夜間中学その日その日 (599)
- 『生きる 闘う 学ぶ』編集委員会
- 2019年2月27日
- 読了時間: 3分
『生きる 闘う 学ぶ―関西夜間中学運動50年』編集委員会
ある読者から、もう、新著の紹介がネットで読むことができますとの連絡があった。「版元ドットコム」というブログだそうだ。早速、アクセスを試みた。次のような内容である。紹介する。
紹介
夜間中学はこの半世紀、学齢時に義務教育を奪われた人たちの「学習権保障の叫び」に応える「学び」の場として営まれてきた。その「学び」は、人間を序列化する「学校型教育制度」に猛省を求めるものだった。一貫して夜間中学を抑制しようとしてきた国の方針は、新たな法律により「最低一県一校の夜間中学を」と変わった。関西夜間中学運動50年のあゆみをふりかえり、新たな時代を迎えた夜間中学のあり方を問う。

版元から一言
いま「教育機会確保法」を公布し、「最低一県一校の夜間中学」と掛け声をかけるこの国は、1966年に「夜間中学廃止勧告」を出し、夜間中学を潰してきた歴史がある。この勧告を〝夜間中学への死刑宣告だ〟と受け止めた夜間中学卒業生・髙野雅夫は「何歳になろうが、義務教育を受ける権利は義務教育未修了者にもある。憲法に定められた教育を受ける権利の保障を求める」と訴え、母校の在校生、卒業生、教師の力を結集し、証言映画『夜間中学生』を制作した。
夜間中学の開設を求め、1967年9月、フィルムを携え、全国行脚をはじめた。1968年10月、大阪で〝214日の闘い〟を実行した。広範な市民の闘いに拡がり、1969年6月5日、天王寺夜間中学を開設させた。それから2019年で50年を迎える。
学齢時、義務教育を保障されなかった人たちの提起する「学習権保障の叫び」と「夜間中学生の学び」は、学校教育の欠落部分をあぶり出し、顕在化させる衝撃力をもっていた。夜間中学生は学びを通して社会や教師に変革を求め、「学校型教育制度」を乗り越え、共に立ち上がることを求めてきた。その50年のあゆみである。
「教科書から出発し、成績で序列化し、人と人を引き裂く」文科省がいう「学校型教育様式」に対し、夜間中学生は「生活の現実から出発し、孤立してきた人と人を結び、仲間をつくる」夜間中学の学びを主張してきた。
夜間中学は、学歴社会の公教育制度が内包する点数学力による競争、管理がもっている諸矛盾から学習者を解放し、「学び」が本来もっている意義を明らかにし、その検証ができる場である。そこにおいて夜間中学生と教員が夜間中学の学びを追求してきた。
「教育機会確保法」が成立した今、「学校型教育制度」のもつ問題点を問わない「官制の夜間中学」が動き出している。このことは、夜間中学の最大の危機であると考えている。いまこそ、学びを必要とする当事者の名乗り出と開設要求の市民の運動が必要だと50年のあゆみは主張している。
50年を前に、夜間中学の実践を行ってきた関西の夜間中学から、夜間中学生・卒業生19人、教員・元教員30人、そして5人のジャーナリストの執筆により、「このような夜間中学をつくりましょう」というメッセージを全国に届けたい。