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夜間中学その日その日 (708)

  • 夜間中学資料情報室 白井善吾
  • 2020年9月13日
  • 読了時間: 5分

 「2020国勢調査」が9月14日(インターネット回答)から始まる。従来の調査方式は10月1日から7日までの期間で行われる。調査開始100年目の節目の調査だそうだ。

 「小中学校未修 国が集計 国勢調査 夜間中設置指標に」(毎日新聞 2020.09.12)全国版1面トップの記事で掲載され、耳目を集めるのではないか。

 夜間中学関係者が国勢調査結果に特に関心を持つようになったのは、夜間中学開設を国や地方自治体、教育行政関係者に要求しても、「『義務教育未修了者』が何人いらっしゃるのかも分からない」し、「義務教育未修了の方はいらっしゃいません」(大阪)との返事で、未修了者の学習権とか教育を受ける権利とかには疎く、冷たい対応であった。国に質問書を提出し、当時の中曽根首相の国会への回答書は約70万人と記載していた(1985年)。しかし、その算出根拠は明確に示されなかった。「そんなに少なくない?もっと多い」が夜間中学関係者の受け止めであった。

 それなら私たちで算出根拠も明らかにし、計算してみようととりくんだ。そして170万人という結果を得た(真野節雄:「全国で170万人」;夜間中学増設運動全国交流集会編『ザ・夜間中学』(開窓社 1986年)。以後1990年、2000年、2010年と国勢調査結果を織り込んだ義務教育未修了者数を算出し、夜間中学増設全国交流集会が出版した書籍に掲載してきた。

 1990年の結果が発表になった1992年頃であった。私たちが行った、国勢調査結果の分析作業の中で 不明なことが出てきた。一つは年齢区分を答えなかった人が不詳者326,357人として、存在していること。もう一つは小・中卒、高・旧中卒、短大・高専卒、大・大院卒の区分を答えなかった人が、どこにも表れてこないことだ。このことを統計局に問い合わせると、担当者は、卒業しているがその内容は不明として扱ったとのことであった。その人数がなんと1,425,882人になる。2000年では3,813,474人。国勢調査の回収方法などの原因で、私たちはこの数字の中に義務教育未修了者が多数存在するとみている。2010年の調査統計では新たに「(卒業者)不詳」の欄をつくり13,375,764人と報告している。未就学者(学校には行かなかったか、小学校を卒業していない人)とはケタが違う人数だ。

 国際識字年中央実行委員会の関係省庁との話合いや、他の交渉場面で小学校卒と中学校卒とにわけ、義務教育未修了者数を調査すべきではないかと糾した。決まって、「調査の継続性を優先するため、途中で変更できない」が回答であった。この回答はウソ、何のことない、その都度変更されているのが国勢調査の調査内容であった。

 やっとというべきか、2020国勢調査では小学校卒と中学校卒とにわけて実施されることになった。「遅い!いかほどの人たちの学びたいという願いを踏みにじってきたのか、その自覚があるのか!」私たちの率直な想いだ。

 ある読者から、私が「夜間中学その日その日(705)」で書いた2010国勢調査の分析について問い合わせをいただいた。それは「夜間中学その日その日(241)」(2012.05.31)で公表している。以下再掲載する。

夜間中学その日その日 (241) 

未就学者 128,187人(2010国勢調査) 確定値発表

 2010年に実施した国勢調査の未就学者の数が発表された。(2012.4.24)「国勢調査は,日本に住んでいるすべての人及び世帯を対象とする国の最も重要な統計調査で,国内の人口や世帯の実態を明らかにするため,5年ごとに行われます」とし、実施されている。教育に関しては15歳以上の人たちを「在学か在学でないか」最終卒業学校の種類として「小学校・中学校/高校・旧中/短大・高専/大学・大学院/卒業者(不詳)/未就学の6区分」,「年齢(5歳階級)」,「男女別」で細かく集計している。

 教育の統計は10年ごとに実施され、未就学者の統計は夜間中学では注目し、夜間中学の開設を働きかける根拠の一つとしてきた。国は「未就学者」は、小学校を卒業していないか、入学していない人と定義している。つまり、小学校は卒業したが中学校を卒業していない人は未就学者ではないことになる。未就学者≠義務教育未修了者ではないことは注意すべきだ。

 全国夜間中学校研究会(全夜中研)は国勢調査を担当する総務省に「中学卒業」で調査を実施するよう申し入れ、話し合いを行なったが、「調査の継続性と一貫性」を根拠に同意せず、2010年の調査では、新たな項目を設け調査することはできなかった。(この理由はおかしい。過去の統計項目は一貫しているかといえばそうではない。その都度変っている。10年ごとの結果と統計項目を見ればよく分かる)

 集計結果をどのように読み取るか、守口夜間中学では校内研修でこの分析をおこなった。

① 未就学者の1960年から10年毎の推移を見ると、1488300人・599755人・308639人・217605人・158891人そして2010年は128187人。未就学者の多い、高齢の人たちが死亡していくことから、未就学者数は減少していっている。全体が同じように推移しているかというとそうでない。年齢の若い(15歳から19歳)の部分の変化を見ると、15400人・18690人・6735人・3257人・3515人・6100人と推移し、未就学者は今も多数つくられている。

② 全国で未就学者数の一番多いのは今回も、大阪府だ。しかも減少から増加に転じた。12104人が12195にと91人の増だ。

③ 全国で1000人を超えた都市は12市ある。大阪(4982人)、横浜(2077)、札幌(2001)、京都(1872)、福岡(1842)、名古屋(1742)、堺(1560)、那覇(1444)北九州(1251)、神戸(1221)、鹿児島(1146)、熊本(1036)。2010年5月、夜間中学を開設しないと検討委員会で結論を出した千葉市は527人である。

④ 人口10万人以上の都市で未就学者率(15歳以上の人口1000人の中に占める未就学者の数)で見ると沖縄市(6.31人)、うるま市(6.16人)、那覇市(5.54人)、八代市(3.72人)、諫早市(3.25人)、浦添市(3.22人)、岸和田市(3.02人)とつづく。

⑤ 大阪府内では能勢町(5.26人)堺・美原区(4.45人)、堺・西区(3.28人)、岸和田市(3.02人)。府全体では(1.60人)。

⑥ 大阪市内では生野区(6.69人)、西成区(4.19人)、平野区(2.79人)、東成区(2.67人)、そして大阪市全体では(2.14人)。

 国勢調査で15歳以上の人で、教育の調査を記入せずに提出した人たちに対して、統計上ではどのように扱っているのか、気になって、統計局に尋ねたことがある。この人たちは卒業して、不詳としているとの回答であった。これまでは不詳者の数は記載がなく、卒業者総数から(小学校・中学校)(高校・旧中)(短大・高専)(大学・大学院)の欄の数字を差し引いて求めていたが、2012年ではその欄が設けられた。国勢調査の方法で、調査内容が第3者にわかることもあり、学歴について回答しなかった人たちの中に、義務教育未修了者が含まれていると私は考えている。

⑦ このようにして不詳者の数を求めてみると(‘60年)18400人・(’70年)40965人・(’80年)155495人・(’90年)1425882人・(’00年)3813474人・(’10年)13375764人となる。最後の2010年の数字は15歳以上の人たちのうち12%の人が、空欄で回答したことになる。

 数字の羅列になったが、ある考え方で見てみると、これらの数字はさまざまのことを指し示している。教育関係者のみならず、教育行政担当者、首長は政策に生かしていただきたい。

 
 
 
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