夜間中学その日その日 (575)
- アリ通信編集委員会
- 2018年8月22日
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夜間中学の入学
夜間中学の入学式は何度もある、“校門をくぐったときが入学式”だと先輩から聞いた。その時はそうなんだと軽く受け止めただけだったが、夜間中学生の実態からくる重要な考え方であることが分かってきた。夜間中学があることも、知らなかったひとが、知人から聞いたり、夜間中学生募集のビラを受け取り、夜間中学を訪ねてくる。しかし、校門をくぐることができない。入学して勉強しようと心に決め、訪れたものの、学校の周りを行ったり来たり、結局、また別の日にと、引き返してしまう。こんな経験を語る夜間中学生が少なくない。
その日、「校門で立っていた、わたしに声がかからなかったら、入学はしていなかっただろう。『夜間中学にこられましたか?』、その声に背中を押されて、わたしは入学しました」とか、休日なんて関係ない、所用があって、出勤したとき、たまたま校門前に立っている人に出逢い、入学受付の聞き取りをした例など、珍しくない。
入学の問合せの電話も入る。その受け方も重要だ。電話だけで、入学を断ることがあってはならない。面談をして、事情をよく聞いて説明することがたいせつだ。入学したい、しかし断られるのではないだろうか。そんなことを自分自身で問答を繰り返しながら、やはり行ってみようと決心する。そんな実態なんだということが分かってきた。

夜間中学は、いつでも門戸を開いておかないといけない。年度途中であると、学習も進み、クラス内の様子も落ち着いてきている。その中に、入って学び始めてもらうには、ハードルが高い。しかし、学びたいという想いは共通だ。「あなたに合わせた授業はできませんよ」とは言って、参加してもらったものの、授業の組み立ては、やはり配慮した展開になる。自分たちにも経験があるのか、夜間中学生も隣に座った入学希望者に、言葉をかけ、みんなで支えている。
受付の済んだ入学予定の人に「受付期間は過ぎていますから、来年の4月の入学式の日に来てください」との対応はどうだろう。半年以上、入学を待っていてくださいということになる。入学を思い立った経緯を聞くと、一日も早く入ってもらって、慣れてもらったらと考える。こんな場合どうするか、教員間で話し合って、受け入れ態勢を工夫することを行ったことがある。
入学期間が決まっているからと来年の4月に来てくださいと一律に言うことは夜間中学生の実態を反映していない。夜間中学生の実態に合わせ、制度のほうを変えていく、これが夜間中学や教育行政が執る姿勢ではないだろうか。
年度途中の入学についてもどのような学習条件を工夫し、支援体制を組むのかと言うことである。おそらく,制度設計に当たり,上に指摘したことは、行政担当者の思考範囲を超えた内容だと思う。がちがちにならず、学習者の立場に立って学習環境を整えるそんな夜間中学入学であってほしい。
50年のあゆみの中で、考えておきたい事柄の二点目に、昼の学校がとっている制度をそのまま夜間中学にも当てはめようとする時の重要な問題点を指摘しておく。