夜間中学その日その日 (761) 白井善吾
- journalistworld0
- 2021年6月14日
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夜間中学の法的根拠 2021.06.14
「教育機会確保法」が公布した現在、文科省は夜間中学を公教育として認可したと考えてよいのか?認可したなら、当然、学校教育法の改正が必要だと思うが全夜中研として、そのとりくみはどうなのか?こんな質問を2019年12月、全夜中研の事務局担当者に質問した。上位法と下位法という考え以外に、一方、後で作られた法律が先に作られた法律より優位にあるという考え方があるが、よく確かめて返事するという事でその場を別れたが、まだ返事はいただいていない。
2008年頃夜間中学生が居住している教育委員会を訪問したとき担当者から「夜間中学の法的根拠は?」と尋ねられ、学校教育法施行令第25条4項と5項だと答えた。「学校教育法に記載はないんですか?」と問い返され、言わなかったが「学校教育法にあれば、当市でも夜間中学を開設されるのか」という言葉が喉まで出てきた。
教育機会確保法がある現在も、これまで通り、学校教育法施行令第25条4項と5項に基づいて設置行政が都道府県教育委員会に届け出なければならない。
今まで夜間中学に否定的でなくすことを主張してきた国や文科省(文部省)が、今度は夜間中学を開設しましょうとその旗振り役をする。文科省の変化は形式卒業者の入学をめぐって、全夜中研への文科省回答の文言の変化から2014年であることは前にふれた(夜間中学その日その日 699)。文科省は夜間中学に関する施策を次々と打ち出してきている。
形式卒業者の夜間中学入学を認める通達(2015.7)、教育機会確保法公布(2016.12)、学習指導要領に特別な教育改定編成できるように変更(2017.3)、県立夜間中学教員の給与などに1/3の国の補助をつけるよう改定(2017.3)、第3期教育振興基本計画」の閣議決定(2018.6)、夜間中学の設置充実に向けて手引きの2次改訂作成(2018.7)、「第3期教育振興基本計画等を踏まえた夜間中学等の設置・充実に向けた取組の一層の推進について(依頼)」(2018.8)、「改正入管法」の施行(2019.6)、「子どもの貧困対策に関する大綱」の閣議決定で政令都市にも1校の夜間中学をと記述(2019.11)、「日本語教育の推進に関する法律」の施行(2019.6)、「夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について(依頼)」(2021.2)などがある。

最初の形式卒業者の夜間中学入学を認める通達(2015.7)をみても分かるように、「従来文部科学省では,義務教育諸学校に就学すべき年齢を超えた者の中学校への受入れについては,ホームページ等において『中学校を卒業していない場合は就学を許可して差し支えない』との考え方を示してきましたが,一度中学校を卒業した者が再入学を希望した場合の考え方については明確に示していなかったところです」と記述しているが、文科省と全夜中研が話しあう場では、「一度卒業したものがもう一度学ぶことはできない」と明確に言い続けてきたことは忘れることができない(1987年~2014年)。
「再入学はできないとこれまで申し上げてきたが、間違っていました、これまでお断りした皆様に深くおわびいたします」ということがどうしてできないのだろう。
前川喜平さんも「私は文科省のこの豹変ぶり、・・恥ずかしげもなくといった方がよい。よくまあ、今まで、冷たい顔をしてたのに急に夜間中学がだいじですみたいなことを急にいいはじめてほんとうに信用していいのか・・」97頁(『前川喜平教育のなかのマイノリティを語る』明石書店2018)と語るぐらいだ。
夜間中学の重要性にやっとお気づきになったのなら、遅いとはいえ、学校教育法に位置付け、さまざまな支援施策が打てる法律体系にするべきではないだろうか。一方で、このことにより他にはない、夜間中学が持っているかけがいのないものがご破算となり、昼の学校と同じ夜の学校になってしまうことにつながるのではという心配が付きまとう。
*挿絵:守口市立第一中学生が“夜間中学探検隊”を編制し、守口夜間中学を訪問、夜間中学の授業を体験した。その時の様子をこんな挿絵を描き、学校に帰って新聞を発行、報告を行なった。

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