夜間中学その日その日 (665)
- 白井善吾
- 2020年2月12日
- 読了時間: 4分
夜間中学 いま の課題 ③
自主夜間中学が公立化し、学校教育制度に位置付けられる夜間中学になったとき、自主夜間中学の良さが消し去られていく。そのことを厳しく問う、夜間中学生の文章がある。以前にこの欄で紹介したが、再び引用する。
夜間中学生となって1年
夜間中学、このありがたい学校がやっと公立校として開校できた。全国で義務教育を修了していない者が、現在140万人もいる。その中の一人が立ち上がり、また一人が立ち上がった。
過去30年の責任もとらずに、日本のおえら方は、いったい何に頭を使っているのだろう。昼間の疲れもいやせぬままに、生きていくための武器として必死になって、勉強しなければならない。私たちには、昼も夜もないいつも文字に縛られ、社会にしばられる。何も悪いこともしていないのに、人目をさけ、話し合う場をのがれたいしょうどうにかられる。私はひきょう者なのか、自分で自分を苦しめる、みじめな女でした。でも今では、勇気があり、同じような境がいに育った友達も出来、助け合い、なぐさめ合ってお互いに前進できる喜びが生まれた。
夜間中学にたずさわってくださる先生、どうか私たち,一人ひとりの生徒の生きざまを知り同じように戦ってください。そして義務教育未修了者の発掘に、全力をあげ、読み、書き、知ることを基礎に人間の歩んできた歴史を考えていただきたいです。
でもせっかく夜間中学に夢と、希望を求めて通学できるようになっても、先生によって、落ちこぼし授業を平気でやり、生徒の中には各教室を回りながら、自分にあった勉強をとひっしになっている者もいます。こんな事実もふまえて、夜間中学の先生として、サラリーマン化することは、絶対に許されない。
毎日通学できない生徒のためにも、昼間これる人には、それなりの時間帯に応じて、教えるべきで、夜の人には週1回でも、時間延長をすべきだと思う。昼の義務教育は平均6時間、夜間中学の場合は3時間、昼間の生徒と比較すると、あまりにも時間の差が大きいにもかかわらず、40分授業の3時間で3年間で義務教育を修了するということは、難問である。だから私は、夜間中学で昼間これる人、また夜に延長したい人に対しても時間の延長は、絶対に必要であると思う。
教師という者は義務教育を終えた生徒を社会に送り社会のはんえいと国家ならびに国民がよくなるために社会の変革も、やらなければならない。それが教師と生徒の共通点でもある。
この作文を一人でも多くの社会の人々が、目にふれることにより、夜間中学の生徒ならびに教師が、一つの問題にとりくむ日がくるに違いない。私は生徒の一人としてこの日がくるのを祈りたい。
「義務教育未修了者の発掘に、全力をあげ、読み、書き、知ることを基礎に人間の歩んできた歴史を考えていただきたいです」「落ちこぼし授業を平気でやり」「夜間中学の先生として、サラリーマン化すること」「昼間これる人には、それなりの時間帯に応じて、教えるべきで、夜の人には週1回でも、時間延長をすべきだ」‥ 公立化した夜間中学と自主夜間中学時代を比較し、公立夜間中学の立ち位置を問う文章だ。

先日、夜間中学生、教職員、支援する会の人たちが参加した奈良の集まりでこの文を紹介した。参加者から大切な指摘だと共感の意見があった。公立化し、学校教育制度に組み込まれた夜間中学が、学校教育制度のプラス部分は活かしながら、学校教育制度が排除する自主夜間中学の良さを取り込んでいく。このことにこだわり、腐心する、そんな公立夜間中学の実践が堂々と行える場としての立ち位置が夜間中学 いまの課題だと考える。
法に基づき、学校教育制度を運営する最先端の位置に立っているのが教職員である。しかし、夜間中学生の実態に目を向けず、法に基づく運営だけで夜間中学を視るなら、それは夜間中学ではない。このことを髙野雅夫さんは次のように指摘している。「日本国憲法を始め、全ての人間の法律から切り捨てておきながら、俺たちを裁くときだけ、人間の法律に当てはめて裁くのだ」と。
夜間中学の教職員は、夜間中学生の側に立って共にこの矛盾を糾していく、制度の変更を求めていくことではないか。
国や文科省に認めさせた事例を夜間中学は持っているではないか。
文部省担当者は「夜間中学では、中学校普通教育が行われていると考えています」といい、「中学校だから、中学校の教科書で授業をやってください」と言い続けてきた。そして50年近く時間が経過した。その文科省は2017年3月、学習指導要領(中学校)総則に「学齢超過者への配慮」を明記、「学齢超過者への指導の際、実情に応じた特別の教育課程を編成できる」とした。
夜間中学生の実態に合わせ、制度を創造していく。そのことが実践できる場が夜間中学である。この立ち位置の確立。これが夜間中学 いま の課題 だと考える。