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夜間中学その日その日 (699)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2020年8月3日
  • 読了時間: 5分

   形式中学校卒業者の夜間中学入学について(再論)その2

「‥『中学校を卒業していない場合は就学を許可して差し支えない』との考え方を示してきましたが,一度中学校を卒業した者が再入学を希望した場合の考え方については明確に示していなかったところです」

 この文は誰が発した文章だとお考えになるか?一度卒業した「者」という語彙も用いている。・・・ 文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長が都道府県・政令指定都市教育長あてに出した、「義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した 場合の対応に関する考え方について(通知)」文書の中にある。日付は2015年7月30日になっている。もちろん元号を用いている。さらにこんなくだりがある。「中学校夜間学級に入学を希望しても,一度中学校を卒業したことを理由に基本的に入学を許されていないという実態が生じています」

 よくもマーこんな事が云えるわ。この文書を最初に読んだ率直な感想だ。中学校を卒業していない人のことについては考えを示したが、再入学希望をした場合は明確に言ってこなかった。人を小馬鹿にしたおかみ目線の文だ。いままで文部省文科省は何と言ってきたのか‼

全国夜間中学研究会(全夜中研)が毎年形式卒業者の夜間中学入学を認めるよう要望書を出し話し合いをしても、決まって返される文章は次の文言通りの回答を出してきたのが文部省や文科省ではなかったか‼

 「制度上すでに中学校を卒業いただいた方につきましては、再び中学校に入学という形をとることはできません。そういう制度になってございます」(2005.12.9)。初等中等教育企画課 制度改革室 常盤木(室長補佐)さんの回答だ。

 2015年の通知文は「入学希望既卒者については,義務教育を受ける機会を実質的に確保する観点から,一定の要件の下,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であると考えられます」と述べ、入学できるといっている。

 この間、門前払いをされ、断られてきた、形式卒業者の想いに心を寄せるなら、こんな文にはならないはずだ。

 前川喜平さんは対談の中で次のように語っている。「わたしは文科省のこの豹変ぶり、あるところで書いたんですけど、これは見ちがえるようにというよりも、恥ずかしげもなくといったほうがいいと。よくまあ、今まで、冷たい顔してたのに、急に夜間中学がだいじですとみたいなことをいいはじめて。こんなに急にいいはじめるとほんとうに信用していいのか…」

 昨日まで教育行政に携わっていた方の面従なしの本音のトークだとしても、公開直談判をして、入学を認めさせてきた夜間中学生の先輩に私は申し開きができない想いだ。

 この通知文が出る2015年7月30日の前後で文科省の全国夜間中学校研究会への回答がどのように変化していったかを見ておく。

「義務教育相当の学力を身につけられるような学習機会として中学校以外にも社会教育をはじめとして様々な場が想定されています。義務教育段階の学習内容の学び直しについては高等学校において学校や生徒の実態等に応じて行って学習内容の確実な定着を図るよう学習指導要領に明記している」(2013年)

 2014年には、これが変化してくる

 「不登校や引きこもりに起因しまして形式的に義務教育未修了者になっている場合につきましては、実質的に義務教育未修了者と同様な状況にあるということであるとはいえ、こういったその生徒が希望した場合に、その学習の機会をどうしていくかということは大変重要な課題であるというふうに認識しています」(2014.7.31)

 2015年になるとさらに変わってくる。通知文を出すひと月前の話し合いである。

 「卒業はしていても実質的に十分な義務教育を受けられなかった方が希望した場合の学習機会の確保、これは重要な課題だと考えています」「中学校を卒業した方が(夜間中学入学を)希望した場合」「学習機会の拡大・充実の方向で積極的に検討していきたい」(2015.6.25)

 2016年では「昨年7月30日の通知において…積極的に入学を認めることが望ましいと整理しております。・・各夜間中学の収容能力に応じて可能な限り受け入れに取り組まれていくよう、今後とも呼びかけてまいります」このような変遷だ。

 文科省がこのように、これまでの主張をかなぐり捨て、正反対のことを云いだした背景にあるのは何か?文科省は教育制度改革室の武藤久慶室長補佐(当時)が大阪で説明会を行った(2015年11月5日)。この中で変更する根拠を4点あげた。一つは「中学3年生の不登校生徒のうち指導要領上出席とされた人数」の推計だ。20年間で105511人(平均5276人/年)にも上ること。二点目に2010年内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」でひきこもり状態の若者が69.6万人であること。三点目に総務省の「労働力調査」で15歳から34歳人口に占める若年無業者の割合が2.2%(2013年)で2002年以降1.9%~2.3%で推移している(2010国勢調査結果の人口に当てはめると61万9千人になる)。四点目に文科省の夜間中学実態調査で自主夜間中学、識字学級で学ぶ学習者の9.3%が義務教育未修了状態の人たちであること。そして、人口減少、少子化が進む中、これらの人たちが今の状態を脱し、社会的活動に参画されることが重要だ。また外国籍の人が日本で「活躍してもらう」ためにだと述べた。

 少子高齢化が進む中、夜間中学で学んでもらって、労働力として確保しておきたいという意図からだと受け取った。

 説明会の後、第18回全国夜間中学校研究大会の形式卒業者の夜間中学入学の議論を承知か否かを武藤さんに尋ねた。が、お知りでなかった。「44年前の全夜中研大会では武藤さんが説明されたと同じ理由を夜間中学生が発言し、文部省の中島課長補佐に形式卒業者が夜間中学に入学できることを認めさせたんですよ」とお話しした。髙野さんは18回大会の記録を収録している『자립(チャリップ)』を武藤さんに進呈した。(つづく)

 
 
 
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