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夜間中学その日その日 (464)   Journalist Worldジャーナリスト ワールド 白井善吾

  • 白井 善吾
  • 2016年9月17日
  • 読了時間: 4分

夜間中学を教育法に位置づけるとりくみ

夜間中学の学習環境の改善を求めて大阪府教育委員会との交渉に初めて参加したときのことを鮮明に覚えている。1987年のことだ。当時、府内10校の夜間中学から参加した教員や大阪教職員組合の執行委員併せて約20人を前に、たった一人で現れた担当者は答弁で次のように言った。

「夜間中学が教育法で明確に書かれていれば、もっと教育条件を整えることが出来ます。学校教育法施行令25条の第五項、『二部授業』を拠に、大阪府が行っている施策が精一杯です。これ以上は出来ません」と吐き捨てるように言った。

私はこの発言を「学校教育関係法規に名称がなく解釈によって運営されている夜間中学であることを忘れるな」との宣告だと受け取った。

一方夜間中学同様に、夜間に授業を行っている定時制高校があるが、学校教育法に「定時制の課程」として明記されている。

夜間中学を法規に明記させるとりくみは、全国夜間中学校研究会が「全国中学校夜間部教育研究協議会」と称していた、1954年の第1回の大会から議論されている。大会では「中学校夜間学級の法的措置にかんする陳情書」を採択した。内容は学校教育法25条の是正と学校教育法75条の追項する提案であった。

夜間中学を教育法に位置づけるとりくみを簡単にふりかえっておく。

1971年10月25日、天王寺夜間中学を訪問した槙枝日教組委員長は「『これまで私生児的な存在だった夜間中学を“国家の子”として認知する必要がある』と、義務教育未修了者のために夜間中学設置運動を起こす方針を明らかにした」と報じている(1971.10.26 朝日)。

第72回日教組定期大会(1990.6.29)で「国際識字年の今年、夜間中学校を学校教育法の中に位置づけるとりくみをすすめ、夜間中学校の教育条件整備に取組みます」を運動方針の中に明記した。

全国夜間中学校研究会は、第48回全夜中研大会で「人権救済申し立て書」と「全国各地への公立夜間中学校増設を求める特別アピール」を採択した(2003.12.13)。

これをうけ、日弁連は夜間中学校の拡充を求める国への意見書「学齢期に修学することのできなかった人々の教育をうける権利の保障に関する意見書」を提出(2006.08.10)した。

民主党は参議院に「学校教育の環境整備の推進による教育の振興に関する法案」を提出(2009.03.25)した。しかし、この法案には夜間中学のことは入っていない。 2008年5月、近畿夜間中学校生徒会連合会は当時の橋下知事にたいし、就学援助補食給食の復活を求める闘いを展開した。この闘いを日教組は「教育の機会均等と学びを保障するための就学・修学保障制度の充実を強く求める」全国署名を展開、近畿夜間中学校生徒会連合会の闘いの支援活動を行った。そして集まった60万7476筆の署名を国会に提出、参議院に請願を行った。

学齢を超えた生徒が学ぶ夜間中学に就学援助制度を位置づけるため、先の法案の第3条に「7.学習する機会が失われた者がその希望するときに再び学習する機会が与えられるようにすること」を挿入し、民主党は、議員立法で「学校教育環境整備法案」を提出した。参議院は通過するが、衆議院解散により廃案となる(2009.06)。

2014年4月24日、超党派で「夜間中学校等義務教育拡充議員連盟」が57人の国会議員の参加で発足した。

文科省も下村文科大臣が5月21日の衆議院文部科学委員会で「各都道府県に1校以上の夜間中学が必要」と答弁するなど、大きな変化を見せてきた。それを裏付けるため、9月9日、文科省は夜間中学の全国調査を実施した。。

 2015年4月22日、夜間中学等義務教育拡充議員連盟は夜間中学拡充に向け法案「多様な教育機会確保法案」の議員立法により立法化をめざすことを確認した。文科省は5月8日、夜間中学の全国実態調査結果を発表。

5月22日、夜間中学等義務教育拡充議員連盟は総会を開き、夜間中学拡充に向け法案「多様な教育機会確保法案」の立法化をめざすことを確認した。この素案にはフリースクールや自宅での学習を義務教育の場として位置づけられる方策も盛り込まれていた。

5月27日、超党派のフリースクール等議員連盟と夜間中学等義務教育拡充議員連盟の両議連は合同総会を開き「義務教育の段階における普通教育の多様な機会の確保に関する法律案(仮称)」座長案を議論、議員立法で今国会に提出することを決めた。

7月30日、文科省は「既卒者に対する夜間中学入学について」を全国に通知、形式卒業者の夜間中学入学を認めた。

2016年に入り190回通常国会では継続審議となり、9月招集の臨時国会で議論が続く。以上が今日に至る経過である。

夜間中学を教育法規に位置づけるとりくみは悲願である。2014年7月3日、 教育再生実行会議で「夜間中学の設置を促進する」提言を決めるなど、それまでは別々に開かれていた、超党派のフリースクール等議員連盟と夜間中学等義務教育拡充議員連盟が、私にとっては突然の感がぬぐえないのだが、両議連が合同総会(2015.05.27)を開き座長案を議論するなど一連の動きは不可解である。

 
 
 
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