夜間中学その日その日 (632)
- 白井 善吾
- 2019年8月13日
- 読了時間: 3分
「夜間中学校を増やそう、充実しよう!シンポジウム」
夜間中学等義務教育拡充議員連盟(略 議連)・全国夜間中学校研究会(略 全夜中研)共催の集会「夜間中学校を増やそう、充実しよう!シンポジウム」が大阪で開催された(2019.08.02)。教育機会確保法施行3年を前に、見直しも含め、法の改定を国会で議論する時期に合わせ、全夜中研が議論した改訂内容を議連に要望書を手交する。同時に西日本の公立自主夜間中学の学習者、教員関係者が議連の国会議員・文部科学省に直接意見表明をする集会でもある。
当日参加した文科副大臣・国会議員(5)、地方議員(21)行政関係者(3)をはじめ、約300人の大きな集会となった。仙台、福島、東京などの遠路から出席もあった。
8名の学習者の発表があった。うち6名は高齢者、女性5名、在日朝鮮人1、台湾出身者1名。いくつか紹介する。

近畿夜間中学校生徒会連合会の役員が次のように発表した。「夜間中学校といっても地域によって生徒層が違い、課題も様々です。 話し合いで出た課題や、各校が困っていることは県や市教委、大阪では教育庁との話し合いの場で要望している。課題が改善されることは本当に少なく、実現までに長い時間がかかります。でも自分たちが学んでいる学校をよくするため、15校の夜間中学校が力を合わせて頑張っています」と夜間中学でも生徒会活動が重要であると訴えた。
形式卒業者として夜間中学に入学した人は「入学した夜間中学校はわたしに学校は、ただ勉強するところだけではなく、自分を見つめ直していくことができるところだということを、たくさん気づかせてくれました。さまざまな人との出会いがあり、自分を成長させてくれる大切なところです」。
各発表者は出席者の心に届く意見発表を行った。「うそ、見栄を張らなくても、本当の自分を出せるようになってきた」「『勉強』は中国語では〝強制〟の意味があるので、私は〝学び〟を使っています」「公立の夜間中学で文字の勉強だけでなく、社会や自然の勉強をしたい」「自主夜間中学に行きたいと決心したが、すぐに教室に入れなかった。すごく勇気がいる」「わたしは、夜間中学に入学し、学ぶことができていますが、私と同じように義務教育十分受けられないまま中学校を卒業した人戦争や差別、いじめ、貧困、虐待など、さまざまな事情で『教育を受ける権利』や『学び場』を奪われた仲間が、全国には、まだまだたくさんいます」。
12項目の要望をまとめた「義務教育を十分に受けれていない人々に対する教育保障を前進させるための要望書」を議連の馳浩会長に手交し、次の国会で「教育機会確保法」改定の議論に反映するよう求めた。
出席した浅野敦行文科省初等中等教育企画課長は ①夜間中学の設置促進 ②既設の夜間中学の教育活動の充実 ③各自治体における協議会の設置 ④広報活動の推進 にしっかり取り組んでいくと語った。
シンポジウムで33校の公立夜間中学が全国に存在するが、近畿には18校(55%)があるが、この近畿でも夜間中学の開設がまだまだ必要だ。最低1県に1校の夜間中学ではとても間に合わない。夜間中学の学習条件を整え、学習環境を充実し、多くの学習者が学べるよう、近畿で例えば「夜間中学特区」をつくり、夜間中学の充実を期すことを考えてはどうかとの発言があった。重要な指摘ではないか。
首都圏を離れて、公立夜間中学の55%がある近畿圏での集会は、これまでの集会とは異なった学習者の主張があった。立法府の出席者は決意を新たに学習者の願いにこたえる、秋の国会での議論を要望する。