top of page
検索

夜間中学その日その日 (606)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2019年3月31日
  • 読了時間: 4分

 ルビを打った新聞記事

 新聞の1面の右に夜間中学が大きく取り上げられることが続いている。一つは見出し「学び、取り戻した人生/関西夜間中学運動50年史 本に/苦難喜び60人手記/社会の縮図変化の先頭」写真は新著『生きる 闘う 学ぶ 関西夜間中学運動50年』と夜間中学生卒業生の2枚だ(2019.03.07 毎日新聞夕刊)。

 もう一つは産経新聞の記事だ「夜間中学 6カ所で新設構想/徳島と高知は2年後開校/ニーズ把握進む/全国で1660人学ぶ/時代とともに役割変化/増える外国籍」(2019.03.16朝刊)。

 1面右記事に掲載された夜間中学の記事を私は知らない。6カ所は前にも報告したように、札幌市、宮城県、常総市(茨城県)、相模原市(神奈川県)、徳島県、高知県だ。産経新聞は都道府県と政令市で夜間中学を担当している部署を対象にアンケート調査を実施したと書いている。また、27面の半分を使って、「夜間中学はいま」の連載が始まった。見出しは「勉強だけじゃない 生きること学んだ/小2で不登校『人生いつでもやり直せる』/期待される『学び直し』の場」だ。

 この記事には漢字にルビが打ってある。ひらがなのルビを打つ理由を次のように書いている。「夜間中学では、教師が作成するプリントなどの自主教材や板書などの漢字にはほとんどひらがなが付いています。ひらがなやカタカナから学ぶ生徒が多いためです。生徒たちの姿を通して夜間中学の『いま』を描くこの連載も、漢字にふりがなをつけて原則土曜日に掲載します」。

 夜間中学の記事でルビを打った記事は朝日新聞2015.09.03の札幌遠友塾の記事が思い浮かぶ。「やかんちゅうがくは いま/80歳 学び直す場求めていた/外国人いっしょにやれば頑張れる/公立夜間中 設置検討へ/国・道・札幌市支援機運高まる」。

 ルビを打つ試みは賛成だ。この記事を書いた記者の方と話す機会があった。「デスクからはすぐには賛成が得られなかったが、ルビを打つことの意味を話合い、実現した」と話されていた。戦前の新聞記事は漢字にルビが打ってある記事が多かった。その当時の読者の「よみかき」実態からそのようになったと思う。

 ルビのない記事ばかりのなかで、ルビを打った記事はよく目に留まる。かつて、夜間中学生募集の広報誌記事にルビを打つことを提案したことがある。大きな活字を使って目に留まるようにする方法もあるが、ルビを打った記事はよく目に留まり、効果があったように思う。

 夜間中学の授業では新聞記事を教材にすることが多かった。いま起っている社会的な出来事に教科の視点からアプローチするため、よく教材として求めた。その時、学習の展開を考え、順序制を考えで工夫を凝らすと、失敗することが多かったように思う。核心に到達できずに、その周辺をウロウロして、終わってしまうことが何度もあった。

 「阿武隈川から海へ500億ベクレル」の記事もそうであった。

① 琵琶湖は「近畿の水がめ」といわれている。大阪の水道水はほぼ100%淀川の水。私たちが飲む水は琵琶湖・淀川水系に降った雨だ。

② 次に福井県にある原子力発電所を調べた。敦賀市(3ヶ所6基)。美浜町(3基)。大飯町(4基)。高浜町(4基)。計6ヶ所17基であることを確かめた。原発銀座その通りだ。

③ 白地図にプロットした美浜原発を中心に半径10km、20km、30km、40km、50kmの同心円をコンパスを使って書いた。

④ 半径30kmの同心円が琵琶湖・淀川水系に重なった。

⑤ フクシマ原発から放出された放射性物質(キセノン・セシウム・ストロンチウム・バリウムなど同位元素31種類)を周期律表で確かめよう。

⑥ 分水嶺を越え、琵琶湖に流れ込む山々にこれら放射性物質が降下するとそれらはどうなるのだろう?

⑦ 琵琶湖から水道取水口まで至る流れを追ってみよう。琵琶湖→瀬田川→宇治川→淀川→庭窪浄水場→夜間中学の水道蛇口→さっき呑んだお茶。

⑧ なんと私たちにこんなに近くに原子力発電所がつながっている。

⑨ どう考えますか?

 「福井の原発がもしものときは、放射能汚染で琵琶湖が危ない。大阪と福井は琵琶湖を通じて非常に近い。怖い」「大阪まで150kmぐらいと思っていたが、なんと20kmでつながっている」「美しい日本だと思っていたけど、原発が恐怖の国かな?」「距離が近いこと今日知った。守口もいつか被害者になるでしょう。放射能は恐ろしい。でも電気使いたいです」「原発は全部止めてほしい。私たちも電気を節約に努力して。戦前、原発の電気がなくても私たち子どもの頃はそれで生活やれていた。物を大切に、少しずつ、自分ひとりで努力して電気を無駄にしないよう、皆が少しでも気をつければ」「電気料金の仕組みを見直さないとダメ!」

たくさんの感想と意見を夜間中学生は文章にした。

 この日の新聞は「阿武隈川から海へ500億ベクレル」と報じていた。

 
 
 
Featued Posts 
Recent Posts 
Find Me On
  • Facebook Long Shadow
  • Twitter Long Shadow
  • YouTube Long Shadow
  • Instagram Long Shadow
Other Favotite PR Blogs
Serach By Tags

© 2023 by Make Some Noise. Proudly created with Wix.com

  • Facebook Clean Grey
  • Instagram Clean Grey
  • Twitter Clean Grey
  • YouTube Clean Grey
bottom of page