夜間中学その日その日 (549)
- 白井善吾
- 2018年2月8日
- 読了時間: 3分
2018年度の予算案
2018年度の夜間中学関係の概算要求額が7900万円であることを報道した記事の中に日本経済新聞の記事があった。
「国が就学援助 全国設置へ自治体後押し 」(2017.10.01)の見出しで、「文部科学省は、義務教育を終えていない人などが通う夜間中学の生徒向けの就学援助を来年度から始める方針を固めた。設置主体の市区町村を通じて生徒の学用品の購入費用などを補助する。夜間中学は不登校のまま中学を卒業した人や、在日外国人などの需要が増している。同省は支援を手厚くすることで、夜間中学の全都道府県への設置を目指す。2018年度予算の概算要求に17年度当初予算比で4倍の7900万円を盛り込んだ(以下略)」
「夜間中学生への就学援助の国の支援は必要である。2年前にも2016年概算要求で文科省は夜間中学の『就学援助』の要求をしたが、どうして要求を止めてしまったのか」との質問に対し、「財務省の壁を突き崩せなかった」と文科省担当者は私たちに説明していた(2017.01.30)。
突破する論理を獲得したのか、文科省の2017年9月の2018年概算要求書をみると、「多様な生徒に対応した教育活動を支援、(多様な生徒を受け入れるために必要な環境整備に関わる経費を夜間中学を設置する市区に補助〔補助率1/2〕)約3900万円(1カ所あたり約160万円)【新規】」と書いていた。

これまで教育法規では就学援助は学齢の子どもたちにはあるが、学齢を過ぎた夜間中学生には国の支援は適応されないということになっていた。この壁を突き崩さないと、夜間中学生が安心して学ぶ学習環境はつくれないと考える。その意味で、「多様な生徒を受け入れるために必要な環境整備に関わる経費を夜間中学を設置する市区に補助」の記述を受け、文科省の報道への説明もあったのであろう、日経新聞の見出し「国が就学援助 全国設置へ自治体後押し」となったと考えられる。
ところが文科省のホームページで公表された「文部科学省 予算(案)の発表資料一覧(1月)」をみると「多様な生徒に対応した教育活動を支援」の3900万円がごっそり削除され、概算要求総額7900万が4300万減額され、3600万として発表していた。「国が就学援助 全国設置へ自治体後押し 」は2018年度予算案には計上されなかった。
大阪府では1972年黒田知事の時代、国の予算措置がない中で、国に代わって、夜間中学生の就学援助制度を創設、就学援助総額の1/2を補助していた。そして夜間中学設置市に対し、設置市以外からも夜間中学で学べるようしてきた経緯がある。この制度は「夜間中学が義務教育だというのなら、昼の小中学校と同様、国がおこなうべきだとして、2010年、橋下知事(当時)は府の負担廃止を強行した。国に夜間中学の就学援助制度をつくらせて、それから府の負担を止めるというのが責任ある立場の人がとるべき順序ではないかと考える。夜間中学生が居住地の行政を訪問、就学援助の居住地負担を働きかけ、実現させた。
「他の市にお住まいの人になんで私とこが就学援助を打たなければいけないのか」という遅れた意識が声高に叫ばれ、夜間中学入学を阻止する動きとなることは想像できる。この排除の論理は、都道府県の枠でも起こりうる。国が「最低一県に一校の夜間中学の開校を」というのなら、夜間中学生への就学援助制度を国が創設することが第一ステップである。「見て見ぬふり」は許されない。