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夜間中学その日その日 (586)

  • アリ通信編集委員会
  • 2018年11月14日
  • 読了時間: 5分

「韓国の髙野雅夫です」

 「『文解(ムネ)』は日本語では『識字』。『文字を解するだけでなく、文化を理解し、文化的に疎外されてきた状態から自らを解放する』という意味を込めた文解だそうです。私は文字を識るという意味の『識字』より、もっとぴたっとくる意味がこの『文解』にはあるように思います」「韓国からお越しいただいて、今日お話しいただく萬稀先生は、『韓国の髙野雅夫』です。といえば、皆さんよく分かっていただけると想います」。このように司会者は萬稀さんを夜間中学生に紹介した。

 2018年11月11日、東大阪市立布施夜間中学で開催された近畿夜間中学校生徒会連合会の学習会で、このように紹介された萬稀(前全国文解成人基礎教育協議会会長)さんは拍手に迎えられて、マイクを持った。

 韓国ソウル大学に語学留学中の髙野雅夫先生とソウルで出会いをして、2002年夜間中学と交流が始まりました。2008年3月29日、日本の夜間中学の先生や夜間中学生の皆さんと次のような約束をしました。

 『・・・私たち韓日文解・夜間中学 学習者交流参加者は、文解・識字問題は、文解・識字活動を必要としている私たちだけの問題ではなく、むしろ、その周りにいる人たちのあり方、社会全体のあり方が問われているということをあらためて確認した。韓日両国政府が国連の呼びかけに応えるとともに、両国内に住む、学びを求める人たちへの文解・識字活動をおこない、数多くのアジアの国々の文解・識字学習支援のため、積極的に以下のとりくみを行うよう強く求める。1.文解・識字・基礎教育支援法の制定 2.「国連識字の10年の行動計画」の策定 3.文解・識字活動を行っている組織への支援』(2008.3.29 交流会宣言文)。

 そこで、2012年、日本、韓国以外の国にでかけ、とりくみをはじめた。この日の学習会ではカンボジアでの識字活動の様子を持参した映像を使って報告した。いくつか紹介する。

 非識字率 は70%、トイレの使用方法の説明で〈YES〉〈NO〉が読めない。そこで絵に○と×をつけて表示しているとカンボジアの識字状態を話しした。

 次に萬稀さんはカンボジアに行ったばかりの、経験談を次のように紹介した。

 でかけるときは、クメール語で自分の住所を書いた紙をいつも持っている。あるとき、タクシーオートバイに乗って、運転手にその紙を見せ、行き先を頼んだ。ところが、その運転手は文字が読めなかった。3時間かかっても家には送り届けてもらえなかった。運転手は、あっちへ行ったり、ぐるぐる回って、最後は怒って、途中でおろし、金だけ受け取っていってしまった。雨の中置き去りにされた萬稀さんは、歩いて帰ることになった。途中、犬が通り過ぎていった。どこに行くのかと思ったら、犬は自分の家にすっと入っていった。犬でも家に帰ることができるのに、自分は何時間も街をさまよっていた。「文字が読めない、書けない、言葉が話せない」ということはこういうことなんだ。韓国の識字教室に通ってきていた、学習者の気持ちが初めてわかった。

 このように萬稀さんは非文解者として、自身もカンボジアのクメール語を学びながら、学んだことを教えている。首都プノンペンをはじめ、カンボジア国内4カ所で行っている識字の活動を報告した。

 プノンペンでは学校や寺院の空き地が学習場所だ。路上生活者との学習風景が映像で紹介された。学習者はリアカーでゴミの収集が主な仕事だ。ペットボトルや、空き缶のラベルに書かれている文字が教科書。リアカーに学んだ文字を貼り付け、それを読みながら、ゴミの分別をしている。「リアカーが彼(女)らの黒板だ」。

プノンペンから2時間ほどいった所の学校は「100年後のカンボジアの夢」として識字の指導者をつくる目的を持って、カンボジアと韓国の梨花女子大学校の共同プロジェクトとして運営されている。萬さんもここで、韓国語、英語を教えながら、クメール語を学んでいる。ここで働いている職員も非識字者が多い。給食担当者も将来、自分の店を持ちたいという夢を持って、クメール語を学んでいる。昼の学校だけでなく、青少年のための夜学として、夜11時まで活動している。

 プノンペンから5時間かかる所は、乾季でないとその島には渡れないところ。その島には学校はない。普段は馬小屋として使っているところを急遽教室にして、学習をはじめた。カンボジアには美術や音楽、体育といった教科はない。遊びを取り入れ、体を動かし、学んでいる。

 健康、医療の問題も識字の重要なとりくみだ。初期の段階で、予防をすれば、病気が進行せず、結果的に子どもが学校を止め、生活のため、働かないといけなくなる子どもを生み出さない取り組みにつながっている意義を説明した。

しかしいつまでも、カンボジアに居るわけにはいかない。自立をめざし、自力で運営していくことを目標として指導者教育が重要だ。学んだ人が次の来る人に教えていく、そして指導者になっていく取り組みを意識して行うことが重要だ。ここでも韓国安養市民大学の実践が活かされている。

 2008年の共同宣言を着実に実践されている。一歩も二歩も先を行く実践にあらためて敬意を表したい。

 講演がおわり、夜間中学生から質問の手があがった。

カンボジアには義務教育はあるのか?

 -あるのはある。学校にいきたくてもいけない生活、貧困、親の手伝いでいけない。

どうして貧困なのか?

 -(通訳からお願いする)このことを各学校で勉強してほしい。

次の人たちに届くまで、どれくらい時間がかかるのか?

 -次に、指導者になる人たちに教えている。時間がかかる。中学、高校生が指導を受け、卒業したあと、次の人たちを指導する。ケンカや、殴り合いがあることがある。思うようにはいかない。共に体を動かし、みんなから学ぶことが重要だ。

萬稀さんの文解運動に賭ける情熱の源は何か?突き動かしているものは何か?

 - 私は19歳の時、文字の読み書きに困っている人がいることを初めて知った。そして自分は何ができるかを考えた。いま、日本の夜間中学の皆さんと約束したことを実行している。途中でいやになることも何度もあった。その都度、仲間から励まされ、がんばろうと思い直してやってきた。

 今回の来日は、萬稀さんの他におつれあいの、高相啠(コサンチョル)氏そして、娘さん、梨花女子大学校大学院生の高マウミさんも現在、カンボジアで、プノンペン大学との共同プロジェクトの韓国側責任者として活動中であるが、母親の講演に参加するため、カンボジアから来日されていた。

 この日、学習会に参加した約120名の参加者は、夜間中学で学ぶことの意味を再確認しながら、萬稀さんの話に感銘を受けた。

 
 
 
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