夜間中学その日その日 (755) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年5月3日
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第2回 夜間中学寄席 2021.05.03
夜間中学卒業者の会主催で「第2回夜間中学寄席」が開かれた。高知県立の夜間中学開校を2日後に控えた、2021年4月24日、東大阪市立文化創造館を会場に22名が参加した。この日の寄席に登壇する二名は夜間中学生や卒業生で“50年目の全国行脚”の活動で高知に行ったメンバーでもある。そして夜間中学開設の必要性と近畿の夜間中学生の想いを高知の人たちに伝えてきた。会場にも高知への全国行脚に参加した卒業生の顔もあった。
「夜間中学に学んで想ったこと、考えたこと」をテーマに、伊藤壽勝さんはこの3月夜間中学を卒業し、定時制高校に学んでいる。在学中は近畿夜間中学校生徒会連合会の会長も務めた。中から見た夜間中学と卒業してわかった、外から見た夜間中学について「(夜間中学で)勉強だけではない人のつながりの大切さを学んだ」と「生徒の温かさ」をあげた。苦労したのは自分だけではなかった。そして「最後まであきらめない」ことを夜間中学生から学んだ。「卒業して夜間中学は、なんてええところか、できたら戻りたいとも思うことがある」。「夜間中学は私を明るく生きていく人間に変えてくれた。そんな夜間中学に恩返ししたいし、「夜間中学卒業者の会」の活動にも参加していきたい。髙野さんが「野良犬のように生きてきた」「野たれ死ぬ」と語ったが、自分と重なるところであり、そこに共感した。私も夜間中学で学んで、人間関係を信じて生きる力が獲得できたと思っている。卒業に当たり、B4わら半紙12枚にまとめたという半生を語った。
次に語った、77歳になる門脇勝さんは、まず「私と共通するところがある。この年寄りを泣かっしょる」と伊藤さんの話の感想を述べた。「ひとり親」で育ち、子どものとき、毎日学校に通ったが、「やはりひとり親の家庭は」と母を侮辱する先生は敵であり、「先公」だ。そのように思って大人になった。夜間中学に通ってその見方が変わった。「先公が先生」になった。それは先生も生徒と同じ目線で考えてくれているからだと語った。中国人の夜間中学生に「なんで学校に来てるのか?」と聞いたとき、その夜間中学生は「わたしは命を懸けてこの学校に通っている」と返事が返ってきた。この言葉に私は衝撃を受けた。夜間中学生が自分の生きざまを隠すことなくおれる夜間中学は大切だ。学びたいと思った時通える夜間中学があることは重要だ。夜間中学生はいま何ができるだろうと考え、あたらしくできる高知や徳島の夜間中学に「おかしいことはおかしいといえる夜間中学」となるよう訴えてきた。近畿夜間中学校生徒会のとりくみに広がっていけばと思います。髙野さんが「夜間中学の主役は生徒だ」といってくれていますが、私もそうだと思います。夜間中学の中味をつくるのは私たち夜間中学生です。と熱く語った。
二人の話を受け、参加した夜間中学生や卒業生から発言が続いた。
「入学するまでは金儲けのことしか頭になく生きてきた。いろんな人たちが学べる、ようこんな学校つくってくれた。髙野さんの(開設運動の)ありがたみが夜間中学に行ってわかったし、自分も変わったと思っている。卒業しても夜間中学のことで仲間に会え、活動ができる」「いつもオウム返しで先生が読んでそのあとを生徒が読んでいくやりかたの先生がいる。何しに夜間中学の先生になったのか。生徒のこと夜間中学のことをもっと勉強していただきたい」「夜間中学のことを知らない先生が多すぎる。こんなところ(今日のような集まり)に来て先生も勉強してほしい」「私たちも先生にわかってもらう努力をせないかんけど、先生が先生への指導と助言が必要だと思う」「在校生から声が上がるように変わっていかないと」「生徒会がほかの学校に出向いて行って、生徒は何を困っているか、生徒の声を聞き、何ができるか、何をするかを考える。生徒同士の連帯が大切だ」「生徒会は生徒のものだ、大切だ」「孫が、おばちゃんの行っている夜間中学のことを学校にも通って調べ、もっと勉強してみたいといってくれた。夜間中学の先生にお願いしようと思っている」
夜間中学生のやりとりを聞いたときいつも思い浮かぶ出来事がある。就学援助補食給食の闘いについて、各校生徒会の意見を持ち寄り行動を決める連合生徒会の役員代表者会(2010.12.19於・尼崎市立成良中学琴城分校)の場面とダブってくるのだ。各校からの意見は「大阪府に対し、私たちは行動していきましょう。府庁で、ビラをまきましょう、行けない人は手紙を書きましょう」「夜間中学は自分たちで守る。行動していかないと守れない」に集約された。しかし、煮え切らない夜間中学の教員に対し「私らが行動すると、夜間中学の先生に迷惑がかかるんですか?」「橋下知事のやり方は弱い者いじめだ。日本人として恥ずかしい」「みんなの意見は出揃った。これを受けてどうするか、具体的に先生たち、今判断してください」。このような圧倒的な意見に押され、各夜間中学顧問は別室で協議、「2010年は12月22日、24日、府庁で夜間中学生による、統一行動を行なう。続けて1月も行動を行い、府庁を訪れる人たちに、私たち夜間中学生の想いを訴えていく」ことを決定した。この場面が鮮やかによみがえってくる。
この闘いの中でも確認できた、夜間中学の学びは「奪い返す文字やコトバは明日からの生活を勝ち取る知恵や武器となるもので地域を変え、社会を変えていく力となる学び」だと考えている。今日の授業を振り返ったとき、そんな展開になっていたか否かをかんがえていたなぁ‥。鮮やかに蘇ってきた。
この日、高知サンサンテレビ(関西テレビ)の取材があった。
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