夜間中学その日その日 (1093) 夜間中学資料情報室
髙野雅夫 夜間中学資料と 神戸学院大学(上) 2026.05.30
新聞記事 「夜間中学の歩み詰まる100箱 意義訴えた髙野雅夫さんが収集 授業記録や元死刑囚の手紙『貴重資料』」(2026.3.2 朝日新聞夕刊)の報道があったとき、髙野さんの開設運動がきっかけで、大きな教育運動となり、天王寺夜間中学が開設されたのに、大阪の夜間中学で資料室をつくるということをどうしてされなかったのですか?そんな問いかけが何人もの方から、私たちにあった。
私たちも全く同意見で、その方向で関係者にも働きかけを行ってきた。もちろん髙野さんもそれを望まれ、大阪に居を構えられた2015年からそれを追求されていた。大阪人権博物館 「リバティーおおさか」で特別展「夜間中学生展」の開催が実現したときも、夜間中学資料の活用拠点の開設を目標とされていた。
しかし、関係者や関係組織に働きかけを行ったが大阪で開設をすることは実現しなかった。私たちの折衝状況を詳細に聞きながら、髙野さん自身も可能性を追求しておられたが、夜間中学の移転により、退去期限が迫る中で、夜間中学の歩みと想いの詰まった、髙野大(次男)さんから送られてきた資料あわせて100箱は2019年3月末、神戸学院大学に向かうことになった。
2015年4月から、髙野さんが東京から持ち込まれた段ボール箱、約60箱を開け、私たちは資料の分類作業とファイルづくりを開始した。資料の細部に眼が行くのを、心を殺して、資料の全容をあら掴みすることを心掛けた。2017年リバティーおおさかで特別展「夜間中学生展」を開催する連絡があっても、私たちの間では組み立ては出来上がっていた。資料があり過ぎて困ったというのが率直な感想だった。街で配られた一枚のチラシも、“わらじ通信”の記述を裏付け、髙野さんの的確な考察につながる資料であった。どれもおろそかにできない、慎重に作業を進めた。
髙野さんから意見を求められたことがある。立教大学大学院で特任教授として講義をすることについてどう考えるか?という問いであった。私は髙野さんの主張がこの人たちに突き刺さり、どんな反応が生まれてくるか検証されたらと、無責任な返事をしていた。就任され、講義だけでなく、夜間中学現場の踏査も試みられた。就任を終え、髙野さんが当初予想したように、大きなリアクションはなかったとコトバは少なかった。
髙野さんが神戸学院大学の特別授業「夜間中学」の講師を引き受けられたことが契機となり、つながりが深まった。阪神淡路大震災から神戸学院大学が「神戸市長田区番町地区をテーマに地域研究」をとりくまれ、神戸学院大学地域研究長田センターの活動に髙野さんは引き付けられた。神戸市立丸山中学西野分校(夜間中学)の建物が壊され、西野分校のみが再建されない状態を夜間中学に対する差別だと憤られた。長田区の地域研究をけん引された神戸学院大学水本浩典先生と西野分校を訪れたとき、通いなれた1968年の西野分校と今の姿を食い入るように眺め、その場を離れなかった髙野さんの姿は忘れられない。「番町に泊まり込んで、ここに夜間中学を中心に若者の活動拠点をつくる運動に専念するのに」と悔しさをにじませ、このように話された。

水本先生は各学校に残された廃棄の運命にある、資料を神戸市の許可を得て保存作業を行われていた。その中に旧西野幼稚園跡地残留丸山中学西野分校の資料があり、髙野さんは自分の夜間中学資料を重ねられたんだと考える。
髙野さんから『자립(自立)』を買い求め、全国行脚と夜間中学開設運動を記した“わらじ通信” を読み込み、来校のたびに髙野さんに質問をし、索引や目次をつくる作業を丹念に進める水本研究室ゼミ生の姿勢に頑なな髙野さんも口を開かれるようになった。
古代日本史や史料学が専門で資料を丁寧に読み分析を進められていた、水本先生は夜間中学は全く専門外にも拘わらす、ゼミ生と一緒になって自らも震災資料を読み込むことをしながら、ともに学ぶ研究姿勢を貫かれていた。「この人たちに託してみよう」と髙野さんの心に変化が生じたのかもしれない。
2003年に始まった、『こんばんは夜勉(よるべん)です』は毎週夕方5時から9時まで、2016年4月から長田地区にある夜間学校・夜間高校・識字教室をテーマに夜間学校で学ぶ夜の勉強会が始まった。髙野さんもこの勉強会に参加し、ゼミ生の質問に答え、「夜間中学」を語っていった。
これら成果は活動報告書『NAGATAのチカラ』 VOL 5(2019.3.22)、『こんばんは夜勉です』(1921.9.28 神戸新聞総合出版センター)が出版されている。
筆者がこの話を聞いた時、学部の学生さんがここまでと驚いたが、教え教えられ、ともに学ぶ姿勢を貫かれている水本ゼミ室の思想と夜間中学生とともに学ぶ姿を重ね、共感した。髙野さんはここならば、必ずやと心のボタンを押されたのだと考えている。
(つづく)






















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