夜間中学その日その日 (576)
- 白井 善吾
- 2018年8月28日
- 読了時間: 4分
第37回夜間中学増設運動全国交流集会報告(その①)
第37回夜間中学増設運動全国交流集会(2018年8/25~8/26)が千葉県松戸市、森のホール21で開催された。北海道・宮城・福島・千葉・埼玉・東京・京都・奈良・大阪・兵庫・岡山・福岡から25団体100人を超える参加があった。
開会では松戸市長から歓迎の祝電の紹介があった。次に松戸市教育委員会夜間中学開設担当者から夜間中学開設にむけて、現段階の説明があった。2019年4月開校で準備が進められているハード面、ソフト面の細かい説明のあと質疑。基調報告として、全国の進捗状況の報告。各自主夜間中学のとりくみと現状報告を受けた。夜間中学生など学習者は、開会行事、全体報告のあと、27人がフィールドワークに出発した。
一日目夜の交流会はJR松戸駅近くに会場を移し、70人近くが参加、各ブーツで交流が深められた。さらに、松戸自主夜間中学の活動施設で深夜まで話しあいがつづけられた。
二日目は教育機会確保法の見直し、国勢調査、協議会設定の展開、各自主夜間中学の現状と課題について議論をおこなった。集会終了後、開設される、松戸市立第一中学校みらい分校の校地ヘ足をのばし、JR松戸から学校へのアクセス状況を踏査した。

松戸市教育委員会教育企画課担当者は説明の冒頭「お招きをいただき・・」と挨拶した。「夜間中学ってなんだろう?」と題するパワーポイントを使って説明をおこなった。入学条件の説明では、①から④、全てを満たす人は通えるとして ①義務教育の年齢(満15歳)を超えた人 ②松戸市内在住。ただし市外(千葉県内)在住は、居住地の市町村教育委員会の副申が必要 ③中学校を卒業していない人、または、不登校等の理由により、学び直しを希望する人 ④みらい分校の生活に支障のない人をあげた。この条件の④の意味について、質問に答え、担当者は「午後5時25分から始まる夜間の時間帯の生活ができる人」と答えた。それならば、「この表現をあらためるべきではないか」と再検討を求めた。カリキュラムの質問に対し、「教育課程の編成は第一中学の校長にあるので決まっていない」と説明した。多くの質問があったが、「検討する」と答えが多かった。
わたしは全国各地の開設にむけた25の地域の進捗状況の報告をおこなった。出席団体よりとりくみ状況報告が詳しくおこなわれた。
討論では教育機会確保法の3年後の見直しについて、そのとりまとめに、自主夜間中学の現状から問題提起をする必要性が語られ、現状の交流と公的支援の現状を交流した。
国勢調査の中学を卒業できていない人たちの調査項目を設けるようはたらきかけの報告があった。2010年国勢調査では学歴記載の調査に答えなかった人は未詳として13,375,764人(15歳以上人口の12.1%)があり、この数字の中に、義務教育未修了者が相当数、含まれていることも注目すべきだ。また、国勢調査を分析した論文、碓井健寛「未就学者 128,187人に関するカウントデータ分析」(基礎教育保障学研究2017.8)・碓井健寛「義務教育未修了者とは何か?」(創価経済論集2017.3)の議論も紹介した。
形式卒業生の入学は夜間中学設置市の住民に限るとする入学制限を表明している行政があることも明らかになった。この問題について、文科省は3年前の説明会(大阪・八尾)で形式卒業者の数を20年間の合計で105,511人(平均5,276人)の数字あげ、形式卒業者の夜間中学入学を認めたが、予算措置や支援など全くおこなわず、一片の通達をだすだけの、国の姿勢に根本原因があることは明らかだ。
自主夜間中学のとりくみを始め、松戸自主夜間中学(36年)、江東自主夜間中学(37年)、川口自主夜間中学(33年)を始め、長い取り組みの歴史がある。そして2017年、あゆみを開始した岡山自主夜間中学は、学びの場を設け、学習者の出席のない日もあったが必ず現れると、とりくみをつづけた。現在学習者40人、スタッフ40人、そして活動資金をクラウドファンティングの手法で目標を超える140万円の支援で学びを展開している報告もあった。また岡山県のおこなった夜間中学のニーズ調査で夜間中学入学を希望していた5名のうち1名がなくなられた。いつまでニーズ調査をつづけるのか、県の対応のなまぬるさに批判の声が上がっているとの報告があった。
夜間中学の主役は夜間中学生、魂の入った夜間中学を開設させるためにも、37回続いた夜間中学増設運動全国交流集会の役割は重要である。地元関東の3自主夜間中学が準備から運営とご苦労をおかけした。多くの仲間が手弁当で集い、行政関係者、研究者、スタッフ、学習者の立場を超え、顔を見て議論し、交流できたことは大きな成果ではないだろうか(つづく)。