夜間中学その日その日 (748) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年3月22日
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岡山県中学校夜間学級調査委員会報告書 2021.03.22
岡山県中学校夜間学級調査委員会報告書が公表されたとの報道が2021.03.16あった。2018年3月に出された前回の報告書を読んで、私は2018年5月22日の「夜間中学その日その日」(560)で何点かの指摘をし、苦言を呈しておいた。
1次のニーズ調査では名前、年齢、連絡先を明らかにして、夜間中学で勉強したいことを教育委員会に電話をかけてくる方法で調査をされ、回答数が23件であたことなど、学習者の心情によりそうニーズ調査ではないと4点の問題点を指摘した。
今回の報告書公表に至る経緯を記すと。岡山県教育委員会は2016年7月、上記調査委員会を設置し、2016年12月から2017年9月の期間でニーズ調査をされ、23件の電話連絡があり、その人と再度聞き取り5件の夜間中学対象者であるとして、報告書(2018年3月)では「週5日義務教育の内容について学習する希望者はわずかで、直ちに設置する状況にない」「一定の期間を置いてニーズ調査をする」と記述されていた。

それから一定の期間が経過したとして報告から1年半後の2019年9月、再調査をはじめた。9月2日から10月31に調査用紙24,000枚を配布、347人の調査用紙を回収した。公立中学校夜間学級で自分が「学びたい」と回答した方が84人。84人の居住地は県南部の市町村が62人、県北部の市町村が17人。居住地記載ない方が5人である。
県教委はアンケート回答者と県の学び直し事業で学んでいる人で合意が得られた方19人を対象に2019.9~2021.1まで17ヶ月かけて、電話と面談の方法でヒヤリング調査も行なっている。結果、夜間中学入学対象者は6人、判断がつかない方4人、入学対象でない方9人と記述している。
県の報告書とは別に、2020年1月30日に公表された岡山市の報告書もある。県の報告書では、ある部分では、県と市の結果を合算して記述されているカ所がある。アンケート回答数 1157 (県 347 岡山市 810)。うち、学んでみたい人は 227人 (県 84人 岡山市147人である)。
調査研究のまとめとして県は「公立夜間学級での学びのニーズは『幅広く捉えたとき一定数ある』と考えることが妥当」と記述。これに検討を加えた調査研究委員会(10人)の提案は「公立中学校夜間学級での学びのニーズは『幅広く捉えたとき一定数ある』、としたことを踏まえ、今後、県教育委員会は公立中学校夜間学級の設置に向け、主体的にとりくむとともに、広域行政体として、市町村教育委員会においても前向きに検討が行なわれるよう働きかけ、市町村間の調整を図ることが必要」としている。
この報告を受け市町村教育委員会が設置の検討を行なうよう県は働きかけるという流れになるのだろうか。
報告書を読み、丁寧に運ばれたことはわかるが、また苦言を呈することになる。まず、2016年7月から4年8ヶ月の期間をかけ、2回のアンケート調査、さらには19人に電話と面談の方法で17ヶ月をかけヒヤリングを行なわれたが、岡山市と合わせて227人の学んでみたいと回答を寄せた人の心情に寄り添う想いがあるのだろうかと思ってしまう。2点目に「週5日毎日夕方から学校に通い義務教育段階の内容について授業を受ける」という記述があるが、あまりにも夜間中学生の実態を理解できていないということになる。本人と家族の健康、仕事、生活、育児、子育てなど、毎日通いたくても通えないのだ、これらを調整しながら学んでいるのが夜間中学生だ。そのことは回答結果を精査して「義務教育未修了者で公立中学校夜間学級の学びを希望する方10人‥」(市6人、県4人)との記述にも表れている。
3点目に「公立中学校夜間学級とは異なる義務教育段階の学習の学び直しのできる場の充実について今後とも必要」との報告書の記述について、私は夜間中学対象者は少ない。それよりも「学び直し教室」を充実させようとの県教委の考えだと読んでしまう。政府文科省がいっているより夜間中学の門戸を狭くしているように受け取ってしまう。背景には国は十分な財政的裏付けはせず、法をつくり、地方行政は設置する義務があるとすることに根本的原因がある。学校教育である夜間中学より、財政負担の少ない社会教育でとする方途を探る流れになるのだ。
岡山県は調査活動と並行して「公民館等を活用した夜間学び直し推進事業」を2019年度からスタートさせ、県内4カ所で教室を開いた。その登録者は県生涯学習センター(10)、倉敷市内(16、)津山市内(32)、備前市内(14)そして岡山市が開設している2カ所(9)併せて81人になる。報告書にはこの推進事業の現状は詳しく記述はない。私たちの受け取りが杞憂であったほしいのだが。
4点目に10人からなる調査研究委員会についてである。委員会議事録が公表されているのか、見ていないのだが、期間が5年度にわたり務めるのは大変だと推察するが、5年間同一人が務めていただいたのは10人のうち3人である。チェックを入れ課題を提起していただいたのだろうか?そんな思いが頭をよぎった。
報告書を読んだ感想を忌憚なく書かせていただいた。
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