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夜間中学その日その日 (675)

  • 白井善吾
  • 2020年3月27日
  • 読了時間: 4分

夜間中学のあゆみに見る「夜間中学の生命線」(1)

 夜間中学の教員として、目から鱗というか、得心ができ、次の行動指針となった出来事は何ですか?こんな質問をあるジャーナリストの方から受けたことがある。思いつくまま書いてみよう。

 先ず髙野雅夫さんの主張をあげる。「憲法に明記した教育を受ける権利が私たちには保障されないのか!!」 第21次日教組教育研究全国集会(甲府)に参加したときの形式中学校卒の夜間中学生の主張と重なるが、「立派な報告ばかり、先生たちは私たちのような形式卒業生をつくりだしているという自覚があるのか‼」この問いかけは1972年1月に受けた。教員になって3年目であった。身震いがして、奥歯がカチカチと勝手に動いたことを覚えている。

 ・「越境かまいませんよ 神戸の夜間中学に大阪の4人 尊い熱意拒めぬ 映画の訴え実結ぶ」(1968.12.14毎日新聞)この記事の存在を知ったのは1972年7月、夜間中学開設運動を吹田でとりくむ準備で、証言映画「夜間中学生」を借り受けるため、大阪教職員組合を訪問、伊ケ崎執行委員からNHK「こんにちは奥さん」の16ミリフィルムの存在といくつか示された資料の中にこの記事の記述があった。後に夜間中学開設に向けた〝大阪214日の闘い〟(『자립(チャリップ:自立)』)を読み込んだとき、この記事が果たした役割の大きさに驚いた。さらに、関西テレビ「16年目の入学」、TBSテレビ「浮浪児マサの復讐」特集番組も相まって、マスコミを味方に、開設運動を展開していく一連の動きに大きな影響を受けた。

 ・「鈴木健二のもつマイクをくぎ付けにした夜間中学生の力」NHK(こんにちは奥さん)天王寺夜間中学が開校して40日後、1969年7月14日。NHK朝の情報番組「こんにちは奥さん」に夜間中学生7人と髙野雅夫さんが生出演した。夜間中学生の語りの「すごさ」だ。時間通り進行するのに長けた鈴木アナをしてさせなかった。映像を見るたび、マイクを持つ鈴木アナの手が震えているところに注目する。髙野さんだけではない、教室の夜間中学生ひとり一人は、すごい力を持った人たちなのだ。髙野雅夫さんが眼の前に何人もいるのだ。

 ・「夜間中学を必要とする人が一人もいなくなるまで、夜間中学の灯を消したらあかんのんや」 (夜間中学を育てる会;倉橋健三 天王寺夜間中学卒業生)倉橋さんは天王寺夜間中学1期生だ。開校の翌年、1970年3月卒業した。卒業後何度も夜間中学を訪れ、卒業後も夜間中学のとりくみに参加して活動する組織の必要性を訴え、「夜間中学を育てる会」の立ち上げに力を注いだ。天王寺夜

間中学が開校した日、髙野雅夫さんが「これからは君たち夜間中学生の仕事だ」と語った想いをきっちり受けとめたことの表れだ。今の「夜間中学生砦・卒業者の会」に受け継がれている。

 ・「先生はどちら側につくか?どちら側の人間か?」(第18回全国夜間中学校研究大会)夜間中学の歴史に残る夜間中学生が主人公になった大会と言われる18回大会で夜間中学生は形式中学卒の夜間中学入学を文部省に認めさせた。出席した文部省中島課長補佐に2年越しの回答を迫ったとき、会場にいた夜間中学教員にもこのように尋ね、「夜間中学生の側だ」と立場を明らかにして、のちに異論が生じない完璧な迫り方をした。夜間中学のあゆみで、いつも戻りたい立脚点を表す言葉だと思う。

 ・「識字を教える人は政治的に全くの中立の立場に立つことはありえない」(パウロ・フレイレ) 国際識字年(1990年)の8月、大阪で開かれた講演会で語った言葉だ(国際識字年推進大阪連絡会『おおさかとの対話』13頁)。非識字の状態に放置されたこと自体、政治がうみだしたもの、それを明らかにすることを回避して識字活動は存在できないというべきで、夜間中学教員の立ち位置を決定づける明快な言葉ではないだろうか。

 ・『高度経済成長のささやかなお恵みを受けた夜間中学生たちが「文字とコトバ」を奪われた、「空気」を奪われた怒りを再び奪われて、「知識」を詰め込むことが〈勉強〉だと信じ込まされ、詰め込ませることが〈教育〉だと信じている教師が生まれていたのです』(『夜間中学生 タカノマサオ』P224)

 夜間中学は法律違反だ、早期廃止するようにとの行政管理庁勧告を逆手に夜間中学開設運動を展開した。そして1969年の大阪・天王寺夜間中学の開設を実現した。その想いを受け止め船出した夜間中学の現状にたいし、1993年の著書で髙野雅夫さんはこのように記述している。この提起を私は「夜間中学で実践する『まなび』のあり方を問うものと捉え、教員の集団討議、相互検証を経てそ

の実践を明らかにすることが重要だと考えている。守口夜間中学が出版した『守口夜間中学そのまなび 1~4』『不思議な力 夜間中学』『学ぶたびくやしく 学ぶたびうれしく』でその内容を明らかにしている。その継続が求められている。  (つづく)

 
 
 
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