夜間中学その日その日 (867) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2023年2月5日
- 読了時間: 6分
夜間中学報道 2022年 (上) 2023.02.06
夜間中学のマスコミ報道、特に新聞報道の記事の内容を中心に分析を加え、報告を行ってきた。2021年までは次の年の1月に前年の記事分析を行い、報告をしてきた。昨年2022年は、記事数も多く、内容が多岐にわたるので、月報として月ごとに報告を行ってきた。
2022年の全体傾向を改めて把握するため、月報の前文を再録する。
2022年1月
夜間中学がどんなあゆみを続けていくか、教育機会確保法が公布されたことにより、夜間中学を開設することが地方自治体の義務となった。それまでの行政の対応の「無視」、「見て見ぬふり」から正反対に舵を切ることになった。
夜間中学開設運動のなかったところで、夜間中学のあゆみの認識もなく、昼の中学校と同じ内容を提供すればよい、夜の時間帯に学ぶ場所を提供すればよいとの考えが、地方自治体の施策担当者の常識になっていないかと危惧する。あなたは中学一年生までは終了していますから、あと2年学べば卒業ですと卒業を迫り、本人から卒業の申し出があったとして、卒業させていく。その卒業生は自主夜間中学に再び通い始めたとの事例をうかがっている。
「見城(慶和)さんは、全都道府県への夜間中学の設置を急ぐ国の姿勢に疑問も感じるという。『夜間中学は多様な学習要求にきめ細かく応える学びの場であり、小学校の経験もない生徒が来ることもある。ところが昼間の学校と同じ教科書を配り、脱落してしまう生徒が各地で出ている。限られた人数や予算で見切り発車に近い状態で進むことがあってはならない』」(【共に学ぶ】夜間中学で〝学び直す〟 途絶えぬニーズと課題 教育新聞 2022年1月27日)。
不登校特例校に夜間中学を併設し、2校の夜間中学を廃校にする大阪市議会の議論も、この動きの背景に「経営」「費用対効果」の考えを優先し、夜間中学の社会的存在意義の議論が大変弱いと感じた。現場からのこの視点の発信を期待したい。
山下市長(香川県三豊市)のコメントがあった。「それぞれの事情を持った人たちが来るので、1つの型にはまった学校ではなくて、一人一人に自分の学びを見つけてもらい、それに寄り添える学校を目指したい」(NHKテレビ2022.02.28)。この主張が実現できる夜間中学をどうめざすか、まず教員の創造性が試される。
2022年2月
夜間中学資料情報室で確認している新聞記事は56を数える。マスコミ報道は夜間中学在籍数と正の関係があるのか分からない。テレビ、新聞、ラジオで夜間中学が取り上げられない日はない。しかしその影響はまだ入学生数増にはつながっていないようだ。現在、夜間中学生募集時期を迎えている。在職時、休日になると、気になって仕方がなかった。入学希望者が学校に来られているんではと、昼の中学のクラブ活動で校門が開いているかなあと考えることもあった。用事をつくって、学校に行くこともあった。
3/19全国夜間中学校研究大会誌が送られてきた。真っ先に向かった頁は統計資料の頁だ。夜間中学在籍数がどのようになっているかに注目している。学校数と在籍生徒数の推移のグラフをみると1554名から1603名と49名増加(?)している。学校数も34校から36校と増えている。この統計は単純比較ができない問題点がある。形式中学卒者の夜間中学入学を認める通知を出した(2015.7)。教育機会確保法の公布(2016.12)。横浜市の統計が入っていない時期もある。新開設(川口、松戸、常総、徳島、高知)の在籍数が入っていなかったりして、単純比較ができないのだ。夜間中学の全国報道、教育機会確保法の公布などが、在籍数増に影響しているか否かをみているのだ。
