夜間中学その日その日 (577)
- 白井 善吾
- 2018年9月2日
- 読了時間: 4分
第37回夜間中学増設運動全国交流集会報告 (その②)
一日目、夜の交流会、二日目と自主夜間中学、公立夜間中学、行政関係者、研究者、学習者の立場を超え、参加者の忌憚のない意見が交わせるようになってきた。その中で、次の意見表明があった。話されている意見を聞いていて「恥ずかしい思いに駆られている。公立夜間中学の現状にあぐらをかいている自分に気づいた。集会の議論に触発され、自分にできることをしていきたい。集会で話されたことを、学校現場に持ち帰って伝えたい」との意見であった。

公立夜間中学開設の運動をしながら、同時に自主夜間中学で学びを実践して松戸自主夜間中学(36年)、江東自主夜間中学(37年)、川口自主夜間中学(33年)を始め、長い取り組みの歴史がある。そのとりくみは学習場所の確保、教材の準備、学習者の抱えている学習を疎外する問題を解決するため、奔走している。これらは全くの無報酬である。実態を知れば知るほど、公立夜間中学教員とは好対照の位置にある。37回続いた夜間中学増設運動全国交流集会の参加も交通費も、宿泊費もどこからも支援がない。手弁当である。
そして公立夜間中学の開校が実現してもこれまで通り、自主夜間中学は続けていくのだという。ますます、公立夜間中学との対比が歴然とし、先の発言につながったと考える。
一日目、松戸市教育委員会がおこなった開設する、夜間中学の説明に対し多くの問いかけがあった内容についても、検討を加えるため、もう一度、公立夜間中学現場を訪ねるとの動きも起こってきている。
二日目の議論で各自主夜間中学の課題と行政がおこなっている支援の内容を交流した。
・札幌遠友塾自主夜間中学:札幌市立向陵中学を会場として行政に、「目的外使用」として届けを出して使用している。学習者の実態からエレベーターの設置を要求している。
・仙台自主夜間中学:仙台市が共催の申し出があり、実施している。「仙台に夜間中学を支える会」の会費と宮城県共同募金会などの助成金で運営。夜間部の会場は仙台市教育委員会から無償提供を受けている。
・福島駅前自主夜間中学:会場「あおうぜ」は有料であったが無料になった
・柏自主夜間中学:柏自主夜間中学を支える会より支援金と柏市民公益活動促進基金より補助を受け会場費と教材費を賄っている。来年4月から1年半、学習会場が耐震工事のため、使えなくなる。
・松戸自主夜間中学:36年間、補助金、会場費の補助は要望してきていない。会場の使用料減額の申請をおこない30%減額で年30万円支払っている。会場の確保については4ヶ月前の申請と抽選でおこなっている。
・川口自主夜間中学:火曜と木曜の会場使用料は無償となった。教科書の支給、公報の掲載は実現していない。公立の夜間中学の建物で、隣り合わせで自主夜間中学ができないかを要望している。
・江東自主夜間中学:会場の「塩浜福祉プラザ」使用料は半額減免。
・岡山自主夜間中学:会場の「国際交流センター」使用料の支援はない。公立の学校の空き教室を要望している。岡山県と政令市の調整ができていない。
・千代中学校・自主夜間学級「よみかき教室」:会場費は無償、年間30万円の補助。「よみかきの」担当は生涯学習課、「公立夜間中学をつくる会」の担当は教育政策課と担当課が異なること。
・京都府に夜間中学をつくる会:京田辺市で23年間日本語教室を運営、帰国者支援をおこなってきている。年数十万円の支援を受け会場費、印刷費を捻出している。
・識字教室「ひまわり」:市の助成として会場の公民館を優先的に使用できること。
以上、ボランティアで運営されている、自主夜間中学への行政支援の貧弱な実態が明らかになった。「教育機会確保法」では第3条5項「国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること」と(教材の提供その他の学習の支援)について明記した第十九条「国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者のうち中学校を卒業した者と同等以上の学力を修得することを希望する者に対して、教材の提供(通信の方法によるものを含む。)その他の学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする」とある。
文部科学省は来年度の予算要求で、夜間中学生に就学援助の国負担をおこない、都道府県の枠を超えて通学できる夜間中学制度を確立するために、条件改善に向けた予算措置を実現することが喫緊の課題ではないか。法をつくり、地方行政に夜間中学の設置を義務づけ、国はお金は出さないという声にしっかりと向き合わないといけない。
公立夜間中学の現場は自主夜間中学のとりくみに学ぶことが求められている。