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夜間中学その日その日 (673)

  • 白井 善吾
  • 2020年3月22日
  • 読了時間: 4分

 夜間中学との出会い

 ある夜間中学を退職なさる先生が夜間中学について語られた映像を見る機会があった。結婚で教員をやめ、奈良県に転居、そこに開設したばかりの自主夜間中学に週2回ボランティアで参加されたことが夜間中学にかかわることになるきっかけであった。教育委員会から連絡があり、公立化した夜間中学に引き続き教員として勤務することになった。教員生活のほとんどが夜間中学であったということになる。

 先生は3人の夜間中学生を事例にとりくみを話された。一人は戦前、結婚により、朝鮮半島全羅道から20歳台で来日された朝鮮人女性。迷惑をかけてはいけないという想いを強く持って入学された。夜間中学に出会い、絵クラブに入り、校庭に畑をつくる先生と一緒に、ワタ、ヒマなど故郷で育ててきた作物を育て、夜間中学で学ぶことにより一人のオモニとして解放されていく様子を話された。

 二人目は車いすで夜間中学に通う女性との17年間を話された。毎日は通学できない、何度も家庭を訪問し、多くのボランティアが支援活動をしている。その一人としてかかわりながら、夜間中学の学びについての報告。

 三人目は聾の80歳台の夜間中学生、手話と筆談が意思疎通の主な手段。そして学校からの連絡はFAXでする。在籍は上の二人と比べ短かったが、ちがいを受け入れ、世界を知っていく、学んでいく。そして教員の方が変化していく、教員が学んでいく様を率直に語られたのが印象的だ。

 それまでのやり方にはとらわれず、夜間中学生と向き合い、新たなとりくみを創造し、取り入れていく手法だ。この方法は制度にあわすよう、学習者に変更を求めるのとは正反対、学習者にあわせて制度を変えていくという夜間中学では大切な実践をされているのだ。

 2002年に始まった、韓国識字(文解)学級生と夜間中学生の相互訪問交流に参加したこと、識字学級の卒業生が、今度は識字学級の教員になる、夜間中学にはない優れた制度も報告された。しかし、公立の夜間中学では制度は打ち立てられなかったが、夜間中学の教員の教員が夜間中学生。こんな実践が積み重ねて来られたんだと理解できた。

 振り返ったとき、夜間中学の修業年限は重要だ。文字が読めない、書けない、そして日本語が十分話せない、その人たちの学びを保障することを考えた時、中学校だから3年ですと年限を限ることなく向き合っていくことが重要ではないか。学齢時全く学校に入学できなかった人は、ひらがなが読めて、書けるようになるのに最低3年かかる。それからがスタート、文字やコトバを通して意思表示をする、そして教員、他の夜間中学生と関係が築いていくのに10年以上はかかると話された。

 私の場合はどうだっただろう。振り返ってみるとやはり10年近くかかった。教員の校内研修や近畿夜間中学校連絡協議会の議論を重ねながら、さまざまな考えや、とりくみを交流し、教師集団として一歩踏み出せるのは10年近くかかる。それは学齢の子どもたちと向き合った経験は役に立つが、そのまま夜間中学に当てはめることができないからだ。途中で教員の移動もある。夜間中学生と向き合う姿勢を確認しながら新しい夜間中学の教員ととりくみをすすめていく、職員室の雰囲気が重要だと考える。

 夜間中学生が昼の子どもたちと交流していることについて参加者から質問に答えて、設置行政を超えて、夜間中学生が昼の学校を訪問したり、子どもたちが夜間中学を訪れる実践が継続してとりくまれている。

 報告はなかったが、こんなことがとりくめる夜間中学現場を応援支援する組織「夜間中学をつくり育てる会」の存在が大きいと考える。ややもすると、学校教育制度の枠で夜間中学をとらえ、学齢の子どもたちの制度をそのまま夜間中学にも適用させようとする力が働きがちな教育行政に対し、つくりそだてる会の役割は重要だ。

 夜間中学が今存在することの意義を考えた時、夜間中学が持っている昼の教育現場が忘却させられてしまっている、点数学力を超越する“学力”の追究を打出していくことではないだろうか。

 肩に力の入らない穏やかな語りを通して、重要なことをお話しいただいた。

 
 
 
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