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夜間中学その日その日 (729)   砦編集委員会

  • journalistworld0
  • 2020年12月19日
  • 読了時間: 3分

夜間中学卒業者の会 現地学習会  水平社博物館

 髙野雅夫さんと語る  「夜間中学開設運動と水平社宣言」

 どんな展示になっているだろう?はやる気持ちを抑えて、博物館に入った。2020年12月19日午前10時、開館直後、来館者は数人であった。常設展示室入り口の阪本清一郎さんの語りだけはしっかり聞いて、今回は、特別展示室に直行させていただいた。



 もう何人かの来館者が、展示物と対話を始めている。おおさか人権博物館の特別展でも経験したのだが、展示物を凝視すると展示物が語りはじめるのだ。背負子に16ミリフィルムケース、文集「ぼくら夜間中学生」がはいったいった段ボール箱をくくりつけ、全国行脚に出発する髙野さんの後ろ姿、左には修学旅行で東京に来た中学生の一団が、写っている。夜間中学の開設運動と修学旅行の中学生。東京駅地下道の雑音のなかに義務教育未修了者の怒りの声が聞こえてくるのだ。夜間中学廃止勧告を打ち砕き、人間の尊厳を奪い返す闘いに馳せ参じる多くの仲間の声が聞こえてくるのだ。「あなたはどこに立っていますか?」「こんな現実をどうしますか」。おおさか人権博物館の特別展では展示に間に合わなかった写真がこのように問いかけてくるのだ。



 「おおさかに夜間中学を」と大阪で初めて配ったビラを見ると、輪転機がまわる音がして、心斎橋筋を行き交う人たちにビラを配りながら呼びかける、自分の声に気がつく。開設運動を支え、教育行政に開設の決断を迫る大阪教職員組合の中川書記長、五島教文部長、関情宣部長の声も聞こえてきた。小林晃君の声に混じって神部さんの声も聞こえてくる。天王寺夜間中学の入学生の声を一つ一つ拾いながら、「こんにちは奥さん」の企画書を書き進めるNHK福田雅子さんのすんだ声も聞こえてくる。

 後ろから声が聞こえてきた。髙野さんが懐中電灯の光でもらったばかりの「水平社宣言」を読んでいる声だ。ロウ原紙に鉄筆で水平社宣言を書き写している音も聞こえてくる。髙野さんが母校に送ったこの日の「わらじ通信」を紹介している塚原雄太先生の声が聞こえてきた。

 「これだ!!これだ!!これだ!!これが俺たちの叫びだ!!・・・・この『宣言』のもとを書いた、西光万吉という部落の青年は警察に追われながら、京都のガス会社の修理工となり、仕事の合間に物干し台に隠れて寒風の中、血を吐くような思いで書いたという。夜間中学生のみなさん―俺たちは口惜しくないか!!一字・一字よく読んでほしい―俺たちが誰のために何をしなければ良いか判っきりわかるはずだ。もしわからないなら君たちは本当の夜間中学生じゃない―荒川九中の勉強は全くウソッぱちだ」

 謄写版で刷り上げた水平社宣言に髙野さんは赤ペンで力を込めて、2カ所線を引いた。「これ等の人間をいたわるかの如き運動はかえって多くの兄弟を堕落させたことを想えば」「吾々がエタであることを誇り得る時が来たのだ」のくだりだ。そして。カバンから辞書を取り出して、「肌身離さずこだわり続けた正体が、これだと想い知らされた」と話した。

 母校・荒川九中夜間中学の卒業の日、記念に学校からもらった辞書を開くと

 『同情を憎み、矛盾に怒れ‼

  生まれて初めて 学校の机に座った。

  生まれて初めて 差別のない社会を知った

     1964.3.18 荒川九中 二部  卒業式の日に タカノ』

と記されていた。水平社宣言と出逢う2年半前である。

 水平社宣言と夜間中学開設運動が結びついた時、「水平社宣言、〝俺たちの生涯を決めた羅針盤だ〟」髙野さんの声に重ねて、春日、てんり、畝傍、宇陀、西和、吉野の夜間中学生の声が聞こえてきた。よく見ると名前と顔写真を貼った色紙から夜間中学生がひとりひとり話し始めた。

 だんだん声がハッキリと聞こえてきた

「奪われてきた人間の尊厳を取り戻す場、それが夜間中学です」

「人間の尊厳を奪い返す闘い、それが夜間中学生の生命線です」。

 
 
 

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