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夜間中学その日その日 (760)    白井善吾

  • journalistworld0
  • 2021年6月7日
  • 読了時間: 4分

あたらしく開校した夜間中学の実践と問いかけ    2021.06.07


 教育機会確保法が公布後、5校の公立夜間中学が開校、その活動を開始した。松戸市立第一中学校みらい分校・川口市立芝西中学校陽春分校(2019)、常総市立水海道中学夜間学級(2020)、徳島県立しらさぎ中学校・高知県立国際中学校夜間学級(2021)の5校だ。そして2022年開校を目途に準備を進めているのが札幌市、相模原市、三豊市の3校、静岡県(2023年度)(2021.05.24 毎日新聞「公立夜間中学 設置進まず 48自治体なし 財政厳しく」)。さらに千葉市が2023年4月開校との報道があった(千葉日報 2021.05.27)。

 新しく発足した5校の夜間中学でどんなとりくみがされているのか注目している。

第66回全国夜間中学校研究大会 大会発表誌(2021年3月発行)に2校の報告が掲載されている。(a)「生徒のニーズにあった教育課程」(陽春分校)(36~37頁)、(b) 特別報告水海道中学校夜間学級(109~110頁)。また2校のとりくみ報告書が発表になっている。(c) 稲積賢「多様な生徒が集まる新規開校の公立夜間中学」(『都市とガバナンスVol.35』(みらい分校)。もう一つは、(d) 冨山かなえ「茨城県内初、水海道中学校『夜間学級』開設に向けた挑戦」(筑波総研調査情報No 50)。これ以外に各夜間中学のホームページには授業内容や活動が詳しく掲載されている。少し紹介する。


(a)「どのような形で『学び』を作っていくか見えていないところがある。(中略)生徒が変容していく中でニーズ等も変わっていくとは思うが陽春分校において最も良い『学び』をつくるための教育課程はどのような形なのか、暗中模索が続いている。日々の教育実践の中から、『best』の教育課程を見つけられるよう努力しているところである」(37頁)。報告文の最後の部分はこのように書いておられる。


(b)水海道中学夜間学級開設に至る経緯では開校1年前に、開校準備のため2名の担当者を配置した。夜間中学を設置する行政で人口規模が全国で最も少ない(59,310人)常総市で開校することを決めたのは、在留外国人の比率が9.26%とおおきく、夜間中学に対するニーズが高く、「多文化共生」を市の施策に掲げている。財政面の負担を軽くするため、補助金、他の市町村の応分の負担、夜間中学の設置促進・充実事業(国)を活用し開校した。

 公共交通機関が少ない通学環境下、「自動車、バイク」での通学も可能とし、少しでも通学できやすくするとして、判断した。また地域ボランティアとの連携でとりくみを進めている。


(c)開設に至った理由について、国の法整備が進み、形式卒業者の入学が可能となり、外国人居住者も増加傾向にあり「松戸市全体の教育を下支えする、公教育による学習支援機能を生み、学びのセイフティーネットを充実させるため」をあげている。報告文の最後では「開校後、社会人でもある本校の生徒に対し『本当に必要な中学校の教科内容とは何か』と検討を重ねてきた」との記述がある。


(d)筑波総研株式会社主任研究員でキャリアコンサルタントの冨山さんは「茨城県内で初めて常総市立水海道中学校夜間学級が開設する」新聞報道で「夜間中学」という言葉を初めて知った。2020年9月16日に行ったヒヤリングを中心にまとめられたレポートである。教員の人数について標準法では教員定数は3人。茨城県に伝え、県の特別配慮により加配が決まり12人となった。三つの他団体「国際交流協会」・・日本語指導法研修講師、翻訳者の紹介、広報の支援。「国際交流友の会」・・日本語ボランティア。「NPOコモンズ」・・登下校のサポート、外国籍の方へのアプローチ方法などのアドバイスを連携して進めている。「『何度でもやり直しが可能な社会であってほしい』と願う人は多い。その願いをかなえる教育の場が夜間中学にある」と記述されている。


 さまざまなとりくみを行い、検証し、修正を加えていく、そして実践する。とりくみが行われていることが分かる。(c)には「就労し社会人経験を持つ生徒も多く、年齢や学習歴が様々であるため、教科書はそのまま使えない」「(夜間中学は)中学校学習指導要領が想定している発達段階を超えた学習者を対象としている中学校という特徴がある」「全国的に確立され、準拠できる夜間中学のカリキュラムも存在しない」などの記述がある。


 最後の「準拠できる夜間中学のカリキュラムは?」の問いは、これまでの夜間中学関係者全体に出されている問いではないだろうか。私も議論に参加していきたい。



 昼の小中学校と比べ、夜間中学は自由度が高く、学習者の実情をふまえた、学びの創造がとりくみやすい場所であった。「学びの本質」を追求できる優れた“教員の学びの場”でもあった。それだけに、たくさんの実践を交流し昼の学校にも発信できていく誇れる場が夜間中学だと思っている。守口夜間中学ではそのときどきの到達点を交流し、議論を行ない、出版し、新たな地平を追求してきている。

 
 
 

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