夜間中学その日その日 (685)
- 白井善吾
- 2020年5月14日
- 読了時間: 3分
産経新聞連載「夜間中学はいま」を読んで (その4)
1.夜間中学生 ④ 主張
・「私のように夜間中学を必要としている人は大勢いると思う。一人でも多くの人に夜間中学に出会ってほしい」連載①)
・自分にできるのは、メディアを通じて、あまり知られていない自主夜間中学の存在をアピールすることだと考え、取材には積極的に応じている。「夜間中学を必要とする人がいる」と訴え続けたい。(連載⑧)
・いじめを引き金に、長期間にわたった引きこもり。前向きになれた今、「いじめや引きこもりで悩んでいる人たちに、いくらでも取り返せる、やり直せると言いたいです」(連載⑩)
・「私のように義務教育を十分に受けられなかった人はいっぱいいる。夜間中学の存在をぜひ知ってもらいたい。ここは決して勉強だけをする場所ではありません。私は、夜間中学に来ることができて、本当によかった」(連載⑩)
・「夜間中学に行って、いろんな人に会えて幸せだった」と語る西畑さんは「今が青春」と言い切った。(連載⑫)
・「今までの人生で、今がいちばん楽しいです。それは学校に行き、勉強ができるようになったからです」(連載⑬)
・かつての自分のように学びの場を切望する仲間たちを思い、力強く訴えた。「全国で公立の夜間中学はわずか33校。どこに住んでいても、学びたい人たちが夜間中学に入学できるようにしてほしい」(連載⑬)
・「独自の空間」を大切に思うからだ。「差別がない。受け止めてくれる。自分らしくいられる。安心して学べる。この空間を守りたい」と語る。(連載⑬)
・「全国には、私のように子どもの頃に学校に行けなかった人や、いろんな事情で学校に行きたくても行けなかった人がたくさんいると思います。学びたいと思っている人が一人でも多く、学べる環境が一日でも早くできることを願っています」(連載⑲)
・「いろいろとつらいこともありましたが、今はとても幸せです。夜間中学のおかげで生き方が変わりました。私のように子どもの頃、学校に行けなかった人たちにぜひ夜間中学をたずねてほしいです」(震災編下)
・「戦争は二度としてはいけない」。戦争や貧困などで学びを奪われた人たちのために設けられた夜間中学で学び、その思いを一層強くした。(卒業編③)
夜間中学があることを知り、夜間中学に実際入学が実現するにはいろんな逡巡に夜間中学生は悩やむ。例えば「夜間中学に通っていることを他人が知ったら何と思うだろう?」。この気持ちを克服しても、一人で夜間中学の門をくぐるのは高いハードルになる。入学を決意して学校の前に来たとき、校門が閉まっていなくても、目に見えない校門が閉まっているんです。校門の前で立ち止まり、学校の周りを歩きながら、「どうするのだ?」、「諦めるのか?」「自問自答し」と、その日は校門を押し開けることはできず家に戻ってきました。
後になって、このように語る夜間中学生がなんと多いことか。「あんたもそうやったん、わたしもや」と。おそらくそのまま、夜間中学を訪れるきっかけをなくした人も多いはずだ。なんとか夜間中学に入学、そして夜間中学生の口をついて出た、これら「主張」はこれから夜間中学入学を希望する人たちに届けたい。
この連載で書き留められた夜間中学生の声を「光」とするなら、「陰」の部分が存在することも忘れてはいけない。さまざまな理由で中退せざるを得なくなった人たちの存在だ。病気(本人だけでなく家族の)、就労、勤務先の変更、教員や夜間中学生間のトラブルなど様々。家庭訪問や職場訪問をして解決に当たるが、解決できないケースも多くあった。「夜間中学生はみなさん高齢ですが、お元気ですね」との声を耳にするが、健康な人しか通えないのも事実である。
「差別がない。受け止めてくれる。自分らしくいられる。安心して学べる。この空間を守りたい」と語る「この空間」は夜間中学生をはじめ、関係者の休みない努力の結果からもたらされるものである。(つづく)

「夜間中学が教科書に」
日本文教出版「2020年小学6年社会科教科書」17頁