夜間中学その日その日 (868) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2023年2月7日
- 読了時間: 7分
夜間中学報道 2022年 (中) 2023.02.08
2022年5月
夜間中学資料情報室で確認できた5月の新聞報道は52である。
日本海新聞の5回の連載記事「学び直しの喜び 夜間中学に集まる人々」。開校準備が進む、鳥取県で夜間中学の認知を促し、関心を高めることを意図し、同じく県立の夜間中学のとりくみを紹介し、鳥取県での課題を明らかにしている。
開設を促す、自主夜間中学の開校(北海道北見)や、「和歌山に夜間中学をつくり育てる会」の発足。北九州市で夜間中学検討会議の発足。大分市教委社会教育課が2016年から実施している「おいたナイトスクール」。「対象は、中学校で十分学べなかった人や中学校の学習内容を学び直したい人、日本語を学びたい外国人で、これまでに約500人が学んだ」と報じている(5/13毎日)。
ヤングケアラ-と夜間中学を取り扱った記事が3件あった。
大海をさまよい、やっとたどり着くように、夜間中学に「たどりつく」と表現した夜間中学生に何人も私は出会ったが、「夜間中学に『たどりついた』苦難を喜びに変えて」(産経 2022/5/18)は長く夜間中学生を取材している記者の眼と耳に留まった「たどりつく」が記されている。

めずらしくなくなったが、ルビ付の記事があった。近畿夜間中学校の新入生歓迎会を報ずる(毎日 2022.05.17)の記事だ。記事には「おことわり」として次のように書かれている「夜間中学に通う人、通いたい人に読んでいただきたいため、すべての漢字にルビを振りました」。
夜間中学では、夜間中学生が夜間中学を掲載した、新聞記事や週刊誌を持参して、それを授業で紹介したり、学習に活用する。文字を大きくして、教材をつくる。読んだあと、夜間中学生は自分と重ね合わせて、自由に語りはじめる話がよかった。夜間中学生の背を押し、何より教員が勇気づけられた。優れた教材になった。
5月27日、2020国勢調査の結果が公表された。ホームページにアクセスして、「膨大で何が何だか分からない、印刷物が出版されるまで待つ」と情報量に圧倒されて、数字の大海におぼれてしまい、このように話す人があったが、夜間中学の教材に仕上げて、夜間中学生と考える授業をとり組まれないだろうか。6月18日、NHKがニュースで報道していた。今後、新聞も取り上げがつづくであろう。
2022年6月
夜間中学資料情報室で確認できた6月の新聞報道は46である。
新たな学びの場について7件の報道。 「福島県二本松、大玉、三春に新たに3校」、神奈川県鹿沼台、北海道北見市、岡山県総社市は「岡山県総社市は「そうじゃ『夜間中・学びの教室』」を開講し、30日から週1回の学習を始める。ニーズの広がり具合をみて、将来的には夜間中学設置を視野に入れている」と報じている。
夜間中学の開設にむけた報道が12件、「和歌山の夜間中学校をつくり育てる会」の設立総会。ボランティア運営の自主夜間中学、岡山の商店街に。城之内「公立の夜間中学ができても、受け皿として自主夜間中学も必要」。
国勢調査結果の報道が7件。「数字が語る日本の教育 高齢者の教育機会 義務教育(中学校)を終えていない国民の実数は約100万人で」など。分析にとどめず、この結果を次の施策に生かしていく視点にたった報道が重要だと考える。その分析も取り組めていない教育行政が多いことが危惧される。「待ち」や「様子見」では何のための国勢調査か?
