夜間中学その日その日 (944) 夜間中学資料情報室
- journalistworld0
- 2024年1月21日
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夜間中学報道 2023年 (中-1) 2024.01.22
自省を込めて書くのだが、教員になって30代後半、勤務していた中学校は33クラス、生徒数1372名の学校であった。理科の実験は理科室で行なうのだが、肝心の理科室が1教室しかなかった。1学年11クラスで、理科担当教員は6名。当然ぶつかってしまい、教室に実験器具を持ち込んで、演示実験で進めていくことが多かった。国道1号線に面した校舎は騒音や、近くの工場からでる悪臭と学習環境はよくなかった。梅雨の普通教室の演示実験は大きな悩みであった。改善を求め教職員集団がとりくみを進めた。校舎の増築が実現したとき、管理職が言ったのは「教育に責任を持つ」ということであった。勤務している時だけでなく、地域の教育に責任を持ち続けることをやってほしいと言うことであった。当然であるがこのことは意外と難しい。
教育行政を担う担当者と話していて、教育の継続性であ然としたことがある。大阪市には4校の夜間中学がある。天王寺・文の里・昭和の3校はJR阪和線の一駅ごとに開設された夜間中学で、もう一校は大阪駅近くの菅南(かんなん)夜間中学で大阪市全体から視ても、偏在していた。4校に共通するのは「差別越境」が行なわれていた学校であった。区域外通学者が在籍生徒に占める割合は天王寺中学:658/1794=38.4%。文の里:1143/2489=45.9%。「越境は差別」である。是正を求める教育運動により、区域外通学者を居住地域の学校に戻した結果4校の学校には、空き教室が生まれ、おりしも夜間中学開設運動がとりくまれた時期とも重なり夜間中学がそこに開設された(『差別越境との闘い』森田長一郎編 明治図書22頁)。
この偏在は今問題になっている、天王寺・文の里夜間中学の統合移転の背景にある。ところがこの「歴史」があることを認識し、心を痛めている行政担当者には私たちは出会えていない。歴史を引き継ぐことはいかに難しいことであるかを痛感したが、現在を担当している教職員、行政担当者はそれを100%受け継ぎ、今、明日を担っていかなくてはいけない。「天王寺のあの校舎がどうしてあそこに建っているのかを、ご存じですか?」文の里・天王寺夜間中学存続の街頭署名でこのように言って署名された人があった。

2023年4月
夜間中学資料情報室で確認できた4月の新聞報道は61である。夜間中学の開設にむけた報道10(福島・群馬・三重・長野・鹿児島・投書)。夜間中学4校・千葉市立真砂中学校かがやき分校、姫路市立あかつき中学校、仙台市立南小泉中学校夜間学級、静岡県立ふじのくに中学校の開校入学式の報道はあわせて19。自主夜間中学は福岡、岡山、鎌倉、北見、福島、札幌の報道あわせて9。公立夜間中学は高瀬、しらさぎ、福岡、守口各夜間中学の報道が5。
教育新聞が城之内庸仁〈高瀬夜間中学教員〉さんのインタビュ―記事【公立夜間中学を全国に】 夜間中学が公立であることの意味/夜間中学が公立であることの意味/ いつでもどこでも学べる社会に 3回にわたって掲載した。「私たちが取り組んでいるのは基礎教育の保障であると同時に、人間の尊厳を保障すること」など多くの考えが収録されている。
書籍紹介の記事 大門正克著「世界の片隅で日本国憲法をたぐりよせる」(岩波)で天王寺夜間中学で学んでいた在日朝鮮人の玄時玉(ヒョンシオク)さんと教師の岩井好子さんの『オモニの歌』が紹介されている。
2023年4月のテレビ報道では22番組、内訳は仙台市、千葉市、静岡県、姫路市の公立夜間中学の開校入学式を伝える9報道番組。高瀬、水海道夜間中学の入学式を伝える報道。福島市、石川、新潟、名古屋、山口の様子を伝える報道があった。
2023年5月
2023年も半分が終わった。2カ月遅れの月報になってしまった。この時期、「六月三十日(みそか)は年のへそ」「半夏生」など夜間中学生に教えてもらったことばとその時の授業を想い出す。田植えを終える目安だとも教えていただいた。「清明時節雨紛紛/路上行人欲断魂/・・・」の古詩の中国語暗唱のチェックを残留孤児の夜間中学生から「清明節」のころ受けた。「先生この年になって、日本語を学ぶことはどんなに難しいか、わかるでしょ」と言うことも夜間中学生は忘れなかった。
夜間中学資料情報室で確認できた5月の新聞報道は61である。夜間中学の開設にむけた報道18(長野・愛知・名古屋市・三重・滋賀・鳥取・北九州市・佐賀・大分)。公立夜間中学の報道16(千葉市立真砂中学校かがやき分校・相模原市立大野南夜間中学・姫路市立あかつき中学校・静岡県立ふじのくに中学校・高瀬夜間中学・福岡市立きぼう中学)。自主夜間中学の報道はあわせて7(京都・船橋・栃木・北見)。地方自治体が夜間に学校で「塾」を運営している事例が増えてきた。「村営学習塾、7年目の開講 地理的に通塾できない生徒を支援 阿智村、50人超が受講希望 信濃毎日新聞 2023/05/19」の記事がその例だ。
2023年5月のテレビ報道は13(識字調査・不登校、福島市・名古屋市・愛知県・三重・姫路・山口)。
2023年6月
夜間中学資料情報室で確認できた6月の新聞報道は48である。夜間中学の開設にむけた報道17(福島・愛知・三重・金沢・津山・鳥取・大分・宮崎・佐賀)。公立夜間中学の報道3(札幌市立星友館中学校・静岡県立ふじのくに中学校)。自主夜間中学の報道はあわせて12(旭川・札幌遠友塾・愛知・京都・高松・珊瑚舎)。
「静岡県、夜間中学校に保育・教育施設向けICTサービス『CoDMON』を導入」(EdTechZine 2023.06.08)記事では「CoDMON」は、教職員と保護者に対して各種支援ツールを提供するICTサービス。園児・児童生徒の情報と連動した成長記録や指導案などをスマートに記録する機能をはじめ、登降園・登下校管理や、保護者とのコミュニケーション機能など、教職員の業務負担を大幅に省力化しながら保育・教育の質を高める環境づくりを支援している」と説明がある。どんな運用か続報をお願いしたい。
文の里・天王寺夜間中学の統廃合について大阪市教育委員会会議で承認された報道が4件あった。市教委事務局の説明に重大な瑕疵があり、再審議を求め、生徒会のとりくみが続いている。
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