴力性、排除性を受け止め、既存の制度を乗越えていく役割が夜間中学にある。そういう存在である。

④   排除されてきた人たちと共に格闘する夜間中学として存在していく。

⑤   例えば 積極的に「形式卒業者」を夜間中学に呼び込み実践をおこない、検証を重ねていくことも重要ではないか。

 

  夜間中学生が「学び」で提起したこと

 学齢時、義務教育を保障されなかった人たちの提起する「学習権保障の叫び」と「夜間中学生の学び」は学校教育の欠落部分をあぶり出し、顕在化させる衝撃力を持っていた。一例を挙げると、「教科書から出発し、成績で序列化し、人と人を引き裂く」文科省がいう「学校型教育様式」にたいし、夜間中学は「生活の現実から出発し、孤立してきた人と人を結び、仲間をつくる」夜間中学の学びだ。

 公教育制度が内包する学歴社会の点数学力による競争、管理が持っている諸矛盾から解放し、本来「学び」が持っている学ぶことの意義を明らかにし、夜間中学生と教員がその検証ができる場として夜間中学の学びを追求してきた。

 一方で夜間中学が公教育制度に入っていくと様々な制約がかかることも明らかになった。入学、卒業、学習内容など、昼の学校教育制度からくる制約である。夜間中学生の実態(年齢、就労経験のある社会人、就学経験の有無も様々)はこの制約の範囲を超える内容である。

 しかしながら、関西夜間中学50年のあゆみは、その制度に合わすよう、夜間中学生に求め、制度に合わない夜間中学生を結果的に「排除」していく実態が繰り返しおこなわれていたことも明らかになっている。

 このように制度内に押しとどめようとする考えと、制度の諸矛盾を糾し、制度を変えていこうとするぶつかり合いが繰り返し起こっている。押しとどめようとする考えは、教師の方に多かった。そして最後は夜間中学から夜間中学生を排除する方向に動いていった事例もあった。教師の考え方の中に、「学校型教育制度」のもつ呪縛から自らを解放する考え方が希薄であったといえる。それほど「学校型教育制度」の影響は大きかった。夜間中学生は学びを通して、教師に変革を求め、告発をし、「学校型教育制度」を乗越え、共に立ち上がることを求めてきたあゆみであった。

 いまどんな実践が生まれているのか、注目したい。

 

 髙田郁著『星の教室』が2025/2/14書店に並んだ。天王寺夜間中学ではなく「河堀夜間中学」と天王寺の住所・大阪市天王寺区北河堀町を使っている。2001年4月から1年間、河堀夜間中学に入学した潤間(うるま)さやかさんを中心に、河堀夜間中学の姿が描かれている。潤間さんは、いじめが原因で昼の学校を不登校になり、卒業証書受け取りを拒否した19歳の女性だ。

 改めて感想を書くことにするが、詳しく夜間中学の「学び」が記述されている。著者は長期にわたって、教室で夜間中学の授業を体験し、第三者の眼で授業の展開が触れられている。そして先に書いた夜間中学で追求している学びの具体に触れていただいている。作者も潤間さやかさんと用瀬裕さんとして登場している。夜間中学の教員であったものとして、登場者は勤務校で出会った、夜間中学生のAさん、Bさんに重なってくるのは驚いた。新しく開校した夜間中学にも最高のプレゼントではないか。

 

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