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夜間中学その日その日 (475)     Journalist Worldジャーナリスト ワールド

  • 白井善吾
  • 2016年12月13日
  • 読了時間: 4分

教育機会確保法成立

「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(以下、教育機会確保法)」が参議院本会議(2016.12.07)で可決、成立した。超党派の議員連盟が議員立法として第190回通常国会に上程したが、継続審議となっていたものである。

夜間中学を学校教育法に位置づけ、立法化することは夜間中学生、卒業生、夜間中学関係者の願いであった。わたしたちは、すべての人々の学ぶ権利を保障し、夜間中学を必要としない学校・社会づくりを求めて、そのために夜間中学は存在し、その役割を果たさなければならないと考え、その一歩となる夜間中学の開設を求め活動を行ってきたが、その願いを法的に担保するものが必要であると考えた。

2015年5月27日まで別々に議論されていた、フリースクールと夜間中学にかかわる超党派の議員連盟が、合同の総会を開き、両者の法案を一つにまとめたのが成立した法律である。

この日に至る過程や、議論を聞いて私の想いは複雑である。衆議院の文部科学委員会議論(2016.11.18)でも「夜間中学については、当事者、関係者が一致して賛成」をしている。「しかし、不登校の部分には、本来、一番歓迎されるべき当事者、関係者の中から強い批判が起こっている」。慎重審議などを求める請願署名は、10530筆(11/15時点)、紹介議員は55名になる。「夜間中学の部分は一致している」から立法化しようとの発言があった。

それまで個別に論議していた法案が2015年5月27日、この日突然、まとめて一本にしようとなったのか、その理由を夜間中学関係者に聞いたが、この疑問は解けていない。

この法律は夜間中学が法的に位置づけられ、すべての人の学習権を保障することにつながるとしている。しかしその一方で学齢の不登校生に夜間中学の門戸を開こうとしている。

衆議院文部科学委員会の採決をする日(2016.11.18)になって、(馳委員)「時間ですので、これが最後の質問になりますが、この夜間中学校には、いわゆる学齢期の生徒は含まれるのかどうか」と質問をし、(藤原初中局長)「夜間中学において、本人の希望を尊重した上での学齢生徒の受け入れは当然可能」とやりとりをするなど用意周到である。

ここに至る2016.10.26、讀賣新聞が「不登校生徒、夜間中学で受け入れ方針…文科省」「文部科学省は、義務教育を修了していない15歳以上の人らが通う公立の夜間中学で、不登校などで昼間の学校に通えない中学生の受け入れを進める方針を固めた」と報道があった。夜間中学関係者がこの報道内容を、文科省担当者に確かめたところ、「文科省は取材は受けていない」とのことであった。

近畿の夜間中学では今の社会や義務教育学校が生みだす不登校は、不登校状態になる原因を本人に帰すことはせず、家庭・学校・社会が共に取り組むことから解決の方途が得られると考え、安易に夜間中学が受け入れることはしなかった。これに対し、昼の学校には行けない学齢生徒を夜間中学が引き受けるべきではという考えが昼の学校現場のみならず、夜間中学内部にもあり、とりわけ学齢者が夜学ぶ学校として誕生した歴史を持つ東京都の夜間中学の教員とは議論が続いていた。

私たちは不登校状態の子どもを中心にすえ、家庭・学校・教育、福祉行政が共同でとりくむべきだと考える。そのとりくみの一過程として夜間中学に子どもが通い、夜間中学生と共に学びながら人間関係をつくり、自分自身を見つめる実践を通して、もう一度、家庭・学校・教育、福祉行政が課題解決を図るとりくみはあっても良い。それを「夜間中学でお願いします」と昼の子ども集団から切り離して実践する手法はとるべきでないと考える。

夜間中学とフリースクールをあわせて考えられた「教育機会確保法案」は「学校に通える子どもは正常。通えない子どもに問題があると切り離し、本来変わらないといけない学校は変わらなくてもよいとする問題の処し方になっていると考える。

そして夜間中学が主張してきた「夜間中学生の実態から教育の在り方を問いかえし、義務教育未修了者の学ぶ権利を保障する実践」は、すべての子どもの学ぶ権利を保障し、インクルーシブな学校・社会づくりにつながるものである。それだけに、不登校生を昼の学校から排除し、夜間中学に短絡させるのは筋が通らない。

成立した教育機会確保法には9項目の付帯決議がついている。基本指針の策定や3年後に見直しすることも明記している。引き続き粘り強い活動が重要だ。学習者が主役とされる夜間中学開設をめざして、義務教育受けることができなかったの仲間に、夜間中学があることを届けていかねばならない。

 
 
 
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