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夜間中学その日その日 (757)    白井善吾

  • journalistworld0
  • 2021年5月17日
  • 読了時間: 4分

 証言映画「夜間中学生」(1)           2021.05.17

 去年の12月29日から、5月9日まで日数は132日ある。この間、私は夜間中学に関わってどんなことがとりくめだろう?日程表をくってみても、夜間中学卒業者の会事務局会、機関誌「砦」、開催行事、夜間中学資料の分析・整理・作成などしか浮かんでこない。いま、緊急事態宣言発出で行動が規制され、開催行事延期の事態が起っている。

 1966年12月29日から67年5月9日の132日間で荒川九中の在校生・卒業生・教員で、証言映画「夜間中学生」を完成させている。映画作成に至る経緯と関係者の想いについて、コラム「夜間中学その日その日」でこれまで何度か扱ってきた。

 私がはじめてこの映像を見たのは1972年6月ではなかったか、髙野さんから大阪教職員組合書記局が預かっていた16ミリフィルムの貸出を受け、吹田市教職員組合主催の夜間中学の学習会を行ったときである。当時府や市の視聴覚センターに行って16ミリ映写機を借り出したが、50年後の今、映写機を持っているのは私の知る限り府の中央図書館でのみであった。大きな学校現場ではどこでも持っていたあの映写機はどこに行ってしまったのだろう。守口夜間中学では昼が持っている映写機を在職時、よく利用させていただいていた。小学2校と中学1校が一緒になって、義務教育学校が発足したときに、映写機の所在が分からなくなったようだ。

映写機がコマ送りをする独特の音でないと全国行脚で行く先々で上映活動を重ねてきた髙野さんは特に映写機での上映にこだわりがある。集会での映画上映をなんとか実現しようとたどり着いたのが府立中央図書館であった。

 夜間中学開設運動に証言映画「夜間中学生」が果たした役割は計り知れない。映画を完成して、全国行脚に出発するまで123日、青森・北海道54日、岡山52日、京都106日、大阪214日、上映回数は237回。鑑賞者数29362人、10周年記念文集『ぼくら夜間中学生』の普及数3610冊になる。1967年5月9日~大阪を去る1969年6月4日まで、活動日数は549日間、このうち49.7%、約半数の日数を上映したことになる。

 夜間中学卒業者の会2021年度総会の第2部で証言映画上映し、髙野さんに「証言映画『夜間中学生』に込めた想いを」問う準備のため、改めて映像を見ている。

1966年11月29、行政管理庁が出した「夜間中学早期廃止勧告」に対し、夜間中学現場は当然反対の行動に立ちあがったであろうと考えるがそうではなかった。髙野さんは、年末恩師の塚原さんを池袋の喫茶店で、廃止勧告をどう思うか?と問うた。塚原さんの返事は「どうって、俺たち公務員だからな」「(反対運動をしたところは)ないだろう」であったと著書に書いている(『夜間中学生 タカノマサオ』解放出版社 56頁)。そこで髙野さんが塚原さんに出した提案は「先生、カメラを回してください。俺が声をとるから」。塚原さんは「映画を作るのか?」とのやり取りを著書に書いている。

このやり取りのあと、TBSからカメラをニッポン放送からデンスケ(録音機)を借り受け、年が明けた1月8日、母校に入り撮影を開始した。



 私がびっくりしたのはことの運びのスピードと大胆さ、そしてこの提案を受け止め、実行する在校生、教員集団があったことだ。いまの学校現場では十分議論をしてからとか、個人情報の問題があるなど、さまざまな理由をあげ、答えは出さず、するのかしないのかも明らかにせず、熱が冷めるのを待つ。面倒なことには近寄らずという対応になるであろうことは想像に難くない。

 3学期の始業式にはカメラがまわり始めているのだ。この間、髙野さんの提案を聞いた塚原さんは、教員集団はもちろん、在校生にも話をし、映画制作にとり組んでいく体制をつくられたはずだ。反対運動は起らないであろうと返事をした塚原さんであったが、「こんなときに、授業をやっておれるか」と髙野さんに語っている。

 どんな内容の映画にするか、脚本は、制作費用は、とともに夜間中学生にはどのように制作の意義を伝えたのだろう?年度途中に映画制作をやっていこうとの動きができたことが驚きだ。さまざまな理由をつけ、なにもしない、できない学校現場になってしまっているのとは対極の展開ができたのだ。

 映画冒頭、大写しの夜間中学生の顔が6~7人登場する。どの顔も白い歯がこぼれ、笑顔だ。女生徒が生い立ちを語る音声が流れ、電話の呼び出し音がなり、「はい、荒川九中夜間中学です」受話器を取った塚原さんの透き通った声が流れタイトル「夜間中学生」が映しだされる。文字は力強い毛筆の文字だ。何回かに分け、いくつかの場面を紹介していきたい。

 そこに行く前に、映画の資料に当たっていて気になったことを最初に書いておく。

第65回全夜中研大会記録誌(2019年神戸大会)に掲載された特集「全国の夜間中学校―あゆみとまなび」に荒川九中の記事があった。沿革を記載した欄があって、そこには学校全体で取り組んだ証言映画「夜間中学生」の記載が全くないのだ。他の記述内容から考えても記載がないことは考えられない。起案者は個人であっても、学校として公の文書である。どうしてこうなったのか、関係者に伺いたい。

 
 
 

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