2015年の31校1825名を基準に2015年の条件で、31校の在籍数にどんな変化を及ぼしたかをみている。2017年1826名が1739名。2018年1698名が1538名。2019年1742名が1496名。2020年1554名が1286名。そして2021年1603名が1213名。初めと終わりの差、1213-1826=マイナス613。
つまり、2015年から2021年の変化をみると31校の夜間中学には613名在籍が減っていることになる。これはどう解釈すればいいんだろう?夜間中学を必要としている人は確実にいらっしゃる。その人たちには夜間中学で学べるという情報が届いていないことになる。ではどうやって?・・・
2022年3月
夜間中学資料情報室で確認できた3月の新聞報道は51である。夜間中学開設に関する報道は14と最も多い。札幌市星友館中学と大阪市の夜間中学統廃合計画に反対するとりくみの報道が各5ある。産経新聞の「夜間中学はいま」は2021年7月から、「学び舎の風景」が始まり、月2回、一つの夜間中学を取り上げ、1回目は各夜間中学の独自の活動を取り上げ、2回目は夜間中学が発行する文集に掲載された夜間中学生の文章を紹介している。3月は豊中夜間中学を紹介している。
夜間中学生に力点を置いた取材姿勢である。産経新聞のこの企画が始まったのは2019年3月16日の尼崎市立琴城分校であった。夜間中学を何度も訪問、夜間中学生との人間関係を築きながら、取材を重ねられた。紙面に登場した夜間中学生は相当な人数に達する。夜間中学生の写真も夜間中学で学んでいる歓びの表情は、記事を裏付けている。そして、今の夜間中学の姿を映し出す貴重な記録でもある。

第51回全夜中研大会の関連企画として、全国の公立自主の夜間中学から届いた、夜間中学生の文章を編集して『夜間中学生―133人のメッセージ―』(2005年 東方出版)を公刊した。しばらくして、ある大学から連絡があり、入学テスト問題に文章を使用させてほしい。 執筆者の了解を取って返事した。
ところで、夜間中学関係者では周知のことでも、社会にはまだまだ夜間中学のことは伝わっていない。行政の夜間中学担当者も夜間中学のあゆみや常識的な事実も知ることなく、施策を打とうとされている場面に遭遇して大変驚いたことが最近あった。加えて、市議会の議論も浅薄で、これで施策が打たれていたのかと考えると、夜間中学現場や、教育員会事務局の確固たる理論と実践が問われている。
夜間中学のこと新聞やテレビで報道していましたね。と声がかかるが、夜間中学があることも、学べることも、必要とする人たちには届いていない現実を直視しないといけない。
みやぎ夜間中学研究会事務局 佐藤紀昌氏(3/16河北新報)の論考記事があった。「みやぎ夜間中学研究会」がどのような活動をなさっているのかは記事からは分からないが、夜間中学のことを自主的に勉強する民間研究会であれば、夜間中学の事を熟知して学習者の立場からの夜間中学応援団にならないだろうかと考えた。
2022年4月
夜間中学資料情報室で確認できた4月の新聞報道は65である。
新たに開校した4校の夜間中学関連の報道が37〔福岡(16)、札幌(8)、三豊(7)、相模原(6)〕と57%を占めた。
新しい自主夜間中学の報道があった。防府(山口県)(4/28)、相模原に「自主夜間中学」(4/17)、刑務所内の夜間中学(4/16)、塩尻市立公民館で館立夜間中学(4/14)。
宮崎市で公立化に向けた報道があった「夜間中学設置向けアンケート 宮崎市教委 2024年度中開設へ」宮崎日日(04/13)。
「夜間中学はいま」(産経新聞2022.04.11)の記事は見出しが「ヤングケアラーだった26歳の夜間中学生が見た風景」。この記事はこれまでの、記者執筆の記事ではない。5枚の写真、4編の詩「一花(ひとばな)」、「透明な世界」、「心の木」「感情(こころ)の音」、そして文章全体を一人の夜間中学生が執筆制作された。紙面全体を提供した新聞社にも驚きであるが、守口夜間中学に学ぶ夜間中学生の力にエールを送りたい。「詩を綴ること、写真を撮ることは、自分自身の想いに寄り添うことだといいます」と記者は紹介している。
Comments