夜間中学その日その日 （578）
- 白井 善吾
- 2018年9月6日
- 読了時間: 4分
2019年度 文部科学省概算要求をみる
例年、夜間中学増設運動全国交流集会のころ公表される文科省予算の概算要求額が文科省のホームページで見ることができる。来年度は西暦で記載され、「2019年度 概算要求主要事項」 文部科学省初等中等教育局 44頁にある。
夜間中学における就学機会の提供推進《2019年度要求・要望額 66百万円 (前年度予算額 36百万円)》
背景説明
○ 全国には義務教育未修了が少なくとも約12.8万人いるほか、近年 不登校児童生徒が増加している。
○ 平成28年12月に、全ての地方公共団体に夜間中学における就学 機会の提供等の措置を講ずることを義務付ける「教育機会確保法」が 成立した。
○ 夜間中学は、義務教育を受ける機会を実質的に保障する場として 重要な役割を果たしているが、現在は全国8都府県25市区に31校 の設置に止まっている。
目的・目標
教育機会確保法等に基づき、義務教育の機会を実質的 に保障するため、
・ 全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学を設置
・ 夜間中学の教育活動の充実や受け入れる生徒の拡大
第３期教育振興基本計画（H30.6.15閣議決定）
＜設置促進＞
● 都道府県・市町村の役割分担に係る調査研究 約4百万円（1か所あたり約50万円） 教育機会確保法第15条に基づく協議会の設置・活用を促進するため、都 道府県において就学機会提供に係る役割分担の在り方を検証。
● 夜間中学新設準備に係る調査研究 約15百万円（1か所あたり約250万円） 夜間中学新設準備に伴うニーズの把握や設置に向けた準備の在り方を 都道府県又は市町村において検証。【拡充】
＜広報活動＞
◆ 教育機会確保法の趣旨や基本指針の内容、夜間中学の活動等を周知 するための説明会の開催や、夜間中学を周知するポスターを作成・配布 等し、国民の理解を増進。
＜教育活動の充実＞
● 夜間中学における教育活動充実に係る調査研究 約24百万円（1か所あたり約88万円） 夜間中学に通う生徒の実態等を把握し、円滑に教育活動を実施するために 必要な経済的支援の在り方を検証。【新規】
＜受け入れる生徒の拡大＞
● 夜間中学における教育機会提供拡充に係る調査研究 約16百万円（1か所あたり約60万円） 義務教育未修了者に加えて、外国籍の者、入学希望既卒者など多様な生徒 の受入れ拡大を図るために必要な環境整備の在り方を検証。【拡充】
◆ 必要な日本語指導を充実するため夜間中学に携わる教職員に向けた研修を実施
（◆は文部科学省が直接執行する予算を表す）
成果、事業を実施して、 期待される効果
義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、 その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保 されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな 人生を送ることができる。（教育機会確保法第３条）
以上。
2018年度の概算要求は7900万円。財務省の査定を受け、2018年度の予算額は3600万円と4300万円減額となっている。
その内容をみると、新規で申請した、夜間中学への就学援助制度として3900万円を財務省が認めなかったことが減額の90％を占めている。
2018年度の概算要求では「『多様な生徒に対応した教育活動を支援』約3900（1ヶ所当たり約160万円）。多様な生徒を受け入れるために必要な環境整備に係る経費を夜間中学を設置する市区に補助（補助率1/2）新規」。このように説明していた。
2016年度、そして2018年度の概算要求を試みたが、突破できなかった。では2019年度は？ということになるが、 ＜教育活動の充実＞
「夜間中学における教育活動充実に係る調査研究 約24百万円（1か所あたり約88万円） 夜間中学に通う生徒の実態等を把握し、円滑に教育活動を実施するために 必要な経済的支援の在り方を検証。【新規】」を夜間中学生への「就学援助」の表記と見たのだがどうであろう。「学齢を超えた人たちの就学援助制度はない」とする財務省を真正面から突破できないと考え、このように表記したのではないだろうか？
いずれにしても、夜間中学生の実態からすれば、夜間中学生の就学援助制度の確立は急がれる。これこそ、文科省の仕事ではないだろうか。
