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夜間中学その日その日 (683)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2020年4月27日
  • 読了時間: 4分

産経新聞連載「夜間中学はいま」を読んで  (その2)

  1. 夜間中学生

② 夜間中学の場が持っている雰囲気

・「うーん」と頭を悩ます大永さんに、机を並べる70代の男性が「前回休んだから忘れてるな」と教える光景は、「夜間中学ならでは」(担当の桜井克典教諭)(連載①)

・琴城分校が初めて受け入れる不登校経験者だったが、学びたいという気持ちが本物だと伝わると、他の生徒たちとの距離は一気に縮まった。仕事が忙しく遅刻して行っても「頑張って、よう来たなあ」と迎えてくれる。1時限だけでも授業を受けられれば学校に自転車を走らせるのは、そのひと言があるからだ。(連載①)

・「夜間中学では数学や英語や社会など昼の中学校と同じように教科の勉強をしますが、仲間の人生に触れることで『生きること』についても学んでいると思うんです」(連載①)

・陳さんは母校の良さを「いじめがない。差別がない」と表現した。(連載②)

・「先生たちのおかげで、思ったことをありのまま表現できるようになりました。自分が解放されました」(連載③)

・「夜間中学で学び、子どもの頃に止まった時間が動き出した。ここから私の人生が始まりました。夜間中学は私の宝物です」(連載③)

・ほかの生徒たちは先生が返答に困るほど矢継ぎ早に質問を投げかけた。「小学校に行っていた頃には見たことのない光景に圧倒されて…。新鮮でした」(連載④)

・クラスメートの姿に励まされた。「こんな高齢の人たちが頑張っているのに、私も頑張らないといけないと思いました」(連載⑦)

・自分の弱さも含めて何でも話せる。のびのびできる。人と会うことすら怖かった私が、一緒に学ぶことを楽しんでいます」(連載⑩)

・体験入学の期間に高齢の女性の生徒が積極的に話しかけてくれた。家庭の事情を話すと、「苦労したんやなあ」と受け止めてくれ、戦後の食糧難など自身の体験を語ってくれた。「自分だけが苦労したんやないとわかった」(連載⑬)

・「伊藤君、頑張りや。先に行って待ってるからな」と励ましてくれた。「その言葉と気持ちがうれしくて。今の自分がいるきっかけを作ってくれた、尊敬する先輩です」(連載⑬)

・「ここはありのままの自分でいられる場所。何でも話せる家族のようです。西野分校にきて、自分の家族と2つの家族を持つことができました。2つとも私の誇りです」(震災編下)

・ともに笑い、泣き、感動を分かち合える仲間がいる。「すぐにこの学校の虜になりました」(卒業編②)

・「続けられるか不安でしたが、すごくやわらかい雰囲気で迎え入れてくれ、安心しました」(卒業編①)

・年齢も国籍もさまざまな生徒が通う夜間中学だからこそ、出会えた人たちがいる。自分を守るために周囲にバリアーを張って生きてきた眠子さんを少しずつ解きほぐしていったのは、そうした仲間であり、とりわけ孫のように見守ってくれた高齢の級友らだった(卒業編①)

・「眠子さんはやさしいねえ」などと、さまざまな場面で肯定してくれた。それまでの人生は「お前はダメな奴だ」と全否定され続け、自己評価も著しく低かっただけに、「すごく新鮮でうれしかった」(卒業編①)

「肯定してくれた」「すごくやわらかい雰囲気」「少しずつ解きほぐしていった」「ここはありのままの自分でいられる場所」・・これらは夜間中学だけが持っている雰囲気ではないと思う。本来、教室の子どもたちが持っている自然の雰囲気だと思う。それがなくなってしまう、点数学力最優先の受験体制に押しつぶされ、消去されてしまった雰囲気が夜間中学には存在する。70年代の頃だったか、夜間中学の教員になりたいと、想いを語ったとき、同僚の教員から、「遠くまで探しに行かなくても、青い鳥はあなたの足元にいる」と返事が返ってきた。その通りだと思う。しかし、夜間中学に行き、もう一度昼の学校に戻ったとき、場の雰囲気の違いは私に多くのことを提示した。

学校公開で夜間中学に初めて訪れた人たちを前に、夜間中学生は自身が抱えている非常に重いものを隠さず語ることがある。この夜間中学生を前にして、訪れた人も自身の一番しんどいことを隠して夜間中学生に向き合うことができなくなる。

 こんなことがあった。夜間中学を訪れた他市の昼の中学生、夜間中学生との対話の中で、自分が在日朝鮮人であることをまず明らかにして話し始めた。あとで、引率の先生が、あの時が彼の初めての「朝鮮人宣言」であったと話された。クラスの誰も知らない出自をあの時語ったんですと。

 夜間中学という場が持っている雰囲気の分析は大変重要だと考える。本来、どんな学びの場も持っているはずの雰囲気がそうではない現実について、なぜなのか、追究していただきたい。    (つづく)

 
 
 
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