夜間中学その日その日 (622)
- 白井 善吾
- 2019年6月27日
- 読了時間: 3分
夜間中学のよって立つ視座
夜間中学のよって立つ視座を再確認すことを考え、改めて「わらじ通信」を読み進めてきた。「教育機会確保法」が施行、夜間中学開設することが地方自治体の義務だとして、その進捗をマスコミは報道している。文科省は法を作った。引き続き開設が進むように努力は続けるが、各自治体はがんばれという姿勢だ。
夜間中学が現場の要望により自治体が開設したときから、この国は夜間中学は法律違反だとして冷遇視してきた歴史には一切触れることなく、「一県に最低一校の夜間中学を」との掛け声だ。最近特に、「国の責任」という観点が軽くなってきているように考える。前川喜平さんは「文科省の〝本気〟はいつまで続くだろうか」「このままだと(教育機会確保法は)絵に描いた餅になりかねない」〈第36回夜間中学増設運動全国交流集会(2017.08奈良)〉と語っていた。
髙野雅夫さんは天王寺夜間中学同窓会主催の記念の集いで今の流れを的確に次のように話した。

「これから増えていく夜間中学が文科省の下請けになるのか、このオール関西の意思を引き継ぐ夜間中学になるのか大きな分かれ目だ。夜間中学の主人公は夜間中学生であり、生命線を握っているのは教師だ」。
「義務教育未修了者はこの大阪にはいない」と言っていた大阪市に対し、8人の入学希望者が名乗り出て、状況は一変した。夜間中学生開設に向け動き出した。このことは大きなヒントを示している。
夜間中学で学ぶ学習者の実態は、昼の義務教育から排除され、学習権を奪われた人たちであるという事だ。そして「夜間中学生は被害者(原告)であるという自覚。被害者が沈黙を破らない限り加害者と共犯だ」という事が再認識される。
名乗り出た入学希望者は「原告」であるという考えに立ち、開設に向け、積極的に行動した。テレビカメラの前に立ち、新聞社の取材を受け、議会へ手紙を書き届けた。入学希望者の掘り起こしに髙野さんと行動を共にした。
わたしわいま夜間中学にかよっております。十六才の男です。
ちいさいときに びょうきになりました
かっこにわいっておりません
このあいだ たかのさんがテレビにうつりまして夜間中学のことが
でていましたので
おかあさんにでんわできいてもだいました そのとき たかのさんが
さそくきてくでました ので
いまわこうべの夜間中学にかよっております
たのしくべんきょうしております
だかだ 大阪市に夜間中学おつくて下さいおねがいします
小林あきら(原文のまま)
夜間中学の開設に向けて、夜間中学の学習条件、学習環境の改善に入学希望者が積極的に役割を果たすことは、できた夜間中学の性格を規定することになる。
例えば、夜の時間帯、幼い子どもに独り留守番をさせ、夜間中学に通う。通いたくても通えない。「先生、私たち昼の時間帯だったら夜間中学に来れるのですが」。この夜間中学生の声をどのように制度化していくか。そのとりくみを学習者の力でどう実現するかが一例だ。
学習者の実態に制度をあわす。制度を変えていく。夜間中学で大切にしたい視座だ。『生きる 闘う 学ぶ―関西夜間中学運動50年―』(解放出版社)では夜間中学の明日に向けて、いくつかの提案を行っている。
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