夜間中学その日その日 (543)
- 白井 善吾
- 2018年1月2日
- 読了時間: 3分
「夜間中学はよく知られるようになった?」
2018年を迎えた。今年の10月11日は髙野雅夫さんが夜間中学廃止勧告を打ち破り、逆に夜間中学の開設を訴え、大阪入りしてから50年目の記念の年である。夜間中学に関するその日その日の出来事を届けられた記事を中心に掲載していきたい。
「えらく取り上げられるようになりましたなぁ。少し前までは時々でしたのに」久しぶりにあった知人の口から出た「夜間中学」の評判についての評価である。教育関係者ではない。一般の社会人といいっていい方である。ただ私が夜間中学に勤めていたということはご存じの方である。この日もNHKの朝のニュース(全国放送)で、不登校で形式卒業になった夜間中学生を扱った放送があった日であるが、この放送はご存じなかった。
認知度が上がったといっても、夜間中学が存在することが知られているとは決して言い難いのが現実である。昨年3月、文科省がおこなった「夜間中学のニーズ調査に関わる調査研究」(*)の結果が文部科学省ウェブサイト
(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/08/07/1386256_16.pdf)で発表になっている。
この調査は宮城・埼玉・愛知・福岡・沖縄の5県でおこなったWeb調査(各県15才以上600名、全体で3000名の男女パネルモニター)とハガキ調査(市役所、図書館、職安、自主夜間中学、フリースクールにおいたハガキに記入回答のあった917枚)を分析した調査研究である。

まずWeb調査を見てみる。
インターネット環境がある人たち、そしてパネルモニターが市民一般とは言い難い対象者であることを認識した上で、
1. 夜間中学に通ってみたい 1353人(45.1%)、思わない819人(27.3%)、分からない 828人(27.6%)。
2. 県内に夜間中学が設置されていることを知っているか。
知っている 357人(11.9%)、知らない 177人(5.9%)、分からない2466人(82.2%)。
設置されていることを「知らない」と、「分からない」の区別はよく分からない。この5県には公立か自主の夜間中学が開設され、新聞、テレビなどマスコミに取り上げられていると思うが、パネルモニターの11.9%の認知度が現状であると考えるとやはり夜間中学はよく知られているとはいえない。いわんや、学齢時、義務教育を受けることができなかったひとたちは夜間中学があり、そこで学ぶことができるという情報はほとんど知られていないと考えるべきであろう。
次にハガキ調査を見てみる。各施設窓口に39800枚ハガキを置いた。8563枚(21.5%)を持ち帰えられた。そのうち917枚が記入し投函、回収された。
1. 夜間中学に通ってみたい391人(42.7%)、思わない455人(49.6%)、無回答70人(7.6%)。
2. 卒業した学校 小学校37人(4.0%)、中学校79人(8.6%)、高校236人(25.7%)、大学422人(46.0%)、その他91人(9.9%)、入っていない34人(3.7%)、無回答18人(2.0%)。
ハガキが職安、自主夜間中学、フリースクール等に置かれていたことを考えても「夜間中学に通ってみたいと答えた391人(42.7%)」は自主夜間中学、フリースクールの学習者がハガキに多く回答し、公立夜間中学の開設を切望していることが読み取れる。回答者の「卒業した学校」の設問に対し、小学校、入っていない、無回答をあわせても89人(9.7%)にしかならない。「夜間中学に通ってみたい」の391人から89人を差し引いた、302人はどのように読み取ればいいのだろう。
いずれにしても、アンケート調査結果を根拠にして、夜間中学の需要度を推し量り、夜間中学の必要性が低い、したがって夜間中学開設をしない判断することは学習者の実態を反映したことにならない。
「(長野)県内77市町村への調査などから、夜間中学設置は『現時点でのニーズは確認されなかった』と盛り込む予定。当面、夜間中学の通学対象者となる外国籍や不登校の生徒らへの対応は、夜間中学の新設よりも既存の支援の充実が重要とした」(信濃毎日新聞 2017.02.07)の報道があるが、長野県教育委員会の検討委員会には再考を求めたい。
(*)夜間中学その日その日(487)「夜間中学に関するアンケート調査」の懸念を書いている。
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