夜間中学その日その日 (648)
- アリ通信編集委員会
- 2019年11月12日
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近畿夜間中学校生徒会連合会 学習会
夜間中学開設運動により、岸城夜間中学の公認と天王寺夜間中学開設が実現して、今年は50年目に当たる。近畿夜間中学校生徒会連合会は2019年11月10日、学習会「近畿の夜間中学50年」を天王寺夜間中学で開催した。
夜間中学は昼の学校のように、年齢がくれば就学通知が届き、何月何日、どこそこの学校に就学してくださいという連絡は来ない。学齢時、義務教育を保障されなかった人たちが、私たちにも義務教育を受ける権利があると主張し、学校をつくる運動を展開した。そして国や文部省の反対にもかかわらず、地方行政に設置を認めさせて出来上がった学校である。特に1967年以降は、開設運動によりできた学校である。それ以前の夜間中学とは異なる点だ。だから、運動がなくなれば、学習者がいても、行政は廃止してくる可能性がある。いまのように、国が「最低一県に一校の夜間中学を」と地方行政に義務を課す時代ではなかった。
自分が通っている夜間中学はどんな運動がとりくまれ、どんな経緯で開設されたのかを学ぶことは、夜間中学の学びの重要な柱だ。50年を前に、近畿の各夜間中学でこの学習を行い、近畿夜間中学校生徒会連合会の学習会でその内容を報告し、学習を深めようという目的で開催された。対話形式で、映像を使って、シナリオの作成など工夫し、教員も出演し発表を行った。同窓会の先輩や開設時の教員を招いて学習会を開いたり、アルバムや、開設時の生徒会のビラを資料に学習を深めた夜間中学もあった。
豊中夜間中学は次のように発表した。1974年頃、豊中に住む10人の人が淀川をこえて、守口夜間中学に通学していた。また夜間中学に入学したいと思って、何年もかかって夜間中学を訪ねてもすぐには校門をくくれず、学校の周りを何回も回って、勇気を出してやっと学校の中に入れた。学校で住所や名前をと言われたけど書けなかったことなどを知った。そして「豊中に夜間中学を」の運動をとりくみ、3500人の署名を集め、市長に開設を訴える運動がとりくまれた。

文の里夜間中学は共同作品「オモニの像」について報告した。共同作品制作を指導した金城実さんが今年5月30日、来校して像の補修作業が行われた。像の台座には「平和」と刻まれている、銘板も磨いてよみがえらせた。差別を憎み、民主主義教育を夜間中学で実践するシンボルとして建っていると報告した。
開設時のことだけでなく。夜間中学が生徒会連合会とともにとりくんだ闘いについても報告があった。
天王寺夜間中学の発表の中で、「校舎の耐震工事や建て直しを要求した」とあった。
2013年12月、「天王寺、生徒数減り閉鎖 大阪市教委が検討−−15年度末」(毎日新聞 2013年12月26日 夕刊)と報道があった。天王寺夜間中学生徒会は、連合生徒会役員代表者会で訴え、直ちにとりくみを開始した。その説明を求める生徒会のとりくみの中で、「天王寺夜間中、存続へ 『耐震工事が必要』は勘違い 市教委『言い伝えで…』」とする新聞報道があった(2014.1.28毎日新聞朝刊)。「内部の言い伝えで、耐震基準を下回る古い校舎で工事が必要と思い込んでいた」「市教委は取材に『確認不足としか言いようがないミス。ご迷惑をおかけし、反省する』と陳謝」とある。しかし、校舎の耐震工事や建て替え工事をとの生徒会の要求に大阪市は今も応えていない。
東大阪市の意岐部夜間中学と布施夜間中学は合同で発表した。当初の3年の修業年限も生徒会のとりくみによって「個々にあわせて変えられていった」。そして太平寺分教室の独立校化の闘いや2校の夜間中学を守る闘いを次のようにまとめた。「新しい夜間中学を勝ち取り、学習環境をよくし、夜間中学に対する攻撃をはね返してきた50年間の生徒会活動。これからも私たちは、夜間中学を守り仲間を守るために生徒会活動を頑張っていきます」。
奈良の夜間中学からは、大阪府の他府県在住の人たちの入学を認めないとする募集要項変更を契機にとりくんだ奈良に夜間中学を開設する運動を報告した。奈良、天理、橿原、3校の公立夜間中学に加え、吉野、西和、宇陀の自主夜間中学と合わせて奈良県夜間中学連絡協議会を結成してとりくんでいると報告した。
気になったことがある。発表の中で形式卒業者入学にふれた報告があった。形式卒業者が開校時から入学できていて、22名在籍していた(八尾)。そして「いつから入学できなくなったのか、どの先生にお尋ねしてもわかりませんでした」と報告した。17回大会、18回の全夜中研大会で出席した文部省担当者から形式卒業者の夜間中学入学を認めさせ、八尾では22名の在籍が実現した。それができなくなった経緯についてははっきりさせていただきたい。もう一つは、夜間中学ごとの深まりはあったが、今回ふれることのできなかったとりくみがある。夜間中学をつくる会、就学援助補食給食の闘い、日韓識字文解交流など近畿夜間中学校生徒会連合会で取り組んだ内容についても明らかにしていただきたい。
各夜間中学のとりくみを限られた時間での報告となったのはやむをえないが、内容が豊富で、このままにしておくのはもったいない。さらに理解を深めるために、また参加できなかった夜間中学生のために、提案をさせていただく。各夜間中学で発表をまとめた新聞の発行。そして毎月開かれる生徒会の役員代表者会で報告していく方法は検討いただけないだろうか。
2020年は菅南(天満)夜間中学、2022年は殿馬場・八尾・(名前は変わったが)長栄夜間中学と相次いで50年を迎える。夜間中学や生徒会のあゆみを、今に伝えていくとりくみを続けていただきたい。