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夜間中学その日その日 (485) Journalist World ジャーナリスト・ワールド

  • 白井 善吾
  • 2017年2月27日
  • 読了時間: 4分

文科省『夜間中学の設置・充実に向けて(手引き)』を読んで(3)

文科省はこの手引きを都道府県教育委員会宛に通知(2017.01.27)を皮切りに、矢継早に方針を打ち出している。「教育機会確保法」にある「基本指針」を早く出すためである。

2月7日には、都道府県が設置する夜間中学や、不登校児童生徒のために特別に編成した課程で教育を実施する「不登校特例校」には、これまで国の補助がなかったが、教職員給与を国庫負担の対象に加え、設置を促す考えを閣議決定した。

2月14日、新学習指導要領(案)を発表。「中学校」総則で夜間中学に初めて言及。学齢期を過ぎた人に特別の時間に授業を行う場合は、中学校教育が目指す資質・能力を身につけられるようにすると記し、夜間中学で特別な教育課程が編成できる根拠にしようとしている。

2月15日付で「教育機会確保法」に関する基本指針の策定に向けた意見を求めている(2/28必着)と発表した。

「手引き」を批判的に読むことを続けよう。まず疑問点を二つ書いておく。

1点目、手引きでは「第14条においては,学齢期を経過した者であって小中学校等における就学の機会が提供されなかった者の中に,就学機会の提供を希望する者が多く存在することを 踏まえ,全ての地方公共団体に,夜間中学 における就学機会の提供等の措置を講ずることが義務付けられています」(3頁)と書いている。

教育機会確保法14条の最後は「・・必要な措置を講ずるものとする」であるが、手引きでは「・・措置を講ずることが義務付けられています」と「講ずるものとする」より強い、「義務」を用いている。法律用語としては同等なのだろうか?

2点目、「手引き」3頁の欄外に15行目の「夜間中学」に付けた次のような脚注がある。

「なお、本法律第14条に規定されている『夜間その他特別な時間において授業を行う学校』としては、中学校の他、小学校や義務教育学校も想定されます(現在は設置されていません)」。

義務教育学校として2016年4月発足した守口市立さつき学園夜間学級があるが、「小学校も想定されます」の記述は、「夜間小学校」もあり得るという表記ではないのか。義務教育学校は1年生から9年生までが学ぶ学校である。小学校は1年生から6年生までが学んでいる。つまり、修業年限が9年間、6年間であるということを言おうとしているのではないか。

26頁では「市町村間の経費負担の工夫」の例示で奈良市の場合を紹介している。夜間中学生の住んでいる市町村に設置市が①夜間学級の運営に必要な経費(運営費)の生徒一人当たりの額 ②生徒の扶助費(通学費,特別活動費,修学旅行費)を合算して、居住市町村にその負担を求める方法である。

結論を述べると、私はこの方法は賛成できない。

たとえば学齢者に対し行われている就学援助制度は、学校を設置している行政と、国が50%ずつ負担することになっている。学齢を超えた人たちが学ぶ夜間中学の場合、就学援助制度はなく、これまで国は負担をしてこなかった。夜間中学生の運動によって実現した大阪の就学援助制度は大阪府と夜間中学設置市が50%ずつ負担する方法であった。国に代わって大阪府が負担する、他に例を見ない制度であった。しかし大阪の夜間中学の就学援助制度は、橋下知事(当時)が大阪府の負担廃止を強行した(2010年)。現在、設置市と居住市町村が分担する形で実施している。

以前「設置市の人たちならまだしも、他の市に住んでいる人たちまで何で設置市が負担しないといけないのか?」こんな声が市議会の議論にあった。「府も負担をしているから」と説明をし、理解をいただいたとのことであった。背景に国や都道府県の広域行政が何ら負担を行わず、夜間中学設置行政にのみ負担を求める方法に対する不公平さがある。奈良県で行っている「市町村間の経費負担」の手法は、回り回って、夜間中学生にそのしわ寄せが集中することになる。夜間中学生が住んでいる市町村の負担を減らすため、修学年数を3年とし、入学者にその誓約を求めるなどである。一地方行政の問題だとすることができない構造だ。

国が「少なくとも一県一校の夜間中学を」と言うとき、夜間中学を設置した行政に負担が集中しない施策を講じるべきではないだろうか。「夜間中学その日その日」(483)で試算したように、一校あたり年間7154万円の費用がかかる。内訳は国:1334万円(18.7%)。大阪府4602万円(64.3%)。設置市1218万(17.0%)。ほとんどが人件費で6154万円(86%)だ。オスプレイ1機分(211億円)で300校の夜間中学が開設できることになる。せめて大阪府レベルまで国は肩を入れるべきではないだろうか。

執筆時、「松戸市が公立夜間中学開設へ 未就学や不登校、外国人など対象 2019年4月、37年ぶり2校目」とのニュースが入ってきた。

 
 
 
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