夜間中学その日その日 (689)
- 夜間中学資料情報室 白井善吾
- 2020年6月5日
- 読了時間: 3分
常総市立水海道中学校夜間学級の開級、入学式
常総市立水海道中学校夜間学級(水海道夜間中学)の開級、入学式(2020年6月2日)がおこなわれた。34校目の夜間中学の誕生だ(当初、4月15日の予定であった)。「入学予定者は当初、25人だった。コロナ感染を懸念する生徒など5人が入学を辞退し、20人となった」(2020.05.24茨城新聞)と報道があった。
入学を辞退?恐らくこの情勢下、夜間中学で学ぶことが出来なくなったのでという意思表示が学校にあり、翻意することが出来なかったのではないかと想像できるのだが、その内容をお教えできないだろうか?そこには全国の夜間中学や自主夜間中学に共通する課題があるように考えるからだ。
水海道夜間中学の入学式のあった翌日、次の新聞報道があった。
記事の見出しは「虐待・薬物・・・『学びたい』夜間中学へ/ 自習中止 入学式も延期に /『コロナのせい』希望見失った /最後の電話『どうでもいい』」(2020.06.03朝日新聞(夕刊))。今年に入って夜間中学の学習支援員らの指導を受けながら、学習にとりくみ、入学に備えていたが、『コロナのせい』で自習も中止、入学式も延期となり、5月4日未明、東京の繁華街の路上に倒れているのが見つかったとの報道だ。
リーマンショックの時も、職場をうばわれた夜間中学生は多くあった。夜間中学生が勤めている勤務先をまわって、就職をお願いする事をとりくんだことが想い出される。社会の変化を真っ先に受けるのが夜間中学生。このことは今も少しも変わっていない。
水海道夜間中学のホームページを見ると「令和2年度入学生の募集は定員に達したため,締め切りとなりました。今後ご連絡いただいた方には令和3年度入学に向けたご案内をさせていただきます」(常総市立水海道中学夜間学級HP)とあり、既に2021年度の入学も締め切られているとある。
HPを詳しく見ると、入学の流れは次の5段階を踏むと説明がある。 ①アンケートに回答 ②入学希望者説明会に参加 ③面接を受ける ④面接結果-「就学を認めます」/「就学を見送らせていただきます」/「就学の条件を満たしていますが,学校の収容能力の都合上,現在入学することができません。入学が可能になり次第,教育委員会からご連絡します」-の連絡がある。そして ⑤入学願書提出。という流れだ。面接には書類も必要となる。入学希望申請書(願書)と(外国籍の方)在留カード原本が求められる。就学が認められると、さらに、「本人の住民票の写し」「健康診断票(レントゲンの結果を含むもの)」「(常総市以外に在住の方)当該教育委員会の副申書」が必要となる。
このような手続きを経て、入学に備えていたが、「入学辞退」を判断されたということだと予想する。学校現場も入学希望者と話し込みを行い、解決に向けて努力いただいたと思うが、入学式の様子を伝える、マスコミの報道を辞退された人たちはどのように思われただろうか。

水海道夜間中学入学式(東京新聞2020.06.04より)
夜間中学の存在を知り、入学できても、学びを続けていくには多くの困難が待ち受けている。一例を挙げると、本人が健康であることだけではない、家族も健康でなくてはならないのだ。学びを続けられるには起ってくる問題を解決しながら、多くの人たちの支えが不可欠だ。夜間中学生は出席できて当然ではないのだ。出席することが闘いだということも出来る。入学辞退を選択せざるを得なかった人たちに、寄り添い、解決の手立てにとり組むことも、夜間中学の教育活動の重要な内容だと思っている。
6月から、公立自主の夜間中学は授業が始まったようだ。家庭訪問、職場訪問をして、状況把握と解決にむけたとりくみを休校中も続けられていることもうかがっている。「コロナ」で見えてきた夜間中学の持っている課題にとり組んでいただきたい。