公立化した夜間中学の報道が6件。札幌市星友館と徳島県立しらさぎ中学、福岡市立きぼう中学の報道があった。開設して終わりではない。学習者の想いを受け止め、昼の学校のまねをしない、夜間中学独自の学校を作り上げるためにも葛藤とぶつかりあいが大切だと考える。その姿勢に立った報道が重要ではないか。
不登校の子どもたちと夜間中学の役割について書いた記事があった。そして学齢の不登校状態の子どもが公立夜間中学入学を3人の子どもが希望している。香川県三豊市のこの報道は47の地方紙か記事の配信を受け、ほとんどの新聞社が報道したのではないか。
2024年「春に大阪市内にある文の里と天王寺の2つの夜間中学をなくし、旧日東小学校に新設する不登校特例校に夜間中学を併設する市教委の方針を知ったときの衝撃は忘れられない。『日東小学校は私が卒業した学校。空襲のときには学校の地下室に逃げ込んだ。日東小学校があったから命が助かった』と母校への感謝を口にする。だが、もし夜間中学が日東小学校にあったら通えていなかった、交通の便が良い文の里だからこそ通えたと話す。『そこで学んでいる人のことを考えずに決めている。腹が立ちます』」。この産経新聞の記事は夜間中学の廃校の策動に対し夜間中学生の声や作文を丁寧に取材し、報道いただいている。
夜間中学の授業では、夜間中学生の書いた文章や記事を読んで、さまざまな意見が交流され、学習が進んでいると考える。
2022年7月
夜間中学資料情報室で確認できた7月の新聞報道は29である。
新たな学びの場について9件の報道(宮崎、長崎、熊本、静岡、群馬)。新設なった夜間中学の様子を伝える報道4件(福岡、高瀬夜間中学)。国勢調査の結果報道が6件あった。
テレビのニュース番組や特集で夜間中学を扱った放送の目録作りも行なっているが、当資料情報室で確認できた放送数は、2021年は79,2022年は7月末で96を数える。7月だけで14だ。実態はもっと多く放送されていると思う。市民の夜間中学認知度は大幅にあがっていると思うのだが、夜間中学の入学希望者にはなかなか届いていないのではないか。なぜだろう。
教育行政担当者の夜間中学認識度もそれほど高くないのに驚く。大阪府教育委員会は、府内11校の夜間中学の学校訪問を毎年行なっている。あわせて各市町村の行政担当者に参加するよう案内をしている。20年以上続けているとりくみである。守口夜間中学生が、毎年、居住している市教育委員会を訪問、話合いを行なっているが、「夜間中学の見学会に参加して授業を参観させていただきました」という声があった。しかし、次の年には別の担当者に替っていた。交代が激しく、夜間中学の内容まで、認識の引き継ぎができていないのが現状だ。
「夜間中学その日その日(837)で紹介した文の里と天王寺夜間中学が、接近してあるのは、「差別越境」の解消の結果生じた「空き教室」を活用して開設した夜間中学であることも、大阪市の担当者はお知りにならなかった。こんな状態で夜間中学の行政を担当なさっているのかと唖然とした。「これが現状ですよ。私たちが言い続けないと、あきらめたらあきません。大阪に夜間中学をつくってくれた先輩に会わす顔がない」と夜間中学生は言葉を繋いた。
大阪市教育委員会の担当者は文の里・天王寺の廃校について、「計画です」「どうするか検討中です」「状況は何も変わっておりません」と説明しているが、2022.7.24の毎日新聞の報道では「24年春に浪速区に開設する『不登校特例校』に移設する方針だ」と語彙が変わっている。新しい担当者の言葉なのか、いまの大阪市の手法なのか?
2020国勢調査結果についても、さらに掘り下げた分析が求められる。
2022年8月
夜間中学資料情報室で確認できた8月の新聞報道は42である。
新たな学びの場について12件の報道(佐賀・石川・北九州・岡山・姫路・仙台)。新設なった夜間中学の様子を伝える報道7件(川口・高瀬)。国勢調査結果分析の報道5件。夜間中学増設運動全国交流集会の報道は4件。共同通信の配信により、地方紙で各県の開設にむけた動き、国勢調査結果と関連させた記事の組み立てが特徴であった。
千葉県船橋市の新たな動きを紹介しておく。「経営者組織『中小企業家同友会』青年部に作られたSIC(ソーシャル・イン・クルージョン)委員会を中心に『自主夜間中学校』開校に向け組織が立ち上がった。今回の勉強会は、中小企業家同友会船橋支部と船橋市教育委員会の共催」(「MyFunaねっと」2022年08月22日)。中小企業家組織が、自主夜間中学開校に向け動き出したという報道だ。
社説記事’22平和考 学びの保障 民主主義の土台より強く(毎日新聞 2022/8/14)では「夜間中学の課題」として①自主夜間中学は、行政からの支援が乏しく、ボランティアらが手弁当で運営しているのが実情 ②全ての都道府県・政令市に少なくとも1校設置するという国の目標がなかなか進まないのは、入学希望者が継続的にいるかどうかが見通せないことが理由だと紹介している。③「学校教育法は経済的理由で就学が困難な場合、市町村が援助するよう定めているが、夜間中学の生徒に関してはそうした仕組みが整っていない」と就学援助制度の不備を指摘している。
7月に続いて識字調査の報道があった。「学ぶ困難把握へ 岡山で識字調査」(毎日新聞 2022/8/5)の今後に注目したい。
テレビのニュース番組や特集で夜間中学を扱った放送。8月は11だ。
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