夜間中学その日その日 (593)
- 白井 善吾
- 2019年1月6日
- 読了時間: 3分
高知県の「夜間中学体験学校」の試み
2019年4月、夜間中学開校に向け準備を進めているのが、埼玉県川口市立芝西中学校陽春分校と千葉県松戸市第一中学校みらい分校の2校である。ここにはそれぞれ、川口自主夜間中学、そして松戸自主夜間中学の長い実践があるところだ。
夜間中学がどのような存在であるか、役割を果たすところかの認識が教育行政担当者にも十分でないところにさして、「教育機会確保法」ができた。地方自治体には「一県に最低一校」の夜間中学を開設する義務がうたわれている。国は十分な支援がくめていない状況の中で、通達だけをだしている感は否めない。法の施行により、夜間中学で学びたいという人たちがいかほど存在するのか、アンケート調査を行い、開設にむけた方針を明確にしているところと、希望者はいないとして、開設する必要性はないとする結論を出している自治体もある。
高知県のとりくみを見てみよう。17,000枚のリーフレット付のアンケートを配り、県民の意向を調査した(2017.11.20~2018.01.20)。すべての市町村の住民から1,235通の回答が寄せられ、「夜間中学の設置は必要」との回答が947通(76.7%)、「夜間中学に通ってみたい」との回答が344通あった。
これを受け、公立中学校夜間学級設置検討委員会は「県教委がイニシャティブをとり、県立の設置も見据えて、市町村と県が相互に当事者としての主体性を持ち十分に協議をする」と報告書(2018.03.26)にまとめている。
この報告に基づき、高知県教委は、義務教育を受けられなかった人などが学ぶ公立中学校夜間学級(夜間中学)を2021年度に開校させる方針を決め、2018年11月29日夜、日高村で初めての「体験学校」を開いた。20~70歳代の男女6人が参加、音楽と社会の授業を受けた。今後、体験学校を県内17か所で実施し、具体的な計画づくりの参考とするとしている。「きょうを心待ちにしていました。少し緊張しましたが、来てよかったです。夜間中学が開校したら入学したいです」(11/29)との感想が寄せられている。

12月4日の第2回夜間中学には10人の参加があり、学級活動では「毎日の出席は難しいかもしれません」「今日は楽しく新しいことも学べました。学校ができたら参加したいです」との感想だ。
アンケート調査に基づき、344人の願いに応える夜間中学を創造するため、夜間中学の出前講座というべき、画期的な試みではないだろうか。アンケート調査だけして、音沙汰がないのとは異なり、きっちりと夜間中学につなぎ止め、開設にむけた準備として、学習者のみならず、夜間中学現場を担う教員を見つけ出す方法として、そのとりくみに期待したい。
高知県は東西150km以上と国がいう、「一県に最低一校」ではとても通学できない入学希望者も多い。多くの人たちに届けられる夜間中学の開設にむけ、県内17カ所で開催される「体験学校」の試みは成果が期待される。