夜間中学その日その日 （1007） 夜間中学資料情報室

　　　70回全国夜間中学校研究大会　　（1）　　　　　　　　　　2024.12.22

　全国夜間中学校研究大会（70回）（2024/12/5～6）が東京で開催された。夜間中学教職員、夜間中学生、自主夜間中学、教育行政関係者、市民など全国から参加がある。全国各地から関係者が一堂に会する数少ない研究集会である。今回のように会場が東京であるときは近畿の夜間中学の教員も夜間中学生も参加が少人数となる。近畿が会場の場合、大切な学習の機会として可能な限り全員参加に努められてきた。

　近畿夜間中学校生徒会連合会は各校から可能な限りの大会参加で、東京の夜間中学訪問と夜間中学生との交流、そして国会議員、文部科学省の夜間中学担当者と話し合いの機会を持つことに努められてきた。その報告を各夜間中学生徒会で行い普及活動も一環の取り組みであった。

　53校の公立夜間中学や50近くある自主夜間中学に拡がった取り組みの成果と課題を二日間の日程では時間不足であることは間違いない。それだけに、各現場で行われる報告会、大会資料集、記録誌を元にした校内研修は重要である。

　70回になる今大会では江口怜・浅野慎一さんの記念講演「夜間中学の歴史･現在･未来」があった。夜間中学の今を託された夜間中学生、教職員にとって夜間中学の歩みを確認し、現在の課題を明らかにし、夜間中学の明日を切り拓く議論は重要である。

　夜間中学の歩みを報告した江口さんは「夜間中学がなぜ生まれ、存在することの意味」「夜間中学生とは誰か？」「夜間中学で保障すべき義務教育の中味？」「切り捨てられてきた人たちのことは歴史（教育史）には残らない。この人たちの営みを知らなければ成立しない。そのことが見えるのが夜間中学のあゆみである。近現代教育史の中での夜間中学の位置付」を何人かの人物を挙げ講演を展開された。筆者も教育史の研究者に夜間中学がどのように受け止められているか注目した。

髙野雅夫：「全国夜間中学の歴史を創っていってほしい。これは戦後の教育史だ。義務教育のほんの一面なのだ」（1968.11.21　15回全夜中研大会）。

伊藤泰治（東京足立四中）校長

栃木勇（神戸立駒ヶ林中学）校長「夜間中学は教師に残された最後の手段でやむを得ず開設している」。

塚原雄太（荒川九中）「夜間中学生の学ぶ権利を認める必要がある」。

玉本格（神戸丸山中学）校長「差別の実態を教師は見極めないといけない」。

草京子（神戸兵庫北/西野分校）「夜間中学自らが、夜間中学が持っている意義と可能性を狭め、夜間中学から排除してはいけない」

自主夜間中学「うどん学校」から公立夜間中学の開校を迫る先駆的取り組み、その中から実践と確認された、奈良県夜間中学連絡協議会「夜間中学憲章（私たちのめざす夜間中学）」にも言及された。

　夜間中学現場で行った調査結果の分析をもとに、夜間中学の現在・未来を述べた浅野氏も夜間中学が持っている意味を「来る者は拒まず、まず受け止め、学校が変わっていく」「（義務教育のめざす）先進的な学校の姿が夜間中学にある」と述べられた。

　多くの日常的課題に埋没してしまいがちな夜間中学現場で、夜間中学の存在意義が明らかになったのではないか。

　改めて１５回大会の髙野雅夫氏の発言を読み返した。この1968年11月21日は、大阪で義務教育未修了の人たちを見つけ出す、夜間中学開設運動真っ只中、神戸での大会に髙野さんは駆け付けた。

　「2年前、行政管理庁から夜間中学廃止勧告が文部省に出されてから、じっとしておれなくなった。とにかく夜間中学の実態を一人でも多くの人に訴えなければと思い立ち、自分たちで映画を作り、各地で上映しながら全国を歩いてきた。夜間中学を知らない人が非常に多く、夜間中学を必要としている人があまりにも多い。法律はともかく、夜間中学でなければ救われない人がこんなに多くいる現実を、文部省や関係官庁はどう見ているのか。主人公は夜間中学生だ。納得できない理由で廃止しようとするなら、命をかけても教育の場を守りたい」

　「夜間中学の存続は、今、ささやかな灯を守るという性質のものではなく、当然あるべき権利を積極的に主張する段階に来ている」。56年前の夜間中学卒業生の主張だ。

　この後、天王寺夜間中学開設に向け、大きな動きが加速されていく。大会が終わった翌日、11月23日、桂米朝司会の「ハイ土曜日です」（関西テレビ）に丸山西野分校の中学生や塚原雄太さん大会に参加した奥田文部省課長らと出演。

　この番組を見た小林晃さんらが“生き証人”に名乗り出る。そしてあの毎日新聞「神戸の夜間中学に大阪の4人/越境かまいませんよ/尊い熱意拒めぬ/映画の訴え実結ぶ」（1968.12.14）とつながっていく。（つづく）