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夜間中学その日その日 (585)

  • 白井 善吾
  • 2018年11月8日
  • 読了時間: 4分

 天王寺夜間中学の入学生

 「出願数、想定の3割 県内初の公立夜間中学、来春川口に開校 外国人希望者伸びず」( 朝日新聞 2018.10.23)報道があった。

「10月19日時点で34人と市教育委員会の見込みの3割弱にとどまっていることがわかった。外国人の希望者が想定より少なく、市教委は言葉の問題もあって情報が広く伝わっていない可能性もあるとみている」。「市教委が想定していた来春の入学者は約120人。昨秋、県内12市で実施した調査で387人が入学に前向きだったため、3年後には全国初という専用校舎を新設し、将来的には240を受け入れる構えだ」と報道している。

 50年前の天王寺夜間中学の場合を書いてみる。68年10月11日髙野さんは大阪に入った。天王寺開校が69年6月5日、この間の夜間中学新聞報道は50本ある。このうち関西での新聞報道は27本。一番早い新聞記事は、「夜間中学奪わないで、ヒゲの髙野君 自主映画作り街頭での訴え」(毎日新聞 68.10.24)大阪入り後わずか14日後である。

 テレビ放送は、ニュース番組以外に「はーい土曜日です」(関西テレビ)、「浮浪児マサの復讐」(TBS69.01.21)、「16年目の入学」(関西テレビ 69.04.13)、婦人学級(NHK)がある

 吉沢府教育長(当時)が「夜間中学設けたい」と府議会で答弁したのは(69.02.06)。髙野さんは連日、大阪市教委、大阪府教委に攻勢をかけている。並行して。大阪教職員組合が府教委に開設を迫る闘いを展開していた。

 入学式に駆けつけたのは89人の入学生。その日に洗面器一つを持って、名古屋から駆けつけた女性も、入学式に間に合った。

 出身地別に見ると、大阪市40,大阪府内・九州 各9、四国・中国地方各6,近畿・中部・韓国各5,関東3,東北1である。大阪に集団就職で来阪した人たちだろうか。20代の九州出身者の入学もある。後に、夜間中学生が語っていたが60年代、表の集団就職と、陰の集団就職があるという。卒業した中学校が間に入り、職業安定所と学校が斡旋をした就職が表に対し、不登校になって、知人を介して就職先を決めたのが陰だと説明してくれたことがある。

 年齢別では10代13人(内15歳、3名)、20代29、30代28、40代11、50代7、60代1、の分布だ。

 入学以前の就学実態は 小学校中退29、小学校卒業31,中学校中退30となっている。

 天王寺夜間中学は入学式以降も入学者を受け入れている。1969年6月28日時点の統計がある。125名。入学式以降、36人が入学したことになる。その内訳は

10代 15人、20代 36人、30代45人、40代16人、50代10人、60代3人の分布である。

 大阪のNHK BKスタジオから電波が飛んだ「こんにちは奥さん『私は夜間中学生』」の放送に出演した夜間中学生の一人、高さんが故郷のオモニに語った「日本語が話せないから、国際電話がかけられない、夜間中学で勉強して必ず電話かける。いま夜間中学で学んでいる」と叫んだ。高さんの語りは2学期にたくさんの入学希望者誕生となって現れた。「小学校を卒業していなくても、日本国籍の人たちだけでなく、外国籍の私たちも入学できるんだ!!」と広がっていった。結果、2学期が始まったとき、多数の在日朝鮮人の入学があったという。

 天王寺夜間中学に入学した気持ちを綴った『生まれてはじめて』冊子がある。一人の夜間中学生の文章を紹介する。

「東京からこじきみたいな男が大阪にやってきた。もくてきはなにだろう。このひろい大阪に、また商業の町にだれ一人夜間中学校をつくる人はいなかったのでしょうか。私たち大阪市民ははずかしい。私たちの20年のゆめがかなえられてこんなうれしいことは生まれて初めてです。中高大学までやりたいです。これもみな髙野氏のおかげです」34歳。

 はじめに引用した新聞記事の「市教委は言葉の問題もあって情報が広く伝わっていない可能性」と3割に届かない入学希望者のことをこのように分析しているが、的を得てない。たとえ、開設のことを知り得たとしても、入学しようと行動に結びつくのはほんの一握り。テレビで、ラジオで新聞で夜間中学が開設されることを知って、34歳の人のように、すぐ応募できる人は少ないのだ。すぐにでも学びたい、しかし通える条件にない。夢を叶えるため、家族に、子どもに、勤め先にと通学できる条件をつくり出すため、時間がかかるのだ。入学しようと決意して校門に立っても、次の一歩踏みだすことができないのが入学希望者の心理なのだ。時間がかかるのだ。行政担当者は、このことを心してほしい。

 新聞報道を目にして、「夜間中学の入学式は365日、毎日だ」と。「校門をくぐったときが入学式」。「教室に明かりが灯り、それを目当てに入学希望者は集まってくる」のだと語った夜間中学生の顔を思い浮かべた。

 
 
 

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