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夜間中学その日その日 (1018)   砦通信編集委員会

近畿夜間中学校連合作品展・生徒集会       2025.02.24


 近畿の夜間中学19校で学ぶ夜間中学生の作品を展示する「近畿夜間中学連合作品展」が2025年2月9日、天満夜間中学を会場に開かれた。この作品展は、各夜間中学の学びで生まれた作品を展示し鑑賞する行事だ。午前中は体育館で生徒集会を開催、各校が午前・午後に分かれて作品を鑑賞する進行だ。

 生徒集会では生徒会連合会の上田会長は挨拶で「門脇さんは今も、天国で『あんた、しっかりしいや』と言っているような気がします」と述べ、門脇さんを悼んだ。昨年、東生野夜間中学の作品展会場で門脇会長が持参した、畑副会長の遺影を文の里夜間中学の展示会場に置く申し入れを行ったが実現しなかった。学校側のその措置に対して、厳しく“世間の常識”を挨拶で訴えた。その声が今も耳に響いている。



 各学校からの報告では、パンと牛乳の補食給食について意見があった。2010年、当時の橋下知事が身を切る改革と称して夜間中学の就学援助と補食給食の府補助廃止を強行してから、4つの夜間中学設置市で補食給食が全廃となった。3設置市で続けられているが、仕事を終えて駆けつける生徒には足りていない。質をあげてほしいという訴えであった。行政区で補食給食の補助に格差があることもおかしいと、改善を訴えた。学校の設備の問題で、足が悪い生徒や車椅子の生徒が学びをあきらめている現状がある。すべての人が学べる環境にしてほしいという意見があった。

 昼の子どもたちが学んでいる施設と夜のそれとの格差についても、教育行政の“夜間中学校観”の相違が大きく、各地で新設される夜間中学の教育環境・教育条件との格差が歴然としてきている。

 支援学校高等部を卒業した生徒が夜間中学で学び、高校受験を希望したが、大阪府教育委員会が認めなかった。生徒会が署名活動を行い、「改善」の要望を粘り強く行ってきた。今回、「編入学」対応という形で、定時制高校に限って認めるという回答を出してきたとの報告があった。生徒会は、夜間中学生の進路選択を保障するため、今後もすべての高校への受験資格を求めて運動を続けていこうと訴えた。

2024年春開校した佐野夜間中学の生徒会長から発言があった。

 「中学生の時、学校への興味を無くし中途退学した。兄の元で皮職人として働いたが、文字が読めず、悔しい思いをしてきた。 2年前テレビで夜間中学を知り、行こうと思った。嬉しかったことは、友だちができたこと。理科で星の勉強をしたら、空を見上げるようになった。社会の勉強をしたら、今まで分からなかった新聞に興味が持てた。2年前テレビを見て、私の世界が変わった。まだ来れていない人にも夜間中学を伝えていきたい」と発言した。

 閉会挨拶で副会長は 「学校の勉強についていけず、学校は苦しい場所だった。人と関わることが苦手だったが、夜間中学で初めて、心通わせる仲間ができた。今、こうして人前で話せていることは、以前の自分では考えられないことだ」と語った。

 

 集会を終え、午後から、展示作品を見学した。各校展示スペースが狭く、出展作品をかなり減らされたのではないのか。にもかかわらず各夜間中学、特色ある作品が並んだ。

畝傍夜間中学は、一人一人の書く 自分の「笑」の漢字を白布にロウで書き、玉ねぎの皮で染めた布35枚をつなぎ合わせた共同作品があった。2023年69回の全夜中研大会で落語家の露の新治さんが「笑」と書いた色紙を示して話したことをヒントに自分の考える「笑」を作品にされたのだ。

 兵庫北分校の作品は阪神淡路大震災30年を迎え、震災時と現在の写真を並べ、多色版画が展示されていた。大震災を体験された夜間中学生は1~2名とのこと。

守口夜間中学の藍染の大型の共同作品は「新たな一歩」、各夜間中学生の主張をつなぎ全体で詩構成にし、その文字をロウで書き、藍染で仕上げた作品だ。これまで取り組まれた藍染の共同作品はコロナ禍で制作できなかった年もあるが、20を超える全作品を展示して、夜間中学生の主張とその変遷を考えることができないだろうか。

 

 展示教室で聞きなれた声が時々聞こえる。どこから聞こえるのかと聞こえる声の方向に進むと意岐部(おきべ)夜間中学のブースからだ。工作でつくられたミニュチュアの応接椅子に立てかけられた門脇勝・前連合生徒会会長の遺影とタブレットに映しだされる門脇さんの映像から流れる声である。

 夜間中学に隣接する北野病院に入院された時、沈む夕日と眼下に浮かび上がる天満夜間中学の教室の灯。そんな写真が門脇さんのSNSにアップされた。私は応答する形で「『書きたい』窓越しの夜間中学」(2001/1/23の朝日新聞)の記事を送った。門脇さんはその日のうちに、その筆者が髙田郁さんで当時、川富士立夏さん」であることをSNSに投稿された。記事には「学び舎の灯は通りを隔てた病院の一室で闘病する父と娘を包んでくれた」と記されていた。

 

 多くの学ぶ思いを展示した夜間中学の作品展。たった一日の展示ではもったいない。一昨年、この時期、大阪市庁舎の入口ロビーで保育園の作品展が開かれていた。大阪市教育委員会夜間中学担当者は夜間中学広報を何とか充実したいとの発言があったので、新しい広報手段として、市庁舎ロビーで夜間中学生の作品展をされたらと提案した。すぐにはできませんが、検討しますとの答えであった。どう検討されたのだろう?

 天満夜間中学の作品展示も、おそらく昼の子どもたちにも目にすることのないスピードで撤去されたのではと推測する。かつては尼崎市の会場では、1週間の展示期間を設けて頂いた。

 

 天王寺・文の里夜間中学の統廃合の大阪市の愚策に対峙する意見や、作品を見つけることはできなかった。

 

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