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夜間中学その日その日 (467) Journalist Worldジャーナリスト ワールド 白井善吾

  • 白井 善吾
  • 2016年10月7日
  • 読了時間: 3分

夜間中学が持つ固有振動

北海道教育委員会は10月4日開催された「道議会予算特別委員会で、公立の夜間中学設置の可能性を見据え、対象者に就学希望を聞くなどの調査を年内に実施する方針を明らかにした」と報道があった(2016.10.05読売新聞)。

 「特別委で道教委の担当幹部は、アンケートの対象について、『自主夜間中学に通う人や過去に通った人』と説明。『公立夜間中学へのニーズを適切に把握したい』と述べた。十分な教育を受けずに卒業した『形式卒業者』の状況についても調べる。調査結果は年度内に取りまとめるという」とも報道している。

 夜間中学のニーズがあるか否か、心配だと行政担当者が心配するのは分からなくもないがそれは杞憂であるといいたい。

 大阪の場合を紹介しよう。次のような見出しの報道記事がある。

「せっかくの新設予定が希望者たった12人」(1972.01.26 朝日新聞)。

天王寺(1969年開校)、菅南(1970年開校)に加え1972年4月開校する夜間中学は、堺市立殿馬場中学、八尾市立八尾中学そして東大阪市立長栄中学の3校である。各校の入学希望者数はこの報道時点で、12人、10人、26人だという。これに対し、すでに開校している2校はそれぞれ、70人の入学希望者があるという。

「堺市の夜間中学校きょう入学式」の報道では41人(1972.04.25朝日新聞)。

八尾中学は、「希望者わずか13人、募集期間今月末まで延期」(1972.04.01朝日新聞)。

長栄中学は「夜間学級がスタート 平均38歳56人が入学」(1972.05.01東大阪市政だより)。

各夜間中学、その年度の在籍者の統計をみると殿馬場(52人)、八尾(27人)、長栄(60人)である。

 私は何もしなくてよいと言っているんではない。いかほどの方が入学を希望され、今後どんな見通して推移していくのかと予測するに当たって、「自主夜間中学に通う人や過去に通った人」を対象にアンケートを採るのであれば、学びを必要とする人たちに、夜間中学についての広報活動にもっと力点を置くべきだ。

 夜間中学関係者にとってある意味ショックな報告があった。北海道教育委員会は91人の道民に「インターネット教育モニター」を委嘱している。モニターに「公立中学校夜間学級について、以前から知っていましたか?」という問いに68人の回答があった。その内容は、「知っていた」23人(33.8%)。「知らなかった」45人(66.2%)。道教委は「『知らなかった』と回答のあった数が『知っていた』のほぼ倍となっており、公立中学校夜間学級に対する認知度は低い」と記述している。

教育には関心の高いであろうモニターをして3分の1の夜間中学の認識度であることは社会的にはまだまだ夜間中学は知られていないと考えるべきだし、学びを求めている人たちには夜間中学のあることは届いていないと考えるべきではないだろうか。

夜間中学があることがわかっていて、今日こそ校門をくぐるぞと決意をして訪れた夜間中学も入れませんでしたと述懐する夜間中学生は多い。髙野雅夫さんをして、「尻ポケットにナイフを忍ばせて、もしどうしても入れてくれなかったら、ナイフで脅かしてでも入ってやるぞと意気込み、校門の前をウロウロしたが、どうしても入れず、その日は結局諦めてしまった」と書いている(『夜間中学生タカノマサオ』43頁)。

入学希望者の細やかな心理状態に、あわすことが出来る振動数をもった波が夜間中学にあって初めて、入学希望者が門をくぐれるのである。「校門付近を行き来する私に『どうぞお入りください』と声をかけていただいたから今日の私があります」とある夜間中学生は門をくぐったその日のことを語っている。

そこに夜間中学があれば、その日はなくても、次の日には夜間中学を訪れるのだ。その人たちに夜間中学を届ける不断のとりくみこそが重要だ。大阪の例はそのことを語っているように思う。道教委の担当幹部の心配は杞憂である。

15の道県で夜間中学開設に向けた調査研究が行われているが、紹介した大阪の入学希望者の動きは知っておいていただきたい。

 
 
 
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