夜間中学その日その日 (574)
- アリ通信編集委員会
- 2018年8月18日
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夜間中学生徒会
私たちは今、あらためて、関西夜間中学50年のあゆみをたどっている。50年間をずっと夜間中学にかかわってきたひと、その出来事に関係し、知り得ているひとは、一人をのぞいて、おそらく存在しないのではないか。教員であれば転勤、退職があるし、夜間中学生であれば卒業がある。しかし、卒業、転勤、退職があっても、夜間中学のとりくみに参画できる組織があった。「夜間中学を育てる会」である。しかし、現在この組織は機能していない。
在籍、在勤時の残された資料の読み込みをおこない、不明な点は当事者に面談し、聞き取り作業が重要である。そして、関係者が議論をし、まとめていく作業である。
一人をのぞいてと書いたが、その一人は「髙野雅夫さん」だ。自身の夜間中学の入学時から開設運動そして今日に至る原資料をお持ちだ。何より、その原資料に関係する人たちの「顔」がある。その多くの「顔」は生存していない。多くの屍の上に夜間中学の今があるといってもいいだろう。
夜間中学が公教育制度に入っていくと様々な制約がかかる。入学、卒業、学習内容など、昼の学校教育制度からくる制約である。夜間中学生の実態(年齢、就労経験のある社会人、就学経験の有無も様々)はこの制約の範囲を超える内容である。
関西夜間中学50年のあゆみは、その制度にあわすよう、夜間中学生に求め、制度に合わない夜間中学生を結果的に「排除」していく実態が繰り返しおこなわれていたことも明らかになった。
来春開校する、川口市立芝西中学陽春分校の説明会が8月7日開催され、約300人の参加があったとの報道があった。入学希望者が300人でないにしても、多数の入学者が説明会に参加されたことだろう。
学習者の実態に合わせ、どこまで、学校教育制度と折り合いをつけ、逆に実態に合わせて、制度を変える実践ができるかということが重要だと考える。先発地の夜間中学として、50年間のとりくみを明らかにし、良いことも、悪いことも、教訓として報告することが重要だと考える。
最初に取り上げるのは「夜間中学生徒会」についてである。

夜間中学生の悩みを持ち寄り、意見を闘わせ、夜間中学生徒会としての行動を決めていく夜間中学校生徒会の役割は重要だ。夜間中学生は無欠席で通学できる夜間中学生は少ない、本人の通院であったり、家族の看護、子育て、就労、家事をこなしながら学ぶ人たちである。
それだけに安心して学べる条件、環境づくりは重要だ。一人の悩みやつぶやきを、大きな声に、各夜間中学生徒会のとりくみを経て近畿夜間中学校生徒会連合会全体の取り組みに組み立てていく、その要望はすぐには実現しない。夜間学級の中に、支援学級を作るこの要求が実現したのは、声をあげた人が卒業後であった。
指導する人(教師)と指導を受ける人(生徒)。生徒会活動も教師の指導下での取り組みで、それを逸脱することは認められないし、責任を持てないとする考えの人たちも教員の中にはある。以前にも記述したように、自衛隊のイラク派遣反対のとりくみの時に顕在化した。この考えは克服できたと思ったが、時移り、人かわりで、また生まれている現実がある。
夜間中学の生徒会活動については、生徒会―生徒会顧問―夜間中学教員―管理職―教育委員会と横に並ぶ関係であり、これらが縦に並ぶ関係ではない。一八歳以下の子どもに適用される「子どもの権利条約」にも一三条で「意見表明権」が謳われている。夜間中学生の人生からくるさまざまな意見表明や行動提起については尊重しなければならない。
夜間中学生は学齢を過ぎた、大人がほとんどだ。その人たちを前に、「この枠の中でやってください。それができない生徒会活動は認められません。責任が問われるのは最終、学校長になります。校長先生に迷惑がかからないように、してください」。緊張が最高になったとき、恫喝を加える意味合いでもって、ある夜間中学の管理職の口から出た。そしてその次に「あなたは学校へ学びに来られてるんでしょう。教えを受ける立場の人でしょ、それがいやだったら、学校の外でやってください。あなたたち夜間中学生に、いくらの税金が使われていると思います?一人100万円かかっている」といった。
夜間中学生は次のように反論した。「恩恵で学んでいるのではない。一生懸命働いて市民としての役割も果たしている。義務教育を受けていれば、その時に百万と言われるのに相当するお金を使ってもらっていたと思う。今、義務教育を受けているので、そのお金を使わせてもらっているのだ」と。
夜間中学の生命線は、責任ある自治の精神を持った生徒会活動である。それを尊重する夜間中学教員と教育行政である。