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夜間中学その日その日 (589)

  • 白井 善吾
  • 2018年12月5日
  • 読了時間: 4分

 今ある夜間中学の役割

 経済最優先の論理が先行している。少子高齢化が進み、政府は人手不足を背景に「外国人」の期限付き受け入れを打ち出し、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法を改定する法案を今臨時国会で成立させるという。

 雇用した企業がやらなくてもよい、日本語指導は夜間中学でやらせようと、国は2016年12月「教育機会確保法」を成立させている。夜間中学の数を確保すればよい。この確保法で、地方自治体に「1県最低1校」の夜間中学開設の義務を課した。あとは地方自治体が頑張ればよい。そんな声が聞こえてきそうな政府の対応だ。

 国立社会保障・人口問題研究所は「日本の将来推計人口」として

2010年 人口12806万人 うち生産年齢人口(16~64歳)8170万人

2060年 人口 8674万人 うち生産年齢人口     4415万人

2110年 人口 4286万人 うち生産年齢人口     2126万人

としている。

 これをもとに、経団連は2004年4月「外国人受け入れ問題に関する提言」を発表した。「戦後の日本は、労働力の同質性、均質性を力に経済大国となったが、少子化・高齢化の進展に直面し、専ら労働力の〝マス〟の力に頼って経済を発展させることはもはや困難になっている」として「外国人受け入れ関連の施策を一元化するために『外国人庁』(仮称)、あるいは『多文化共生庁』(仮称)の創設に向けた検討」を求めることを提言している。これを受け、政府は外国人労働者を「研修・技能実習制度」に組み込み、外国人の「単純労働者」を低賃金で供給する道を開いた。つまり「国策」として少子高齢化による労働力人口の減少を補うため、新渡日外国人を充てる方針を打ち出した。

 それをさらに促進するため、今臨時国会の外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法を改定する法案である。

 「研修制度」と「労働力」の建前と本音が乖離してきている現状は夜間中学で学ぶ学習者の日常を見ていても明らかである。夜間中学で多くの中国残留邦人の帰国者が学んでいた時期、経済動向の影響を一番最初に受けるのが、帰国者の子どもたちであった。中国で15歳は中学2年生、親と帰国して、日本の中学校に編入を求めたら、学齢を越えているとして、昼の受け入れを拒否され、夜間中学に入学してきたケースが多かった。夜間中学に入学しても、家の経済状態を考えると、昼の時間帯は働かざるを得なくなる。言葉も不自由なまま、就労していった。何か月かして、夜間中学に現れる。  「勉強できますか?また来てもいいですか?」と話し始める。話を聞くと、景気が悪くなって、勤めていた会社で働けなくなったとのこと。しばらく夜間中学に通っていたが、次の仕事が見つかったのでと、申し訳なさそうに、勤め始めた。こんなケースがほんと多かった。

 現在、彼ら彼女らには子どもが生まれ、中学生になったという。帰国者の2世世代も、60歳を超え、帰国者1世は孫のことがとても心配だという。受け入れに当たって、十分な環境を整えず、個人の責任に転嫁し、経済優先を第一とする。この先例を教育関係者や夜間中学は知っている。

 教育機会確保法を公布し、夜間中学という制度だけをうまく活用させよう、活用しようという考えが優先し、それが夜間中学の未来だと強引に持っていこうとするベクトルが働いていると思ってしまう。

 国や政府か夜間中学冷遇視をし続けてきた過去70年の年月、夜間中学現場で夜間中学生と向き合い、見えてきた、この国の社会の持っている矛盾と不条理を糾す視点は夜間中学の生命線である。そして、今後増加するであろう新渡日の夜間中学生に対し、夜間中学での学びを一言でいえば、「外国人労働者としての自覚をもって社会参加するちからをつける」ものでなければならない。

 国が70年無視し続け、やっと認めた、形式卒業者の入学。その形式卒業者が学ぶ夜間中学で、一人ひとりの不登校の原因の究明とその問題点を明確に教育全体の課題として発信していく。形式卒業者に学ぶ夜間中学として機能しながら、新渡日の夜間中学生の課題に向き合い、当たり前の学校文化を創造していく、そして教育全体に発信していく、そんな役割が明日の夜間中学には求められている。 

 それだからこそ、先発の夜間中学は、これまでの夜間中学の歩みと課題を明らかにすることが問われていると考える。

 
 
 
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