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夜間中学その日その日 (521) Journalist World ジャーナリスト・ワールド

  • 白井善吾
  • 2017年11月9日
  • 読了時間: 4分

夜間中学が今在ることの意義

 NHKクローズアップ現代プラス『ひらがなも書けない若者たち ~見過ごされてきた“学びの貧困”~』(2017.11.02)の放送があった。NHKは全国800か所で独自調査をおこなった。そして若者の中に小中学校に通うことができなかったため、ひらがなさえ十分に書けない人や簡単な計算ができない人が少なからずいることが明らかになった。

 「若者たちが義務教育からこぼれ落ちた背景に何があるのか。教育を受ける機会を得られず、厳しい生活をおくる人々の姿を伝える」と番組作成意図を述べている。

 独自調査の内容は詳しくは説明がなかったが、貧困に苦しむ若者などを支援する窓口の担当者にアンケートを実施。「義務教育を十分に受けられなかった」という若者はおよそ600人。そのうち、読み書きに困難を抱える人は78人に上る。として、番組では代表的事例として、3人の若者を紹介した。

 ひとりは、小学2年生までしか学校に通うことができなかった、ひらがなが十分に書けない19歳の男性。生活の厳しさと6歳年上の兄の暴力が学校に通う意欲を奪ったと説明していた。

二人目は21才の女性。母子家庭で育ち、小学校に入学直後、母親が病気で倒れ、看病や家事を手伝うため学校を休みがちになった。4年生のとき、借金が原因で転校手続きも取らないまま別の町へ引っ越し、学校へ通えなくなった。18才のある日、夜間中学生募集の掲示板を見て、夜間中学に入学した。

 入学当時、九九さえうろ覚えであったが、今では複雑な問題も解けるようになった。異年齢の夜間中学生との人間関係が築け、積極的に会話に加われるように変化していった。その変化を「自分でもそれがよくわからないので。でも、夜間中学に来て勇気を出せるようにはなったんで、勇気かな」と語っていた。

 三人目は広島県福山市の若者。市は部署の垣根を取り払い、福祉課が持っている生活保護やひとり親家庭の情報と、教育委員会が持っている学校へ通っていない子どもたちの情報を共有し、支援が必要な子どもの家庭を福祉課の支援員が訪ねていき、学習支援をおこなうとりくみ。

 “学びの貧困”に対し、一つ目は対応がとれていない例、二つ目は夜間中学、三つ目は福祉課の支援員が家庭を訪問、学習支援の出前の例。この3事例を通して、番組制作者は“学びの貧困”に夜間中学の果たす役割があることを主張しているのではないか。

 かつて文部科学省教育制度改革室の武藤久慶室長補佐(当時)は夜間中学関係者の説明会(2015.11.05)で“学びの貧困”について、いくつかの資料を示したことがある。

 一つは「中学3年生の不登校生徒のうち指導要録には卒業とされた人数」の推計だ。20年間で105511人(平均5276人/年)にも上ること。

 二点目に2010年内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」でひきこもり状態の若者が69.6万人であること。

 三点目に総務省の「労働力調査」で15歳から34歳人口に占める若年無業者の割合が2.2%(2013年)で2002年以降1.9%~2.3%で推移している(2010国勢調査結果の人口に当てはめると61万9千人になる)。

 四点目に文科省の夜間中学実態調査で自主夜間中学、識字学級で学ぶ学習者の9.3%が義務教育未修了状態の人たちであること。

これらの数字は重なりがあるはずであるが、大きな人数である。これらの人たちに夜間中学は万能であるとは思わない。しかし、夜間中学が持っている昼の中学とは異なる学習環境、条件から生ずる学びを通して、二人目の女性のように、異年齢の夜間中学生とコミニケーションを取り、奪い返す学びが実践できた、夜間中学生が発する“社会への告発”は学校教育、社会のゆがみを糾す性格を持っていると考える。

 その視点から、夜間中学の存在意義を考えていってもよいのではないだろうか。

 番組では文部科学省 教育制度改革室 常盤木室長は次のようにコメントしていた。

「何らかの事情から義務教育が受けられていないというお子さんがいらっしゃるという実態があるのは、大変残念に思っています。本当に学びたいというとき、学べるようになったとき、そういう場がある、これはまさに行政の役割。そういう場を広げていきたい」。

 
 
 
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