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夜間中学その日その日 (692)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2020年6月25日
  • 読了時間: 5分

産経新聞連載「夜間中学はいま」を読んで (その10・最終回)

 連載では昼の中学3年生(当時)、小西さんが登場している。自主夜間中学のようすを伝えるテレビ番組を見たことがきっかけで、学んでいる人たちは「何でそんなに積極的なの」か、その理由を確かめるため、母親と一緒に岡山自主夜間中学を見学した。

 中学生でも学習ボランティアができる事を知り、ためらいもあったが、母親から背中を押され、夏休みを使って参加することにしたという。そこで語ることばに注目した。

 守口夜間中学は多くの小中高校生、大学生が訪れ、夜間中学生の横に座り、夜間中学の授業を体験していただくプログラムがある。その交流の様子は何度も書いてきたが、訪問者がどのようなことばを発したかが「いま、夜間中学の存在することの意義」の大きな点だと考えている。たった一度の機会も、小さな訪問者を揺さぶるインパクトをこのとりくみは生みだしている。

9.小中高校生

・積極的に学びに向き合う生徒たちとの出会いで、彼女自身の勉強に対する姿勢にも変化が生じたという。(連載⑯)

・テレビ番組を見たことだ。意欲的に学ぶ生徒たちの姿を見て「何でそんなに積極的なの」と、理由を確かめたくなったという。(連載⑯)

・自主夜間中の様子は刺激的だった。積極的に質問し、笑顔で学ぶ生徒たち。「自分と同じ中学生なのにどうしてこんなに違うのか」と驚いた(連載⑯)

・「学ぶことは生きること」「学びを求めている人たちに、もっと『教育の機会』を届けたい」と訴えた。(連載⑯)

・小西さんは「先生に話しかけられると、みんなぱっと笑顔になる。私もそんな存在になりたい」とほほ笑んだ(連載⑯)。

小西さんはこの経験を人権作文にまとめ「第38回全国中学生人権作文コンテスト」(法務省など主催)に応募、第1位に入選した。このことを知った夜間中学生は「書いてくれてありがとう」と小西さんにかえしたという。このことにも注目だ。義務教育を保障されなかったのは自分たちだけではない。多くの仲間に夜間中学があることを知らせたい。そんな思いがこの言葉に込められている。

10.識字学級「ひまわりの会」

識字教室「ひまわりの会」は阪神淡路大震災のあと誕生した。丸山中学西野分校(夜間中学)の教員であった桂光子さんそしてボランティアとして被災地に入った曹洞宗国際ボランティア会の藤井隆英たちの努力で今も活動している。

・読み書きができないために罹災証明などの申請ができない、避難所や役所のお知らせが読めない-。そんな人たちが少なからずいることを、1995年1月17日の阪神大震災が浮き彫りにした。公的支援が届かず、生活再建の壁に直面した人たちを支えようと誕生したのが識字教室「ひまわりの会」(神戸市長田区)だ(震災編)

・「ここには文字を知らないことでつらい経験を重ねた人たちの『学びたい』という気持ちが集まっているから、これだけ長く続いている」(震災編)

・罹災証明や義援金、仮設住宅などの申請書が書けずに困っている被災者を目の当たりにしたからだ。中には、「立ち入り禁止」の文字が読めずに、危険な場所に入ってしまった人もいたという。(震災編)

・藤井隆英さん「地元と協力してコミュニティーを再構築し、みんなの居場所を作りたい、文字を学ぶ場を作りたいと思った」(震災編)

・桂さんのもとにも「夜間中学を卒業した後も学び続ける場がほしい」という生徒たちの声(震災編)

・教室を回る際には生徒と同じ目線まで腰をかがめた。「文字の勉強だけをする場ではなく、学ぶことで胸の奥にしまい込んだ思い、それぞれの人生を取り戻していく場だと思っています。いろんな人生に触れました」と桂さん(震災編)

・桂さんは「先生」と呼ばれることを拒んできた。「ここは互いに励まし学び合うところ。一方的に与え、与えられる関係ではない」ためで、生徒のことは尊敬の思いを込めて「学習者」と呼んでいる(震災編)

・「文字を学ぶことは生きることそのもの」「ここで学んできた人たちの足跡である作文をまとまった形にして後世に伝えたい。ここで学びたいという人がいる限り、頑張れるかな」(桂さん)(震災編)

・《覚えた文字で、自分の思いを紙に刻みつける。人に伝える。話し言葉は消えるけれども、書いた文は、確実に相手に届く》(震災編)

 ところで、夜間中学生のことを第三者に話すとき、何と呼んでいるのだろう?「生徒さん」「生徒」「学習者」「夜間中学生」・・。桂さんは「学習者」を使用されている。私は「夜間中学生」を使うことにしている。昼の学校と違って、教員より年上の方が多い。そこで「生徒さん」を用いる方も多い。「生徒」とはなかなか呼ぶことが出来ないのだ。

産経新聞連載「夜間中学はいま」を読んでも10回にもなってしまった。珠玉の「主張」がこれでもか、これでもかと突き刺さってきたのだ。改めて、取材班の努力に感謝申し上げたい。この連載記事を読み、入学を決意した「連載に背中押され84歳入学」(2020.02.01)にあるように、大きな影響を生みだしたのではないか。

夜間中学にも、連載で報告のあった「光」があたる部分と光が当たらない「かげ」の部分がある。夜間中学生の実態に「学校制度」が応えられず、結果的に夜間中学生を夜間中学から「追いやってしまう」事例が光の当たらない部分の一例だ。『生きる 闘う 学ぶ-関西夜間中学運動50年』(解放出版社2019)で「かげ」の部分も焦点を当てた記述がある。「かげ」の部分に光を当てることは、「教育」や「社会」のありようをおのずと解明することでもある。引き続き、取材班には是非扱っていただきたい。(おわり)

 
 
 
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