夜間中学その日その日 (1094) 夜間中学資料情報室
髙野雅夫 夜間中学資料と 神戸学院大学 (下) 2026.06.01
髙野さんとの会話で、私たちが「偶然」と表現したとき、違う、偶然ではない、それは必然があったからだと髙野さんが発言することが何度もあった。髙野雅夫夜間中学資料が神戸学院大学に行くとき、行く必然があったからだと髙野さんは言った。
一人のゼミ生が頑なな髙野さんの心を動かしたと書いたがそれだけだろうか? 神戸学院大学の創立の経緯を大学のHPで調べ、設立者・森わささんについて水本浩典先生に尋ねた。(編集部)

「学校法人神戸学院の前身に当たる学校法人神戸森学園の校祖・森わさ先生と髙野雅夫氏が連なる『必然』」 の一文が届いた。
学校法人・神戸学院の校祖である森わさ先生は、苦労されて学ばれ、後、神戸の夜学校で教育者の道に歩まれることになる。
息子茂樹さんは、京都大学医学部教授、後、山口大学学長にも就任されている。
1912年(明治45年)1月23日、現在の学校法人神戸学院の前身に当たる私立森裁縫女学校を開設した。森裁縫女学校の校訓のひとつに、「自治勤労」がある。つまり当時、男性に頼らなければ未来が拓けない女性の境遇から「自立」することを目指したのが森裁縫女学校だったと理解しています。
髙野雅夫さんに関しては、ネット上にもたくさんの記事などが出ており、夜間中学関係者や教育界では超有名人です。その髙野さんが自費出版されたのが『자립(自立)』(厚さ5㎝以上、重さ1.8kg。1,000ページを超える大著)。終生、夜間中学生に寄り添い、夜間中学生の「自立」を叫び続けられたのが髙野さんでした。
その髙野さんは、荒川九中二部で自ら学んだ時の学習ノートから、全国行脚して夜間中学生のことを認知してもらうための活動を記録葉書に認める(毎日書いて荒川九中に送り続けた「わらじ通信」)など、その足跡のたどれる資料を膨大な量保持されてきたのです。(すべて非公開だった)。
たまたま、2017年に大阪人権博物館(リバティ-おおさか)で「夜間中学生展」が開催された折り、神戸学院大学人文学部の3回生のひとりが髙野さんに出会い、以後、分からないことを教えてほしいと懇願。しかし、髙野さんは拒否された。(以前に、立教大学大学院で特任教授をされた時も、自分の行動を理解して夜間中学を研究テーマにするような大学院生はひとりもいなかった、ことが原因)。それでも、何度も何度も教えを願う学生に髙野さんに変化が現れた。当時、大阪府東大阪市に住居を移し、長栄夜間中学の1教室で自分の保持してきた資料を整理する作業を自ら開始されました。しかし、長栄中学から意岐部(おきべ)中学に夜間学級が移ることになり、髙野さんの資料は行き場をなくすことになったのです。
その時、ずっと教えてほしいと接触していた学生を介して、水本(当時、神戸学院大学人文学部教授)に資料の一時的な避難場所として神戸学院大学で預かってもらうことは可能かと打診があった。大学総務部と相談した結果、3号館6階の研究室2室に収納が許可されることになった。2019年3月末に4トンクラックに満載された夜間中学資料が神戸学院大学に移動することになった。これが、現在まで資料整理が続く、「神戸学院大学 髙野雅夫夜間中学資料室」の基になる。
50歳を過ぎてから、髙野さんは長年の夢を果たすため、韓国に語学留学を実行された。その韓国語学留学で韓国の文解(識字)教育を推進されてきた萬稀さんと出会うことにつながった。
髙野さんは、識字教育、識字教室の重要性を認識。萬稀さんは、韓国にない日本の公立夜間中学について認識を深められ、韓国の識字教育法の改定に尽力された。 以後、二人の交流は長く続き、日韓識字文解学習者の相互訪問が行われた。
国連が提唱した「国際識字年」の活動にも髙野さんは深く関わりました。このような活動が評価され、東京弁護士会及び日本弁護士連合会(日弁連)から人権賞を贈られたのです。
髙野さんは、神戸学院大学の3回生との出会いを大切にされ、以後、2020年3月(コロナ禍がひどくなる直前)まで、毎週、東大阪の自宅から神戸学院大学まで約3時間かけて来校。学生とともに自分が保持してきた夜間中学資料の整理を続けられ、資料整理の際に発せられる学生たちの素朴な疑問にもきちんと対応されていました。
時に、夜7時を過ぎてもまだ髙野さんと学生たちとの交流は続いたこともしばしば。その際、髙野さんは神戸学院大学の学生たちに自分がずっと非公開にしてきた膨大な資料をすべて閲覧許可を出され、卒論などにも参考にしてよいと許可を出されたのです。その結果、20名以上の学生が夜間中学関係の卒論を書くことにつながりました。
決して、髙野さんは「教える」という教師の立場ではなく、疑問を投げかけるゼミ生に優しく語りかけることをされていました。
学校法人神戸学院の校祖・森わさ先生の考え方=女性の「自立」と、夜間中学生の「自立」を終生訴え続けた髙野雅夫さんの夜間中学生の「自立」を目指す考え方を、神戸学院大学の一学生が繋げてくれたことになると考えています。
髙野雅夫さんの膨大な夜間中学資料(もはや、これなくしては夜間中学の歴史、義務教育研究はなし得ないと言われるまでに)が神戸学院大学にもたらされたことは、言ってみれば「必然」だったと言えるのではないでしょうか。
カンボジアで識字文解を実践されている萬稀さんをお招きして、2026年6月6日14~16時 神戸学院大学有瀬キャンパスで開催される。
演題 社会の平等は教育の平等から―髙野雅夫さんと萬稀さんの出会いが切り拓いた新しい地平―ご来聴ください(入場:無料)。






















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